2011年12月10日

万引きの指

毎年12月になると当社オフィスの道路を挟んだ隣のビルに高さ10m以上(目測)のサンタクロースの像が立つ。ここ数年は横にトナカイやクリスマスプレゼント箱を飾ったりして、何とか彼らなりに飾りつけを頑張っている。


このころになるとサンタパレードと言う行列も出て来て日曜日のクイーンストリートを人で埋めるほどになるのだが、ニュージーランドの子供たちはこれが楽しくて仕方ないようで午後からのパレードなのに朝から道路に茣蓙を敷いて場所確保している。日本の花見感覚かな。


パレードはオフィスの真下を通るので7階のオフィスの窓からよく見える。そう、キーウィには年に一度の大事なお祭りなんですよ。


ところで昔はこの大サンタクロース人形の右手の人差し指が前後にリモコンで動いてて「ありゃどう見ても万引きの仕草だわな」と思ってたら5年ほど前かな(遠い記憶)、新しいサンタに作り替えた時に指が内側に曲がって動く動作かなくなってた。


多分日本に出張したキーウィビジネスマンが自慢そうに「どうだこの指、リモコンで動いてるんだぞ〜」と言って、それを見た日本人ビジネスマンがすまなさそうに「これ、日本じゃ万引きって意味ですぜ、作り直すならいろんな国の人の意見聞いてみたら」と言われたのかもしれない。


キーウィ文化的には何か良い意味のある仕草なのだろうが世界から見れば「違うくない?」と言われれば一応考えたりするのだろう。もちろん大事な文化にはすべて歴史的背景があるわけで、アンザックデイが負け戦だったとしてアンザックデイは国民の祝日である。勝った負けたではなくキーウィらしく勇敢に戦った事に意味があるのだから祝うとなる。それは正しい。


どこの国でもそうだがその国民が無意識に取っている行動には必ず背景となる歴史的、文化的原因が存在する。


そう言えば最近隣のオフィスに新しくガタイの良い人のよさそうな白人キーウィが出入りするようになったのだが(隣はファイナンス系の会社)、その頃から男性トイレの入り口の電気が切られるようになった。トイレはこじんまりしており個室x2に男子用お立ち台、手水が2台である。ちっちゃいし頻繁に利用するしどうせ夕方になればお掃除さんがやって来て電気を切る。だから今までは特に気にもせず付けっぱなしにしていたのだが、こうやって節電するキーウィが男子チームに入ってくると、おお、そうか、小まめの節電もありだなと思って最近はぼくも電気を切るようになった。


ニュージーランドでも田舎に行けば今でも自家発電だったりするから子供の頃から田舎に住んでたキーウィは小まめの節電が習慣になっているのだろう。


同じ習慣でも時々日本人ワーキングホリデイメーカー(ワーホリ)がキーウィとフラットシェアをすると、彼らの生活態度に文句をいうものもある。


何を言ってるのかと言うと、

まず「トイレに入った後に水を流さない〜、何て不潔なの〜!」

次に「シャワーの利用時間が5分だけしか使っちゃいけないなんてあり得ない!」

とか「隣の部屋の人、何日もシャワーしていない、汚い!居間のソファに座るな!」

とか。


けどトイレ、電気、シャワー、これはどれもキーウィ生活では彼らなりに普通の習慣である。日本人からすれば節電は分かるがトイレとシャワーが意味不明、きっちゃなーい!となるがこれは先ほどの電気と同じ理屈で、ニュージーランドの田舎では今も水は雨水に頼っている家庭があるのだ。


だから節水に心がけており一回程度のおしっこなら流さない。もしかしておっきいほうも・・。シャワーなど5分以上もお湯を使うなんてあり得ん!NZの住宅は日本のようなガスでポンと沸かす方法ではなく、160cmくらいの大きなドラム缶みたいなものに水を入れてそこに電熱バーを突っ込んで沸かす方法なので日本式に使っているとすぐにお湯がなくなる。


てかドラム缶のサイズはベッドルームと比例しておりシャワーしか使わない事を前提としているから日本人が普通にお風呂にお湯を張ったら二人目がシャワーする時は水、、なんて事もよくある。


だから田舎で生まれ育ったキーウィは子供の頃から節水や節湯を心がけており、郷に入らずンば郷に従えって事でローカルルールをフラットルールに導入している。


これは日本人が日本の自宅にいる時に訪れて来たキーウィに「靴脱げ!」と言うのと同じことだ。靴がそれほど汚れてなくてもやはり日本人としては「土足で上がられること」は科学的にどこまで汚染が許されるかではなく習慣の一部なのだ。


世界が小さくなっていく中で人は思いもよらない人種の思いもよらない習慣とぶつかることがある。そんな時、予め理解していれば説明も出来るし怒る事もない。時には相手の習慣が今の時代に合理的であれば自分の習慣を変化させて万引きの指を止めても良いと思う。要するにフレキシブルになる事だ、プラスの変化なら受け入れる事、プラスかどうか分からなければまず相手の習慣の背景を理解して納得出来れば実行してみる事も良い。それでなくてもこだわる事は世の中に多いのだ、


すべての習慣や考え方を一つにするなんてあり得ないし、だったらお互いに話をして大事なこだわりでなければいっぺんくらい相手のいう事を実行してみたら新しい世界が広がるかもしれない。もちろんトイレとお風呂と土足厳禁は日本人の譲れないこだわりだが、それ以外なら話し合う事で譲れる部分がたくさんあると思うしそれがお互いの文化を理解することに繋がり文化的衝突を避ける大事な要因でもあると思う。


ちなみにうちの自宅では日本、中国、NZの文化が3つがっぷりと組み合っているから食後のお皿を洗わない事が気にならない奥さんに対して食後にすぐ綺麗にしないと気がすまないぼくのぶつかり合いがある。大体負けてるので皿洗いはぼくの役目となっている(笑)。



tom_eastwind at 12:49│Comments(0)TrackBack(0) 諸行無常のビジネス日誌 

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