2011年05月15日

モンスター

浦沢直樹と言う漫画家が描いた「モンスター」は多くの日本人が読んでいるモンスターヒット作品だ。週末は久しぶりに読み返して楽しんだ。浦沢直樹は作品全体からにじみ出てくる人間肯定が大好きで「パイナップルアーミー」の頃から読んでいた。そう考えてみればもう20年以上のファンだ。



モンスターの舞台は欧州、主にドイツとチェコだ。よっぽど取材を重ねたのだろう、欧州の裏町の石畳がほんとに細かく書き込まれている。作品内で出てくるセリフはどれも重みがあるが、とくにこのセリフがどきっとした。共産党政権下の東ドイツで子供の教育に携わっていた学者が言う。



「教育とは社会が要求する人間を創り上げる事だ」。



ぼくからすれば教育本来の目的は子供の持つ可能性を出来るだけ引き出してあげて社会に貢献しながら人生を楽しむことが出来るようにすることだと思っているが、政府からすれば社会に適応する人間を創り上げる事の方が正しいとなる。そしてわけのわからん事を子供に無理やり押し付ける役目がガッコーのセンセーだ。



ニュージーランドの牛乳は味が濃くて美味しい。これに比べると日本の牛乳はどうしても薄く感じるし学校の給食に出されてた紙パックの牛乳などほんとに紙をなめているような味だった。



それでもセンセーは「出されたものは食べなさい!」と言う。あんた、くそが出ても食うのか?第一この牛乳、体に悪そうじゃないか。こんな牛乳もどき飲まされて納得できるかよ。



まずいのはホウレンソウでも同じで「野菜は体に良いのだ!ほうれんそうにはたくさんの鉄分が入ってるのだ!食べなさい!」と先生に言われた。けど、たくさん入っているのは農薬でありまずいものはまずい。苦いのだ。体が拒否反応を起こしているのだ、農薬まみれだ食うなって。



もちろん食わなかったがが、あの頃の先生が見つかったら当時の厚生省のホウレンソウのデータを見せて戦前に比べてどれだけ劇的に鉄分が減ったかそしてどれだけ農薬を突っ込んで作ってたかを見せて「おまえが押し付けた野菜のおかげでどれだけの子供が主体性を失い健康を害して挙句の果てには社会組織に組み込まれて歯車としてすり潰されたんだよ」と言ってやりたい気分だ(笑)。



こんな子供生活を送っていたから、つまりまずい牛乳や農薬まみれの野菜を食わなかった事で何とかまともな大人になれたが(笑)、それにしても教育の重要性はいろんな国で子供を見ながら痛感した。



どこの国でも共通することは子供は最初は自由で楽しく笑ってるが、年を取るにつれて段々笑顔がすり減ってくるという事だ。その国の社会と言う型に押し込まれてその国の価値観を押し付けられていつの間にか自由に考えることが出来なくなっていく。



子供は3歳までに親と周囲を見て性格が形成されて3歳から社会と言う型枠にはまる訓練を受ける。4歳あたりから先生が自由とか主体性とかを教えると、子供は水を得た魚の様に生き生きと学校生活を楽しむことになる。なぜ?と言う子供の質問に対して徹底的にきちんと答えてあげると知識を身に付けるようになる。そしてどんどん発言をするようになる。



しかし日本では型枠にはめる事だけを目的に教育を与えるからまさに「教育とは社会が要求する人間を創り上げる事だ」となり子供は見事に型にはめられてそれをおかしいとも思わなくなる。



「モンスター」では幼児教育が一つのテーマになっているが、実際に共産主義政権下では生まれたばかりの子供たちを「教育素人」の親から取り上げて「教育のプロ」である国家が教育プログラムをすべて管理して社会に適応する子供たちを作り上げるという発想があった。



国家が「2足す2は5」と言えば5になるし、「なぜか?」なんて考えちゃいけないってのはジョージオーウェルの「1984」で有名な話だが社会に順応するという事は国家のいう事を実行することであり、「なぜ?」とか「どうして?」なんて考えちゃいけない、それが国家のためなのだからとなる。



あれ?2足す2を4だって答える自由、よく考えてみれば今の日本の受験などまさに「答える自由」はない、東大に入学したかったら間違った歴史でも記憶しなさいと言われて終わりだ。国語の時間に小説を読まされて「さあ、ここだぞ、ここが感動する部分だぞ、わかったな」と言われて考えてはいけない。感動することも国家が決めるのだ。



ホウレンソウだって同じ、自分の頭で考える事の出来ない、ただ先に生まれただけの連中(これを略して先生と言う)に押し付けられて嫌だと言えば怒られて「皆も食べているんだ!」とか「これはおいしいんだ!」とか全然理屈にならない理屈を並べる。



あ、そうか、モンスターの舞台は日本だったんだ(笑)!



tom_eastwind at 14:29│Comments(0)TrackBack(0) 諸行無常のビジネス日誌 

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