2011年07月04日

週末のオークランド

週末のオークランドはきりっとした快晴で空気が冷たく、陽のあたる場所でもオープンカフェではガスヒーターの近くのテーブルが心地よい。考えてみれば南島ではそろそろスキー場がオープンする時期なので南緯37度のこの街が寒くなっても当然。

 

なんでか白人はオープンカフェが好きで真冬の寒い時でも太陽がハーバーの光を反射しながらさんさんと輝いているお店でコートを着てデッキチェアに腰かけてガスヒーターの下でランチを楽しみビールやワインを飲みながらおしゃべりを楽しんでいる。

 

とくにViaductと呼ばれるヨットハーバーは岸壁沿いにお洒落なレストランが並び、どこの店のオープンデッキも満席である。ここは午後の日差しが大型ヨットの間から差し込み夕方になるとだんだん夕陽が赤みを帯びてくる。

 

最近のローカルワインは質の向上とともに値段も向上しておりスーパーで主流の一本25ドルのワイン(安い箱ワインは最近は棚の端っこだ)がレストランで80ドル近いがあちこちで乾杯の音が聞こえる。ビールにしても酒屋で買えば一本1ドルなのがバーやレストランでは8ドルがふつう。まったくこの国では日本のような価格競争が逆に働いていてよそが値上げしたらうちも値上げとなる。

 

こちらの人はビールやワインはアルコールではないと思っているのか(もちろんアルコールです、大人はワイン3倍くらいが飲酒運転の境目ですね)、昼間からよく飲んでるな。まあ週末の午後に取締りをする警察官もいないだろうし飲酒運転による交通事故は25歳以下がほとんどの国なので、家族連れで午後の日差しを楽しんでいるキーウィファミリーの適度の飲酒はOKなんだろう。

 

ちなみにこの国で一番標準的なビールと言えばスタインラガー(Steinlager) .昔のキリンビールのようにホップの効いたすっきり味のビールだ。ギネスも人気があるけど一般的によく出るのはスタインラガーの方だろう。

 

でもってキーウィの皆さんはこのビールやこのビールを製造するライオンネイザンをニュージーランドの有名ブランドの一つ!として喜んでいるのだが、実はこの会社、1998年にキリンビールに買収提携されており現在ではキリングループの中核事業の一つでもある。

 

ほら、今君が飲んだビール代のうち数%は日本の本社に配当として支払われるんだよ、なんて無粋な事を言ってもしょうがない。だって僕らが日本で楽しむディズニーランドの売り上げの5%は米国のオリエンタルランドに払われているんだしマクドナルドも同様に米国本社に契約料を払っている。

 

そう考えると上海の中国人がローソンで弁当とコーラを買うたびに弁当代の多くは日本のローソンの利益となりコーラは米国コーラ社の利益となる。

 

今から数百年前、世の中がまだ自給自足だった時代には考えられないような現象であるが世界中のビジネスは国境を越えて売ったり買ったりしながら複雑かつ密接につながっている。

 

そしてぼくが毎週一本くらいニューワールドスーパーで買ってるチャーリーオレンジジュースも、今後ぼくが一本買って飲むたびに日本のアサヒビールにチャリンとお金が落ちるようになった。

 

★記事抜粋開始

[ウェリントン/東京 4日 ロイター] アサヒグループホールディングス(2502.T: 株価, ニュース, レポート)は4日、ニュージーランドの飲料会社チャーリーズ・グループCHA.NZの全株式に対し公開買い付けを行うと発表した。

 全株式を取得した場合の買収金額は約1億3000万ニュージーランドドル(約87億円)。海外事業の拡大を目指す長期戦略の一環で、ニュージーランド飲料市場での拠点確保とオーストラリアの飲料事業とのシナジー効果によりアジア・オセアニア地域の成長を加速するのが狙い。

★記事抜粋終了

 

これから少子化していく日本ではビールも消費量が減るわけで、アサヒとしては今のうちに海外に打って出る作戦であろう。これはある意味当然であり、座して日本国内で値段の叩き合いをやって利益なき激戦に巻き込まれて疲弊するよりは、モノをまともに定価で買ってくれる国で売った方が良いのは当然だ。

 

以前もある日本の経営者がこちらの「のんびりしたビジネス」を見ながら「ほら、こんなところに機会があるじゃないか、何でここでこういう事をしないんだ〜」と言ってたが、皆が厳しい競争をし始めて最初に押し付けやしわ寄せが来るのは現場であり労働強化になり賃金低下に繋がる。

 

だったら無理して競争するよりも高値で皆が利益を出しながら共存共栄出来れば良いではないか。結局労働者が無理を押し付けられて消費者は会社の売りたいものを押し付けられて、結果的に儲けるのはこの国に住んでいない外国のお金持ち株主投資家と言うことになる。

 

だから日本人の発想は短期的に見れば自分だけが儲かるビジネスモデルではあるが長期的視点で社会全体が潤うかと言えば決してそうではない。どのような働き方=社会貢献が正解なのか、これも21世紀の日本がこれから真剣に考えるべきときだろう。てか、労働や利益を生み出すことが結果的に社会貢献であるべきだという考えが日本ではまだまだ一般的でない。

 

日曜日の午後に家族でヨットを見ながらお昼ご飯を食べているとそんな事を考えてしまう。競争原理はある程度働いているものの誰もが落ちこぼれなく楽しく生活出来て、そうだそうだ、この国ではデパートが朝9時に開店して夕方5時には閉店する、労働者も買い物に来る消費者も同じ立場で生活しているってのがよく分かる。

 

この楽ちんさと言うか誰もが幸せそうな顔で生きていける国は良いよね、子供たちが注文した超大型のニュージーランド産ステーキを見ながらスタインラガービールを飲み奥さんは英国製のお茶を飲んでる。さて月曜日からまた仕事開始。お父さん、頑張らねばである。

 

★記事追記

 アサヒは09年にシュウェップス・オーストラリアを買収し、オーストラリアで飲料事業を展開しているが、4日には、豪州飲料3位のピー・アンド・エヌ・ビバレッジズ・オーストラリア(P&N)のミネラルウォーター事業と果汁飲料事業を約163億円で買収すると発表した。

 ニュージーランドのチャーリーズ買収と合わせ、既存の豪州飲料事業との間でシナジー効果を高め、アジア・オセアニア地域での飲料事業を成長させる方針。

★記事終了



tom_eastwind at 10:01│Comments(0)TrackBack(0) 諸行無常のビジネス日誌 

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