2011年10月25日

日本人はなぜ日本のことを知らないのか 竹田恒泰

 

子供の頃に日本書紀とか古事記とかをきちんと読んだ人は少ないだろう。ましてや中国の古典など、なかなか触れる機会がないままに大人になりバカをやり、振り返ってみると「そっち行ったらこけるよ」って中国の古典に書いてたのに、勉強してなかったな〜って後悔したりすることもあるだろう。

 

その意味でこういう本を一度は読んでおくと日本の古代史、とくに天皇を中心とした文化がどのようなものであったかを理解出来るし、何よりも読みやすい。最近の流行かな、分かりやすい教科書的な本がよく売れる。

 

最初にいきなりガツンと来るのが「日本書紀は嘘を書いているから信用出来ない」と本を否定する人たちに対して「じゃあ聖書のマリアの処女懐胎が科学的に間違っているからと言って聖書を否定するのか?」と言う非常に面白い視点から投げかけてくる。

 

こういう視点で日本書紀を捉えるってのはとても新鮮であり楽しい。そうか、そういう視点があったか。新しい価値観を学べた感じだ。

 

確かに聖書に書かれた内容が現在の科学からすればどう見ても眉唾であるとしても、内容の非科学さゆえに聖書全部を否定する人はいないだろう。聖書は基本的に「信じて読む本」であり疑いながら調べるようなものではない。信じない者は信じなければ良い、信じたとしても自分に役立つ部分だけを取り出して学べばよい、そう考えてみれば随分と幅が広がる。

 

その後は日本を戦争なく成立した奇跡の統一国家、中国から守り抜いた独立と自尊など面白いテーマが並ぶ。

 

ただ惜しむらくは2点ある。

 

第一の点は宗教である聖書と天皇の出自を書いた家系図を同じ場所に置いて語る点である。日本書紀が家系図であり個人が信用するもしないも自由と言うなら戦前の天皇崇拝時代に家系図を批判した人間を近代国家の「法律」で裁いた歴史があるというのはどうであろう。

 

米国では聖書の内容を批判しても法律で裁かれることはない。コーランの内容を批判して裁かれるのは宗教国家であるイラクやイランやアフガニスタンであり姦通罪で衆目の前で石をぶつけて殺される国家である。つまり日本が天皇教であり天皇批判が法律によって裁かれる野蛮国家であれば日本書紀を信じなさい議論をしてはいけないという話も分かるが、少なくとも近代国家においては信教の自由は保障されており日本書紀が宗教であると言うなら反対して批判する自由もあるべきだという事だ。だから現代日本で天皇の家系図を宗教と同一化する事でかえって余計な議論を招くような危険を感じる。

 

ぼくは天皇の存在を認めているし、あの人も大変だろうなと思ってる。しかしだからと言って宗教書である聖書を持ってきて比較する必要はないのではないかな。

 

ぼくなら「日本書紀に記載されている事すべてが正しいかどうかって議論をするのは自由だけど何の意味があるの?議論は建設的であるべきでしょ」で終わりだ。過去をほじくって大書の一部の間違いを指摘して、だから全部を否定するなんて非建設的な議論に何の意味もない。一冊の歴史書として読み、あきらかな間違いは放置しておき学べる点だけ学べば良いと思う。

 

もう一点は歴史教科書の部分で天皇は渡来人なのか縄文人なのかを明確にしていない点だ。神武天皇が宮崎の高天原から近畿地方に東征したのはわかるが、では彼らは縄文人と同じように15000年前から宮崎の高天原に住んでいた縄文人の末裔なのかと言う点だ。

 

この点、天孫降臨を読むと彼ら神様のような人々は最初に出雲地方に攻め入り伊勢神宮に鏡を置き宮崎の日向が住みやすいと移住してきた書き方だが、では最初はどこの地方にいたのか?雲の上か(笑)?

 

天皇が中国や朝鮮半島から来た部族であればそれもよし、縄文人ですと言うならそれもよし、邪馬台国議論をしたくなければそれもよし。しかしせっかく天皇の出自や神武天皇を書くならもう少し踏み込んで、なにせ物語であるのだからもっと自由度を膨らませて天皇は宇宙からやってきたとか実は朝鮮人であるから日本人も朝鮮人も同根だよ、変な差別すんなよって筋書きがあっても良いと思う。けどそうするとテーマが広がり過ぎてぼやけるのかな。

 

途中までは考古学的な古代史を書き途中からは天皇の天孫降臨と言う神話にするものだから話が途切れてしまってる。新天地を求めて宇宙からやってきた宇宙人が最初から地球にいたサルの子孫である縄文人と一緒に生活をするようになった、彼らを圧倒的な科学技術と進化した文化で正しい方向に導いたから日本では大きな戦争が起こらなかった、そんな話でも良いのでは?と結構まじで思う。

 

この本の作者は旧皇族・竹田家の末裔なので当然に天皇家の事はよく知っている。明治天皇の玄孫(やしゃご)に当たる方であり、今まであまりはっきりしていなかった天皇家に関する具体的な知識も学べて面白い。

 

この本を買う時に合わせて「古事記」と「原発〜」と「日本はなぜ〜」も買ったので、天皇家側から見た日本史を勉強できそうだ。ぼくの書き方が悪くてこの本が面白くないという印象を受けた方には予め誤解を解いておきたいが、この本は十分に面白くお金を払って読む価値がある。

 

それは作者が天皇の直系であるだけでなく慶応大学を卒業して憲法学・史学を専攻しているという肩書きではなく、本の内容自体に学びが多いからだ。日本人であり日本古代史の話を知りたいなら一回は読んでおくべき本だ。



tom_eastwind at 11:39│Comments(0)TrackBack(0) 諸行無常のビジネス日誌 | 最近読んだ本 

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