2012年08月22日

移住の目標

今日はぼくの本業の話。

 

今から数年前かな、ニュージーランドに移住したのだけど34年で日本に帰る家族が目立った時期がある。

 

この理由は明快で、ニュージーランドにやってきた日本人がビジネスマンとして中の上に行くためには、余程世界で通用する専門能力がない限り起業独立するしかないわけで、独立しても成功する確率は思い切り低く1年で市場から消え去る新規企業が8割という状況では到底冒険のしようもない。

 

けれど英語能力、現地のコネクション、どれを取ってもNZ生まれのキーウィには敵わないわけであり、相当の努力をしなければ結果的にいつまで経ってもニュージーランド社会の中では中の下に位置するわけであり、努力するためにこの国に来たんじゃないって考えてると、いつの間にか「何だかせっかく来たニュージーランドだけど、何だか何時まで経っても中の下じゃな〜、日本に帰れば友達もいて中の上くらいの生活が出来るのにな」ってことになる。

 

そこで彼らは永住権取得後2年経過、無期限永住権に切り替わった頃に日本、東京に帰る。自分の故郷では子供の頃からの同級生がいて大学時代の仲間が立派な企業に就職してて、週末の友達パーティではお互いの仲間意識が確認出来て彼らが何かと助けてくれる。

 

海外で数年働き英語力も身に付けて海外での現場の仕事の流れも分かっている30代後半であれば日本の現場でもすぐ使える。

 

最近のオークランドでは家族で帰るというケースは目立たない。これは日本がやばいと感じているからだろう。今の日本に戻るよりもオークランドでちょいと努力して中の中くらいを目指していこうとする傾向だろう。

 

ただ、その中に長期目標のない人々が増えているのも事実。とりあえず良さそうな国だからやって来ました、あまりあくせくして働きたくはない、家族は大事にしたい、けどなんとか中の中くらいには位置したい。現地で就職先を見つけて〜と、そこまでは良いのだが、肝心の「何故家族でニュージーランドに来たのか?」という部分を考えてみよう。幸せな家族生活を構築しようと思ったんだよね。

 

日本ならあなたたちを守ってくれる両親も親戚も友達もいるだろう。言葉だって通じるし法律も少しは分かる。けれどニュージーランドに来たら誰もあなたやあなたの家族を守ってくれない。ましてや中の中で生き残ろうとすれば競争相手は地元キーウィだけでなく地元大学を卒業した優秀な中国人や韓国人の若者とイス取りゲームをするのだ。

 

そのような状況であくせくせずに家族を大事にというのはかなり両立が難しい話である。働く場所が日本であれば勝ち目もあるだろうが、旅先の土地で中の中、月給で言えば8千ドルくらいを稼ごうと思ったら並大抵の苦労では済まない。

 

独身でありフラットシェアしてます程度なら月給2千ドルでも食っていけるが、家族を連れてきてでは到底ムリだ。このような場合はいかにして金融資産を運用するかがポイントになる。高い給料だけを取りにいくのではなく日本の親から借りてでもニュージーランドで資金運用をする。

 

一番良いのは親から金を借りて不動産を購入して生活費の家賃部分を削減することだ。これで月に2千ドルは節約できる。

 

けれどそのようなファイナンシャルプランを作るにはかなりあくせくして勉強が必要であり、もしプランの原資となる資金が入手出来なければ、普通に就職するだけで中の中という生活はまず不可能である。

 

「ワナビー族」というのは日本語で言えば「なりたい族」だろうか、移住したい永住権欲しい、NZに住みたい、自分が望んでいるのだから叶うはずではないかと思う。そこは間違いではない、しかしその為の努力はしないのか?努力もせずにNZに渡ってきていきなり現地生まれのキーウィと同等の生活を望むのなら、何かを捨てなければいけない。

 

家族を大事にするのは自分を甘やかすという事ではない。自分が少々犠牲になってでも一生懸命働き家族を楽にさせてあげる事が先ではないか。

 

そう、この国で家族を守りながら中の中の生活を維持しようと思えば「あくせく働き」「あくせく学び」「常に上昇の機会を狙い」という努力が必要なのだ。中国人や韓国人移民は常に機会を狙いながら上昇志向を持って生きている。

 

それでも社会全体がのんびりしているから「あくせく」と言っても家族で食事をする時間は取れるし朝ごはんを子どもと一緒に食べて学校に送るくらいの余裕はある。休みもしっかり取れる。日本に比べればずいぶんのんびりしたものである。

 

せっかく移住して仕事も見つけたけどいつまで経っても中の下では、やはり40歳前後になった時に思わず自分の人生を振り返って、今の社会で自分の存在の薄さを感じてしまう。

 

これは友達の数とも比例しているが、現地にしっかり溶け込み週末はバービー(BBQ)を友達と楽しみ一緒にラグビー観戦して子供同士が庭で遊んでて奥さん同士はキッチンでお喋りを楽しみ、くらいになれば収入がそれほど多くなくても社会に参加している存在感で中の上と言えるだろうからそれなりに満足した生活を送れる。

 

これから移住を考える30代のご家族は、きちんとファイナンシャルプランを作り10年単位での生活の拠点をどうするか、しっかり決めた上で渡航することをお勧めする。

 

一か八かでやってきても出来ないものは出来ないし、就職就職と目先のことにばかり拘っているが、日本人はどうも一旦就職できればあとは安泰くらいに思っているが、キーウィ社会では就職が機会の第一歩でありそこからどう自分の生活を作り上げていくかが大事である。

 

永住権取得にしても、それは手段であり目的ではない。移住の目標が永住権を取得することではないという事をしっかり認識しておこう。



tom_eastwind at 10:56│Comments(0)TrackBack(0) 諸行無常のビジネス日誌 

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