2011年03月01日

クライストチャーチ、税金と寄付という再配分方法について

 

NZ政府はクライストチャーチ大地震の対応策として緊急援助策を打ち出した。大地震によって仕事を失った人は一週間最大で400ドルの補助、企業向けには従業員の給与を支払うのであれば一週間500ドルの補助、賃貸住宅向けには家賃の3週間支払い免除などである。

 

もちろんニュージーランドでは失業手当や医療保険などのセーフティネットは徹底しており、今回の地震で人々が直接飢え死にしたり路頭に迷うことはない。

 

ニュージーランドの各街では寄付を募るボランティアが活動しており、クライストチャーチでも比較的安全な地域では道路に溢れた泥片付け作業のボランティアも始まっている。

 

せっかくなのでこういう時に「都市の分業」と言う問題を考えてもらいたい。

 

肉食動物が世界を支配していた時代、体の小さな人間の生き残る道は共同で体の大きな恐竜を倒すことであった。

 

それから時代は進歩して力の強い者の下に人々が集まるようになり、これが社会を形成した。社会が出来ると今までは一人で全部やってた作業が分業できるようになった。簡単に言えばアダムスミスだっけな、ヘアピンを一人で作ると一日何本、けど数人で分業すれば一日数百本、というやつだ。本数は忘れたが。

 

この分業の発達により社会に参加する人々はそれぞれ自分の得意な分野を担当として社会に提供し、他人の得意とする作業で提供されるものを受け取った。このような交換作業の媒体として使われたのがお金である。

 

そしていろんな価値観を持った人々が参加する社会を運営する為に彼らの相互利益や利害調整の為に出来たのが政府であり、とくに所得調整を担うのが税である。

 

税は国家であるというが、これはまさに正解であり、税は法よりも強い影響力を持っている。法律は理屈を並べてぐちゃぐちゃと終わらない議論をしていれば良いが、税金はそんな余裕はない。財布の中に手を突っ込んでがさっと持っていくのだ。

 

そして強制的に徴収された税金はその使用用途について国民が直接口を出すことは出来ない。役人の飲み食いに使われても「適正な支出」と言われればそれが通るのだ。

 

使用用途と言う意味でこの反対に位置するのが人々による寄付である。税金は誰に使われるか分からないが寄付は確実に自分が望む場所や人々に直接届く。それも途中で搾取する中間組織(政府)の人件費などの費用がない。

 

世界トップクラスのお金持ちであるビル・ゲーツは自分の財産のほとんどを寄付することで財団も設立している。これも無税である。さらに自分の望む人々に自分が直接寄付出来るので満足感も大きい。

 

このような行為に対して米国では課税しない。ビルゲーツは「ぼくはたまたま運が良くてお金持ちになったけど、これはお世話になった社会に貢献するよ」となる。

 

金を稼げる奴は稼げばよいのだ、それは魚を釣るのが上手な漁師が美味しい魚を市民の食卓に提供するのと同じことだ、みんなは自分の得意とすることをすればよい。

 

人々はいろんな形で社会に貢献できる。今回のクライストチャーチの大地震では、実は一番大きな形で貢献しているのはNZすべての市民である。なぜならこの国の税収の4割近くは消費税であり次の3割は所得税であり、その税金が政府を通じて被災者に届けられているからだ。

 

彼ら日頃真面目に働いて生活をする人びとから得た収入を、政府は今緊急手段として被災者に提供している。これが政府の役割である再配分だ。

 

しかしそれだけではこのような緊急事態には追いつかない。そこで出てくるのが市民による寄付である。

 

モノは使えない人がいてもカネならモノに換えられる。だから政府も市民による寄付を推進しているのだ。

 

このような寄付は無税であり、企業が寄付すれば利益から経費控除出来るし個人でも確定申告の際には収入から控除出来る。

 

ところが日本ではこの「寄付」と言う行為は政府によって思いっきり制限されている。寄付をするなら税金払えというのだ。

 

どういう事か?それは、政府は再配分と言う一番おいしい部分を握っているのに、個人が直接個人に再配分してしまえば政府のうまみがなくなる、だからそんな事をさせない為に「へ、寄付ね、へーへー、寄付したかったらどーぞ、けど税金はちゃんと払ってよ」と言うことになる。

 

個人が自分の金をどう使おうと政府に関係ないはずなのに日本では政府が個人的な寄付にまで口を出して税金を取っていく、自分のうまみを守るためだけに。

 

りょうまくんは昨日、学校で行われた大地震の寄付の為に「お父さん、お金ちょうだい、寄付するから」と言って20ドル持って行った。今日は校外活動の集まりでもう一回寄付をするようで、「今日は5ドルでいいや」と財布から持って行った。彼なりに寄付する先を選択しているようだ。

 

あなたの税金が何に使われているか、そしてなぜ人々は税金を払うのか、寄付とは何か、そういう事をこの大地震を機会に考えてもらえばと思う。



tom_eastwind at 08:56│Comments(0)TrackBack(0) 諸行無常のビジネス日誌 | NZニュース

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