2012年03月14日

「日本はなぜ世界でいちばん人気があるのか」 竹田恒泰

日本はなぜ世界でいちばん人気があるのか (PHP新書)
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天皇家の血を引く竹田氏は慶応大学で法律を学び憲法や天皇に関する研究を行いすでに作家としてのある程度の地位を確保しているが、むしろ彼の場合は作家という枠に入れる必要はなく、自分の意見を表明する場所の1つとして本を書いているのだから、研究者と呼ぶべきだろう。彼の開催する古事記や天皇や憲法に関する勉強会はすでに3千人を集めて人気がある。

 

その理由の根源にあるのが彼の理路整然として語り口、客観的事実と主観を切り離していながら自分の主観を支えるために客観的事実をうまく使っている。それも自分に都合良いデータを集めて「だ〜から、これ、ダメなにょ」ではなく、必要なら相手方のデータを持ってきて相手方の理論に乗った上で相手方を論破する手口(笑)。

 

手口と言えば言葉は悪いのだけど、よく見るとこの人は高校時代にディベート、つまり英語の討論会でインターハイで優勝した程の実力の持ち主である。だからこの本も実に論理明快に語られている。例えば↓

 

BBC2006年から行なっている調査によれば世界に良い影響を与えている国は3年連続日本で2009年は四位だったものの日本を肯定する比率は最も高く2010年はドイツに次ぎ二位となった」こりゃもう事実の塊である。データのとり方や参加国などは本を買って読んでもらうと良いが、ぼくの肌感覚とほぼ同様である。

 

2006FIFAの優勝国であるイタリアの代表選手の多くはキャプテン翼のファンである。翼が歩んでいた道こそ僕らの夢そのものだったんだと語っている。〜中略〜日本の漫画アニメには主人公が成長していく作品が多い。TomJerryTomが成長したらネズミ取りが上手になり追っかけっこは成立しない〜中略〜日本の漫画はふざけているように見えて常にその根底に正義があり正直で真面目で勤勉な日本人の価値観が漫画、アニメを通じて世界に伝播されていることになる」数字ではないものの事実であり彼の主観とは言えず漫画世代のぼくも十分に共感出来る。

 

「シベリア抑留で25千人の日本人がウズベキスタンに連行されたが、待遇の改善ばかり要求するドイツ兵捕虜と違い日本人は過酷な労働を強いられ813名の死者を出したが理不尽かつ非人道的な状況の中でも手抜き一つすることはなかった。彼らが建設したナヴォイ劇場は丁寧な仕事をして見事な劇場を作り上げた。19664月、タシュケントを中心として震度8の地震が発生して市内の建物の三分の二が倒壊したが見渡す限りの瓦礫の山の中で凛と輝いていたと言う」これは事実の上に自分の主観を混ぜている。実際には崩壊した建物の埃の中で砂色に埋まっていたはずだが、それをあえて「凛と輝く」という言葉を選択する。これが上手い。ちょうど良い、文句の言えないぎりぎりセーフの表現だ。

 

これ以外にも黒船来航後すぐに日本人が黒船を作り上げたとか蒸気機関車を作ったという「事実」を羅列していく。こうなると反日でも逆らうことは出来ない。そして次に縄文の歴史や日本語の成立、明治維新で多くの中国人が日本に留学した学んだ事実を出した上で「もったいない」「いただきます」「ご馳走様でした」の語源に触れていく。

 

「もったいない」は普通の日本人なら分かるだろう、分からない人もいるが反日の為に時間の無駄な議論をするつもりはない。「いただきます」は「あなたの生命を頂きます」とすべての野菜や肉や魚や米や、生けとし生けるものの命を奪って生きているから命を奪った相手に対してまず感謝の言葉を伝える。「ご馳走様でした」はその生命を一生懸命料理してくれた作り手に対する感謝であり、食前食後の言葉として発するものである。

 

以前どっかのバカ親が「金を払って飯を食ってるのに“頂きます”とは何事だ!」と学校に怒鳴りこむ事件があったが、これなどまさに日本人のまともな日本語と歴史を知っていればあり得ない発言である。ましてや学校側がそれに対して「すみませんでした、やめます」なんて事になったら教育崩壊である。学校の先生事態の質が思いっきり落下しているのがよく分かる。

 

この本は海外で生活をしている日本人にこそお勧めしたい一冊だ。日本人が何によって成り立っているか、海外の人間と日本人論を語る時に感情論ではなく理論で語り武装出来る本だ。海外に住んでても日本のAmazonで購入出来る。郵送料と本代金と同じくらいだがこれから長い人生を海外で送るつもりなら安い投資である。



tom_eastwind at 21:50│Comments(0)TrackBack(0) 諸行無常のビジネス日誌 

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