2012年08月30日

家庭菜園 家計の安全保障に向けて

先日会員の奥様と雑談をしていたら「お野菜が高くなって、なすはもう自宅で作らなくちゃね」と冗談交じりに言ってた。

 

オークランドの物価は毎年平均5%程度上昇している。公共交通機関や公共料金の値上げは3%程度でも公共インフラを利用してサービスを提供している場合、インフラコストの値上がりに人件費情報を加えて更に自社の利益をスライドさせていくと5%以上の値上がりをするビジネスもたくさんある。

 

日本だと毎年の賃上げとか物価上昇とか「一体何処の国の話ですか?」と思うだろうが、それはニュージーランドの話です、はい。

 

ただ食料自給率300%のニュージーランドでも食料品価格が上昇するとはどういうことか?例えば魚を例にすると、陸揚げされた魚は最初にまず海外市場で販売されて一定価格まで下がった時点で国内市場に販売する仕組みだ。だから海外市場で高値が付けばそちらに大量の魚が流出することになり残った魚は品薄、その結果NZ国内でも高値に張り付いて取引される。

 

野菜も同様で現在のような北半球の干魃による影響が続けばNZで作った食料品や野菜が北半球に高値で売却されることになる。おかげでNZの貿易収支は今年は黒字になりそうだが(輸出の5割が農産物だから)その分とばっちりを食らうのがNZ自国民である。

 

そこで冒頭に書いたような「自宅菜園」となるのだが、土地だけはたっぷりあるこの国だし一軒家の庭は広く菜園を作る余裕は十分にある。ガーデニングショップに行けば日本の猫の額用のガーデニング用品ではなく本格的な道具まで揃った商品がある。そこに売られている各種の種を買い込んで自宅の裏庭に植えておけばとりあえず野菜には不自由しなくなる。

 

うちも裏庭にバジルと玄関横に白い菊の花を植えている。バジルはパスタやリゾット用、菊の花はジャスミンティー用である。

 

日本の食料自給は昔から問題とされているが、ぼくが見る限り日本の農業政策は米国によって制限されており、日本人は食い物は米国から買え、自分で作るな政策の結果ではないかと思ってる。

 

21世紀は食料とエネルギーと水の時代である。いずれも自前で補給出来れば強いしそうでなければ食料安全保障政策が必要な分野である。シンガポールは建国以来水の補給はすべてマレーシアに頼ってきておりリー・クワンユーにとっても頭の痛い問題だった。マレーシアともめる度に「水止めるぞ」と脅かされてしまえばまともな交渉も出来ない。

 

そこでシンガポールは日本の最新技術を導入して海水を真水に変える大型浄水システムを導入、どうやらこれで水問題から離れされそうだ。

 

ところが日本では今も食料が安全保障に関連してないと思う学者が目立つ。食べるものがなければ外国から買えばいいではないか、金を払えば売らない国などないと思い込んでる。しかし現実的に食糧危機になればニュージーランドのような食料輸出国であってもまずは自前の食料の確保と価格安定に励むのは当然である。

 

ましてや自分の嫌いな国から「食料売ってくれ」と言われても「お前に売るものはないよ」という事になるのは当然であろう。21世紀に人口は更に増加していく。その時によほどの食料生産改良技術が発達していなければ、いくら金があっても食料が入手出来なくなる。

 

日本は工業化に邁進して先進諸国の一員として肩を並べているが食料安全保障面から見ればかなり危険な位置にいるのは間違いない。中国はすでにアフリカの土地を買って自国の農場にしようとしている。中東のドバイも同様の政策で海外に土地を買い求めている。

 

中国はニュージーランドでも農場を大量に買い占めようとしているが、今のところ地元民の反対で買い占めに至っていない。同じ事をフランス企業がやった時は即Okだったが、相手が中国となると品質管理面で非常に不安が残るのは当然だろう。

 

日本人はニュージーランドでは嫌われていないしむしろ勤勉な日本人が農業に従事してくれるのは歓迎である。日本の本土程度しかない国土ではあるが土地はまだ十分余っており、日本企業が今の円高を利用してNZの農業に進出すれば、お互いにとって利益のある関係が構築されるだろう。

 

キリンやアサヒビールなど飲料メーカーはすでにオセアニアに進出してきておりすでに一定の地位を得ている。円高、食料安保、海外進出、小さくても毎年人口が増加している親日国家との取引を増やしていくのは将来的に見てもお勧めなんだけどな。



tom_eastwind at 17:53│Comments(0)TrackBack(0) 諸行無常のビジネス日誌 

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