2011年10月18日

あなたが比較される相手

あなたが比較される相手、それは中国人や地元高校生です

 

一物二価と言う言葉がある。例えば同じ岩手産のりんごなのに場所によって値段が違うってことだ。東京の成城石井で一個100円で売ってる美味しいりんごだけど岩手の農家の直売所で買えば一個50円。盛岡はりんごの産地だから東京までの輸送費がかからないし卸売業者も中継ぎ業者もいないからとっても安いって事になる。

 

そんなの当然じゃん、あふぉちゃう、何エラそうな事いっとんねんと言われそう(苦笑)だが、ではこれがオフィスの仕事にも適用出来るとなったらどないでしょ?例えば東京で経理業務経験者を募集すると時給1500円でないと人が集まらない。けれど同じ経理事務でも盛岡では時給900円で同じ能力の人が来る。東京は生活費が高いから600円の違いが出る。

 

ここまでは当然の話だ。では東京で発生した経理事務が盛岡で処理出来るとなれば?経理データは当然のことながらりんごと違い輸送費は殆どかからないから盛岡で仕事を処理できる。これも当然の話。

 

一物一価と言うのは一物二価の最終形であり同じ商品なら最終的に価格は一つに収斂するという理論だ。これもまた当然。ではこれが日本国内だけでなく世界規模で起こったらどうなるか?例えば会計処理。世界は現在新国際標準の会計制度を導入しようとしている(NZではすでに導入されている)。

 

IFRSFinancial Reporting Standards)と呼ばれる会計制度が導入されれば世界中が同じ標準で会計処理をするわけで外国で上場している大企業や外国人投資家向けにIR(企業情報提供)をする企業は英語で資料を作るわけで、そうなると言葉の壁はなく日本企業は英語が出来て中国の優秀な大学を卒業した若者が働いている上海の税理士事務所に依頼すれば費用は10分の1で済む。

 

つまり大学を出ただけの普通の経理会計知識しかなければ上海の若者と格差がある限り仕事は取れず、そうなると当然日本側の給料を下げて対抗していくしかないしそれが現実に起こっているのだ。昔なら大学で会計を学んで税理士の資格を取ればそれで一生安泰ってのもあったが、これからは大学を卒業しても常に海外の同資格保持者との競争になるのだ。

 

すでに日本企業のコールセンター業務は海外に移転している場合もある。つまり今までは国境と日本独自のルールと島国と言う条件があって国内に置かれていた雇用でもネットが発達し世界標準が導入されて飛行機が高速化していくと、ある意味誰でも出来る仕事はどんどん賃金の安い国に流れていく。

 

流れていかないのはパチンコ屋、牛丼屋、コンビニ、スーパーなど要するに「その場所になければ成立しない」ビジネスであり、そのようなビジネスは高校生のアルバイトでも出来るわけで牛丼屋に求職に来た40歳リストラに遭ったサラリーマンだからと言って時給2,000円を払う事はない。時給950円で高校生と並んで950円で働くか失業のままでいるかだ。

 

つまり今までは日本と言う特殊な雇用環境の中で終身雇用と年功序列で何もしなくても生きていけたが1990年代に労働者を守ってくれた両方の労働条件がなくなり2000年代に入ってからは雇用の越境化が始まった。その結果として高等教育を受けたと本人が思っている大卒であってさえも世界の中で比較すると実は中国の若者の方がずっと専門的で優秀であり彼らの方が賃金が安いから当然日本の平均的サラリーマンの仕事は国境を越えて中国に流れていくことになった。

 

日本に残る仕事は結果的に給料の安いアルバイト的な仕事か本当の専門能力を要求される超高品質の仕事しかなくなる。つまり普通に地方の私立大学を卒業しただけでは今の日本ではアルバイト的な仕事しかなくなるわけで、その結果として給料はいつまで経っても上がらずにケータイで遊ぶしかなくなる。

 

