2012年06月29日

1997

★記事開始

中国の胡錦濤フージンタオ国家主席は29日、英国植民地だった香港が中国に返還されて15周年を迎える7月1日を前に香港入りした。

 胡主席は一連の記念行事で、香港に「高度な自治」を認めてきた「一国二制度」の成果を強調する。胡主席の滞在期間中には香港、中国政府に対する大規模デモが計画されており、厳戒態勢が敷かれている。

 胡主席は空港で、「香港は返還から15年で、一国二制度の実践により常に豊かさを増し、発展してきた」と記者団に述べた。

 しかし、市民の間では、貧富の格差拡大などにより、香港政府への不満が高まっている。毎年7月1日に行われるデモの参加者は今回、過去最多とされる03年の約50万人に匹敵する規模となるとの予測もある。

20126291811  読売新聞)

★記事終了

 

あれから15年にもなるのか〜、感慨深くなりますね。この街を離れたのが1996年、奥さんが「97年に中国に返還されたら出国禁止される」と本気で恐れてニュージーランドに戻る事を決めたのだが、落下傘降下でオークランドで会社を興して、そのへんの苦労は昔話だが、昨日の夜香港に到着。

 

今日は九龍側でアポイントが一件あり、明日もう一件で香港の仕事は終了する。香港が97年以降発展したか?ぼくが知っていた頃の香港ほどではないが日本よりは数段発展が優れている。この街の発展の一番の原因は、この国を愛している愛国者が居ないという事だ。

 

香港は基本的に外人の集まりだ。中国各地から流れてきた人々がいつの間にか大きな流れを作って現在の香港人を形作っている。潮州人、上海人、広東人、様々な地方から集まってきた彼らは自分たちを国家としての香港人という認識を持っていない。

 

無論香港人であり大陸中国人とは絶対に一緒にするなって無限のプライドは持っているが、じゃあ国家としての香港を愛しているかというと、それはない。自分の生活する街として好きだけどお上が中国人になるなら出ていくさ、って事で1990年代には返還後の一国二制度を信用しない香港人、当時600万人のうち60万人が海外に移住した。

 

行く先はカナダ、オーストラリア、英国、ニュージーランドなど英国連邦の国が多く、彼らは移住した街で自分たちの中国人社会を作り上げた。シドニーもオークランドも中国人街がわりかし新しいのに気づく人は多いだろう。カナダのガスタウンの近くにあるチャイナタウンとかサンフランシスコのチャイナタウンとは全然違う。

 

あれは移民の時期が違うわけで、1800年代後半の清朝の圧政から逃れて来た中国人が初代チャイナタウンを作った。当時のオーストラリアとニュージーランドはアジア人排斥をしておりどちらの国でもチャイナタウンが出来ることはなかった。唯一1860年代にゴールドラッシュで賑わったダニーデンとアロータウンに中国人の名残があるくらいだ。

 

香港はアヘン戦争のために英国植民地となり、移民する必要がなくなった。それから約100年後、1990年代に香港人の大移動が「中国返還」と共に広がった。

 

ぼくが香港で過ごしたのは1991年から1996年までで、それなりに仕事も生活も充実していたのだが奥さんの鶴の一声で落下傘〜まあいいや、川の流れに身を任せましょうって感じで今に至るのだが、今でも香港は一国二制度が続いている。その意味で中国政府は息の長い政治をしているなと思う。

 

ぼくの奥さんは中国人であることを誇りに思っているから現在の共産党中国や薄汚い中国人に対して僕以上に嫌悪感を持って接している。日本人のぼくからすれば「そんなもんでしょ中国人なんて(笑)」なのだが、そんな事を口にすれば奥さん激しく怒る。愛するがゆえの怒りなんだろね、

 

奥さんが愛しているのは中国という故郷であり大地であり香港という自分が生まれ育った街であるが、政府や政治は大嫌いだ。ジョン・ル・カレの名作「スマイリーシリーズ」でも、中国を密出国した中国人が「政治が抱けるか?政治が食えるか?」と中国に残った兄に怒りと共に問いかける場面がある。

 

それなのに香港は発展した。それは簡単に言うと割り切っているからだ。政治家は所詮悪いことをする連中、自分たちの仕事の邪魔をする連中、ならば最初から性悪説で対応すればいい、出来るだけ近づかない、距離を置いて接することだ。

 

そして政治家を選ぶ際はとにかく悪いことが出来ないような仕組みにしておいてから後は彼らに勝手にやらせる。このあたりが徹底的にドライだからうまくいく。

 

日本の場合はこのあたりがどうしても「愛国心」とか「逃げた」とかの言葉にごまかされて、実は自分が政治に騙されていることに気づかない。

 

故郷を愛しているが政治を愛していない香港人が60万人も海外に移住した。彼らは移住した先のそれぞれの街で中国人街を作りゼロからビジネスを作り上げ旧正月には龍でお祭りを楽しむ。

 

政治と故郷は別物。政治は性悪説で対応する、このあたりがとても明確な中国人は、現実に対応するのがとても上手い。

 

「理想」とか「べき論」とか、抱けも食えもしないものを実行力のない人間がうんざりするほど語っているのがまさにいまの日本ではないだろうか?

 

今国会では次々とヤバ筋の法律が通過した。まだどうにかなると思ってる間に足元はコンクリートで固められて動けなくなっていく。自分に力のない人間、他人に頼ってどうにかと思ってる人間、2017年に向けて日本は一気に急降下していく。



tom_eastwind at 23:38│Comments(0)TrackBack(0) 諸行無常のビジネス日誌 

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