2012年08月27日

仕事ありますか?能力ありますか?

今年卒業した大学生56万人のうち安定した正規雇用は33万人、約60%とのニュース。ニュージーランド人に理解し難いのは正規雇用。正規雇用という考え方がないニュージーランドでは同一労働同一賃金でありどのような形であれ雇用されている限り労働法によって誰もが平等に権利を保障される。

 

その為この国ではジョブホッピングと呼ばれる、その時の環境に合わせて仕事を渡り歩くのも普通である。有期雇用であればそのあいだに実績を出さなければ契約延長せずとなるし不定期雇用であれば首にはならないものの賃金は上がらず労働強化に繋がるので、結局自発的に退職となる。

 

この国での雇用は雇用者と被雇用者の平等な間柄の「労働契約」であり、労働者は会社の利益に貢献する代わりに会社が安定した給与と机を提供することになる。

 

どちらかが一方的に契約違反をすれば、つまり労働者が会社に損害を与えた場合は雇用契約破棄となり解雇だ。もし会社が一方的に契約を破棄する場合は退職に関する各種手当(リダンダンシーパック)を用意して労働者に納得してもらう必要がある。

 

では会社側が各種手当なしで解雇した場合、労働者が不当と思えば証拠書類を持って労働調停署に訴えて調停が開始される。調停は双方に平等に行われるが一般的に雇用する側が負ける事が多い。

 

これはNZ労働法を理解せずに自分の解釈で採用したり解雇したりするからだ。この国の労働法を理解していれば「やってはいけない」と分かるはずだが、経営者によってはそのような事を全く無視して「俺がボスだ!」みたいなのもいる。

 

その意味で法的には労働者はよく守られているしサービス残業なんてやったら一発OUTである。ただし、だからこそ雇用する側も最初に慎重になる。雇用しても実績を出してくれるか?働きが悪いのに首にする時に問題とならないか?

 

雇用均等法もあるので採用の際に個人の宗教など「聞いてはいけない」事もたくさんある。何気ない一言が後日大きな問題になったりする。

 

またニュージーランドでは企業のサイズの割に雇用者の権利が強く、人をたくさん雇用してトラブルになるよりは気軽に身内でやったほうがいいやと考える経営者も多い。経営者もそれほどあくせくして働きたくないのだ。

 

さて、そんな国で外国から来た労働ビザもない外国人がたどたどしい英語で「雇って下さい、頑張ります」と言われても採用される確率は非常に低い。そこで外国人は、まず英語学校に通い次に専門学校に通い例えば会計士の資格などを取得してオープンワークビザ(ジョブサーチビザ)で勤務先を探すことになる。しかしこれも資格と労働需要がマッチングしていなかったらOUTだ。

 

なので仕事は専門化するほど募集は少なく、大企業が少ないために一旦誰かが仕事を開始すれば次の人は最初の人が辞めるまで他の仕事をしながら待つしかない。このように小さな労働市場であり多様な業種がないからこそニュージーランドでは多くの若者が大学を卒業して少し社会経験を積むとすぐに海外に働きに出る。

 

このような労働市場であるが北半球から見れば住みやすい国という印象がありこの国にやってくる移民は毎年約5万人いる。その中で目立つのが就職に対する考え方の違いだ。日本人はとにかく「正規雇用!」と言うが正規雇用という考え方がない国なので理解されにくい。

 

さらに日本人はどうも正規雇用で就職したらそれでゲームは終了、自分は勝ち組だと思い込む癖があり正社員同士でつるんで「おれたちラッキー」くらいに思ってそれ以上の努力も成長もしない。

 

だが、この国の就職とは「就職してからが勝負」であり実績が出せなければ負けであり契約は切られる。中国人や韓国人にとっては就職は金を貰って勉強する場所である。そのような環境で日本人がどれほど「他人よりも優秀な」能力を持っているだろうか?

 

「ニュージーランドで仕事ありますか?」と聞く前に自分に聞くべきことがある。「わたし、働く能力ありますか?」



tom_eastwind at 15:01│Comments(0) 諸行無常のビジネス日誌 

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