2012年07月20日

財務省の夢

先日の返す刀の続きだが、では何故財務省は国家財政を黒字にしようとしているのか?彼らは聖人君主であり日本国民がdaisukiだからか?もちろん違う。

 

実はここだけは非常に感覚的な問題なのだが、財務省のエリートは子供時代から勉強で負けた事がなく自分が望むものをすべて叶えてきた。ところがいざ卒業して超一流組織に入ってみたら何とその組織は大赤字。自分が経営している会社が赤字ってのは諸外国に対しても自分に対しても恥ずかしい、だから黒字化したいのだ。

 

もちろん彼らの感情と国家の方向性が一致していれば別に問題はないのだが、彼らを理解する上で「財務省には夢がある。それは日本を黒字国家にして世界に冠たる国家で誰もが頭を下げる国家にする」事だ。

 

戦後の日本は米国に追いつき追い越せ政策で坂の上の雲が1980年代には見えてきた。日本製の高品質のラジオやテレビや冷蔵庫などで米国の家電業界を完膚なきまでに叩き潰して自動車も米国人をして「日本車の方が安くて高性能」と言わせるほどになり貿易摩擦まで生み出すほど日本は強かった。

 

ところがそうやって強い日本を作ってきたのは第二次世界大戦の完膚なき敗戦を知っている官僚たちであり彼らは1980年代に次々と引退して次に実権を握ったのは「戦争を知らない子供たち」だった。

 

失敗経験が全くなく親の財産に乗っかって世界から褒めそやされてしまった子供たちはバブルを生み出してしまいその崩壊の処理において更に傷を広げて遂に失われた20年を創りだしてしまった。

 

これには1995年の住専問題当時に大蔵省が政治スキャンダルにまみれて10年に1人の大物と言われた斎藤次郎次官が退官し大蔵省本来の力を発揮出来なかったとも言える。

 

その後は政治のバラマキで赤字国債は急増するが大蔵省にそれを止める力はなく、逆に財務省と金融庁に分離されてしまい、ALL大蔵の存在感は大きく薄れた。

 

小泉政権時代にやっと少しづつ財務省も体力を整え金融庁を再度足元に引き戻して他省庁にも影響力を発揮出来るようになり、小泉後の短命政権を利用してその力を発揮し始めた。

 

そして民主党政権が成立してその後ねじれ国会になったあたりで一気にその力量で民主党と自民党を天秤にかけて財務省にとって最も有利な政策を次々と打ち出すようになった。これが消費税から始まる一連の改革だ。

 

現在は自民党及び民主党議員がとにかく自分の議席を守るために官僚のご進講を受け入れている。結果的に国民がどうなるかよりも次の選挙で自分が勝つためには官僚という巨大組織を敵に回すわけにはいかない。

 

そしてその官僚組織の中で最も優秀な組織が財務省であり彼らはバブル崩壊後の大蔵省の凋落を見てきたから何とか今の赤字財政を黒字化して国家として対外的に「誇れる存在」になりたいのである。

 

明治時代初期を思い出してもらえば分かりやすい。江戸幕府を倒した明治政府はその優秀な官僚組織を持って富国強兵を掲げて短期間の間に強力な軍隊を作り上げて日清戦争にも日露戦争にも勝った。しかし実際に銃を撃ったのは地方出身の農家の息子であり彼らの犠牲の上に日本国家が海外に誇れる国となった。国を強くするために生糸を作り野麦峠の話などを生み出した日本は、要するに国民の犠牲の上に成立したのである。

 

今、財務省が描く夢はまさに当時と同じであり、財務強化の為に増税と社会福利の切り捨てを行い相続税の強化で個人資産を国家に移動させようとしている。これが最終的に国家社会主義の道を目指しているのは明確であり、問題は国民がそれを受け入れるかどうかだ。

 

ぼくはいつも思っているが日本的国家の作り方も「あり」だし一つの道だと思っている。国内で内紛を起こして海外から攻め込まれるよりは余程まじである。そしてこの方法はおそらく95%の日本人を25年間だけ幸せにするだろう、次のシステム崩壊が起こるまで。

 

ただしその仕組は法治国家でなく平等でなく公平でもない官僚国家であり「長いものに巻かれる」事を納得して「ご無理ごもっとも」を受け入れる事が出来る人々のみが納得して生活出来る国である。

 

財務省の夢と個人の夢が同じ方向性を向いていると思えば、それはそれで良いのではないか。ぼくの仕事は国民のうち5%の「どうも納得出来ない人々」がニュージーランド生活を過ごす為にお手伝いをすることだ。



tom_eastwind at 12:10│Comments(0)TrackBack(0) 諸行無常のビジネス日誌 

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