それでも仕事があれば良い方で、アパートを家賃滞納で追い出されたらもう終わり、あとは難民である。今の日本で発生しているのはまさにこの現象であり、1%の非常に優秀な若者が高給を得る中で残りの99%の若者が貧しい生活を強いられているのだ。

 

東京でも「東京を占拠せよ」と言うデモが行われた。どうでも良いがオキュパイなどと言う変てこなカタカナ英語は使わずにそのまま「東京を占拠せよデモ」と新聞には書いてもらいたい。てか、記者バカか(笑)、一つ発音間違ったら大笑いだぞ。

 

デモの方向性もはっきりしないとは書かれているがそらそうだ、米国に比べれば日本は格差が少ないし一部の銀行員が個人的に大儲けをする仕組みが存在しないから文句の言いようもない。だから「雇用を生み出せ!」と言うプラカードになるのだろう。

 

しかし問題は、例えば「政府は雇用を生み出せ」と若者が訴えようが民間企業では平均的な若者の現在持つ能力で出来る仕事がどんどん海外流出(特に中国)している事であり、残るは政府が例えばダムなどの公共事業を作って都会の若者を山の奥の飯場に1〜2年くらい送り込むことだろう。

 

こういうのはダムと言わずにムダと言うがそれでも若者のガス抜き効果はある。そうやって国のカネで土木現場作業を覚えておけばこれは英語不要なので海外の土木現場でも通用するから食っていけるので自立支援プログラムでもある。

 

しかしそれは自動的に政府の負債を増やすことになり将来にわたって増税に繋がるわけで結果的に国民の首を絞める事になる。増税は不況を招きさらに国民生活は苦しくなるという図が見えてくる。

 

だから日本が目指すべきなのは教育を本当の意味で世界に伍して戦っていけるだけの高い品質のものにする事である。しかし教育は改革されずあいも変わらずほとんどのポン大学で無意味な勉強を日本語だけでやっている。それで21世紀、生きていけるかっつうの。

 

お隣の競争相手は12億人の国で子供の頃から厳しい競争社会の中で目をぎらぎらさせながら大学まで上り詰めた連中である、最初から気合が違うし脳みその鍛え方も違う。

 

これからも日本の教育改革が成される事はないだろう、政府に期待しない方が良い。何故なら政府及びその周辺の特権階級はまさに人口全体の1%であり彼らだけが本当の高等教育を受けて残りの99%はバカなままにしておきたいのだから。

 

賢くなられて今の日本の実態に気づかれて日本改革なんてされたら特権階級の既得権益が吹っ飛んでしまうのだから自分の頭で考える教育など怖くて教えられないのだ。民は依らしむべし知らしむべからず、徳川家康時代からの統治方法が一番効果的なのだ。

 

だからあなたに残る道は3つ。特権階級に入るために東大法学部に入るかキー局の女子アナで玉の輿を狙う。または中国人に負けない専門技術を習得して値段に左右されない高品質さサービスを提供する。もしくは高校を卒業して土木現場作業を覚えるかである。

 

ちょっと余談になるが土木の仕事は海外でも通用するし食える。しかし建設の仕事は食えない。要するに清水建設で社員としてビル建設の受注が出来ても海外起業では通用しないが、現場の仕事は世界中同じであり日本人の真面目さと手先の器用さは現場で通用する。

 

いずれにしても時代は変わった。雇用は国境を超えたのだ。政府に「オキュパイ!」とか、酔っ払い親父が飲み屋でねーちゃん相手に使う下らんジョークみたいなカタカナ英語で文句を言っても自分の能力は高まらない。今やるべきことはまだ食えているうちに中国人や高校生と比べて自分が何が優れているのか、自分の労働市場での価値を見直して即座に自分の価値を高めるべく対策を取る事だ。



tom_eastwind at 13:41│Comments(0)TrackBack(0) 諸行無常のビジネス日誌 

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