2011年10月28日

ニュージーランドの住宅


今日はお客様同伴でオークランドの建設現場を視察。日本で住宅建築を手掛けているお客様とオークランドで住宅建設をしている会社の社長と現場でミーティング。工法の違い、似てるところ、二人のプロが話をしているのを聴くだけで随分学ぶものがある。

 

例えばオークランドの住宅建築では駐車場がダブルガレージと言って二台分のスペースがある。なので駐車場の横幅が6メートルくらいある。その上の2階部分が住居となる場合はガレージの天井に鉄製の柱を入れて支えにするのだが住宅自体は木造なので鉄の柱の周りはすべて木だ。お客様はこれを見て「うわ〜、日本じゃあり得んですね」

 

どういう事か聞くと鉄と木はそれぞれ膨張率が違うので混合で建てることは日本の建設基準では認められないとの事。ほ〜、ではこの家は日本の建築基準ではOUT!ですな。けどNZでは鉄を入れないとOUT!なので、ところ変われば品変わる。

 

この住宅はツーバイフォー(2X4)工法だけど壁の中にはすかいを入れてない。その代わりに格子状に木を組み合わせている。これも日本じゃあり得ない工法で、地震の横揺れを防ぐためにはすかいは基本でしょと言うとNZの社長は「これがこちらの常識です」。NZは地震国家なんだけど本格的な地震はまだ少ないから横揺れで人が圧死するという発想がないのかもしれない。

 

水漏れ防止の技術については、壁に必ず隙間を作り空気が入るようにした上で壁の途中または下部にちっちゃな穴を空けておき、空気を通して湿気を抜き穴を使って水を抜く。この技術は日本もNZもあまり変わらんなと言ってた。

 

けれど屋根の部分を見た時日本のお客様は「あれ〜!そのまんま瓦じゃん!」とびっくり。これは僕もよく日本から来たお客様に指摘されるのだが、こちらでは瓦を乗せたらそれで終わり、防水シートは敷かないのだ。これでは雨もりするでしょうって、そう、その通りなんだけどNZの大工にいくら言っても「これで間違いない、雨は漏れない」って一点張りで、実際に雨が漏れると「それは瓦の問題だ」。ちがうし・・・。

 

NZの社長はその問題を理解しているから彼は予算のある限りシートを敷くようにしているが、このあたりキーウィの発想と言うか、良いものを見たことがない人間にいくら説明しても、ゴジラ映画を観た事ない人にゴジラを説明するようなものだ。

 

そして地震の時の一番のポイントとなる地盤強化。NZでは勿論家を立てる前に地盤調査をするのだが、粘土質の場合はかなり深く掘って玉砂利みたいなものを埋め込む。でもって2X4工法ってのは一つのブロックみたいな作りなので地震が起きても地盤が揺れても家が玉砂利の上を左右に滑るようになるから壊れにくいという。

 

ほー、そういうもんか、勉強になるなーって思いながらひょいと横を見ると大きな発泡スチロールがある。ちょうど大型テレビを包むような感じの大きさだ。「あれ?何ですか?」資材を搬入する時に使ったのかなと思ったら、「あー、あれっすね、あれを地盤の底に敷くんですよ」だって・・・。ちょっと待て!地盤は発砲スチロールかい!かなりびっくりだけどこれもこちらNZでは普通の方法。

 

確かにこちらの家を見ると、ぼくの自宅もそうだけど斜面に建つ家は床下に柱を打ち込んでる。木の柱を打ち込んでるんだけど、その上に家が乗っかっている状態で柱と家は留めてない。発泡スチロールもありなんですな・・・。

 

日本のお客様が「ほー、これは良いな」と言ったのが外壁に使う木製の横板。こちらの住宅ではごく普通に住宅の外壁に横板を使っている。これは耐震性もあるし見かけも良い。日本にはないのですかと聞くと、これを使うとコストが高くなってしまい、住宅を売るという事があまり一般的ではない日本では、住宅は30年くらいで建て替えをするし引越しをすることも少ないので外見よりも「住めれば良い、費用は安い方が良い」と言うことでどうしても横板は嫌がられるようだ。うーむ、日本にいる間はアパートしか住んだことないから全く記憶にないが、そうか、そういうものか。

 

こちらでは住宅は10年ごとにライフスタイルに合わせて引越しをするのが普通。例えば結婚してすぐなら郊外のちっちゃくて安い、新婚夫婦でも手の届く住宅を買う。数年して子供が出来て5歳くらいになると郊外の広めの、3ベッドルームに引っ越す。子供たちが18歳くらいになると大体家を出ていくから、そうなると夫婦二人なので街に近い便利な2ベッドルームに移る。

 

そういう時に家を毎回売るわけで、だから家を買ってもいつでも売れるように小まめに手入れをするし外見をきちんとする。これはご主人の仕事なのでこの国の週末の旦那さんの仕事は芝刈りとペンキ塗りと塀の手入れとなる。

 

住宅建設一つをとってもいろいろと基準が違うのは当然としても、家を売ることを前提とした文化のある国と家を終の棲家と考える文化の国の違いとかも勉強になった。まだまだ学ぶことが多いNZ生活でした。それにしても、この国にはもっとプロの日本人建築家がいればな、仕事は山ほどあるんだけどな、って思った一日でした。



tom_eastwind at 11:59│Comments(0)TrackBack(0) 諸行無常のビジネス日誌 | NZの不動産および起業

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