2011年12月27日

東奔西走 外務省

来年からの流れは、日本外交は対中接近の方向に向かうと思う。米国から許可をもらったようだからだ。国債の持ち合いと貿易決済の通貨に米ドルを使う比率を減らすというのは米国の許可がないと出来ない。

 

今回の野田首相の中国訪問は行く行かないともめてたが結局胡錦濤主席にも会ってきた。日本の任期1年制の首相が中国の偉大なる主席様に拝謁(笑)出来るのはそれなりにお土産をたっぷり用意して(朝貢??)お返しに返礼の品を受け取ったわけで、そこに見える外交姿勢は急速に中国接近する日本である。

 

もちろん米国が許可をしたわけだからこれは沖縄基地問題も含めて中国の第二国境線がいよいよ明確になり、米国は今後の東北アジアの覇権を中国に任せて自国の経済立て直しを行い商品の売り込み相手(お得意様)として日中を位置付けたいのだろう。

 

これは日本から積極的に何かを仕掛けたわけではなくいつものように「いないふり外交」や「他人に振り回される外交」に見せかけているが、日米中の思惑が一致した珍しい案件だと思う。今後ビジネスを展開する上で長期的に見れば中国を選択することは間違いではないと思う。

 

ただし日本人はえてして即応効果を望むし何か問題があればすぐに相手と協力して問題を片付けようとする癖があるので、その意味では中国は付き合いづらい相手である。香港人でさえ腹の中では大陸中国人を嫌っており彼らの横柄で礼儀知らずな態度には愛想を尽かしているが、仕方ない、彼らは土地も工場もビジネスも持っているのだ、隣の国と言う距離の近さもあり言葉も近い(正確には北京語と広東語)から表面上はにこにこしながら付き合う事になる。

 

日本人のような真面目な人々が中国と渡り合うのは中途半端では絶対にやっていけない。彼らは最初は日本人と「ぼくらアジア人は友達だ」とか「一緒にビジネスをしよう」と言うが、それは5割以上の確率で嘘と思って良い。彼らは日本から金が送られてくると分かってる限り嬉しそうに「乾杯乾杯!」とやるが、一旦金が中国に届き投資先に送られた瞬間にそれまでの企画書は進行しなくなり金はどんどん関係ない他の会社に移されて終わりである。

 

またはビジネス案件(レストラン等)であれば彼らは自分で出来ないから最初の1年くらいは日本人にやらせておいて軌道に乗ったら日本人は合法的に追い出されて中国人に乗っ取られる。結局しゃぶられて食われて捨てられて追い出されて終わりである。

 

それでもやりかたはあるしやりかたさえ分かっていれば中国で利益を出すことは出来る。それは彼らのプリンシパルで行動する事だ。日本人の行動様式とずいぶん違うが彼らのプリンシパルを実行する事はビジネスでありそれを恥ずかしいと思ってはいけない。

 

ではそのプリンシパルはどこにあるのか?答えは中国の歴史の中にあると思う。戦前の日本では大学教育の中に孫子や孟子などを取り入れており明治時代の日本人は漢詩を書くことも出来た。1945年以降に教育体制が変化して中国が共産党独裁支配に変わってから一般的な日本人は英語を勉強するようになり外務省としても米国追従派が主導権を取るようになった。

 

しかしこれからは中国のプリンシパルを理解して、彼らがいつ笑い何に怒りこちらがどう対応すれば仲間として見てくれるのか、そういう事を知っていくことが日本人ビジネスマンの生き残る道だと思う。

 

少なくとも最低な対応は数年前に日本人駐在員が駐在先の地元レストランでウエイトレスのサービスの悪さに大衆の面前で怒鳴りつけて恥をかかせそれが地元の新聞に取り上げられその企業のビジネスに多大な影響を与えた事であろう。

 

相手に対して自分の地位を利用して自分の政治的意思を通すことが外交である。自分の地位が上でも下でも良い、どちらの場合も戦略があるしそれは孫子などの本を読むと学ぶことが出来る。そして自分の意思を相手に伝えて自分の被害なしに自分の意思を通す事が最善である。そしてどうしても自分の意思が通らない時にそれでもどうしても意思を通したい時に初めて外交戦略の最後の手段である戦争の可能性を考えて被害と利益の計算をして利益が大きければ実行する事になる。ここらへんはクラウゼウィッツも同じことを書いている。

 

日本人駐在員は事件が起こる前の日頃その店にどれだけ利益を落としていたか?その店員にどれだけ個人的に利益を与えていたか?そういう根回しなしにいきなり怒鳴った結果として相手が抵抗してきた場合、自分にどのような被害最小化をする能力があるのか?第一怒鳴る事で何が得られるのか?そういう全体像を把握しないままに怒鳴る、しかし現実的には多くの日本人が日本のサービス標準を普通の事として相手に押し付けてしまい自分の目の前にいる人間が外国人である事に気づこうとしない。

 

来年からの外交は中国に近づいていくがそれが米国から離れるという意味ではなく両方と等距離外交になるという事だ。すでに貿易相手国として日本の重要なパートナーでありながら日本人はまだ中国の事を知らなさすぎると思う。相手の実態を知らないまま新聞記事だけを見て嫌中になったりするのでは交渉上手ともいえない。

 

今までは米国追従外交を省是としてきた外務省もこれから地図のない海に乗り出すことになる。その時に最も大事なものは日本政治のプリンシパルである。プリンシパルのない人間は相手にされない。それは国家も同様である。



tom_eastwind at 02:10│Comments(0)TrackBack(0) 諸行無常のビジネス日誌 

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