2012年09月21日

Kazuya再び

事の始まりは一個のパンだった。「ねえお父さん、この前持って帰ったパン、あれどこで買ったの?」パン?ああ、そう言えばオークランドにお客が来た時にKazuyaにご案内して帰りにパンをもらった、あれの事だなと気づく。

 

「パンって言っても売り物じゃないよ。レストランで帰りにお土産に貰っただけでさ」というと「じゃあ連れてけ」という。つまりおみやげで持った帰ったパンが何だかとても美味しかったそうで、それを食いたいからレストランに連れてけと言う意味だ。

 

パンが美味いからレストランに連れてけってのも本末転倒な気がするがそれでも家族に対して日本人がオークランドのような田舎でこれだけきちんとしたレストランを運営しているのを知ってもらうだけで価値があるので、よっしゃという事で予約を入れた。

 

そして週末に家族で訪問する。やはり美味しい。しかし味だけではない、レストランは味、サービス、雰囲気、そのすべてがバランス良くなければいけない。そして味といっても毎回同じ味ではいずれ飽きも来る。

 

グランドメニューは変わっていないようで常に旬の食材を用意してお客様を迎えるから何度行っても飽きが来ない。始めての人はグランドメニューを楽しみ二度目の人は旬の料理を楽しめる。

 

ところがうちの家族は、とくに子供二人にはとても変わった癖があり、グランドメニューだろうが旬のメニューであろうが美味しければ親の料理でも奪って食うと言うくせだ(苦笑)。

 

今回はこれが、ぼくが注文したDiamondClam、はまぐりのような貝の酒蒸しだ。最初彼らは全然興味を示さなかった。「蛤の酒蒸し〜?何それ?食い物?」みたいな顔だったのが、料理が出てきてその薫りにびっくりして「一個頂戴」と言って食わせたら急に無口になりいきなり皿に顔を付けるようにバクバク食い始めて、ぼくが一個食い終わる頃には皿にあったすべての蛤は子供たちの胃袋へ。

 

奥さんもかろうじて一個だけ食えたのだが全員の顔がとても不満そうで「何でこれだけしかないのか?」だって(笑)。仕方ないのでもう一皿お願いすると「すみません。今日はこれで売り切れです」と残念な話。

 

いつもこうなんだよな、食べ物はたくさんあるのにバランスよく食べようなんて発想が全然なくて、とにかく美味しい一皿に集中して食べるから、残り物をお父さんとお母さんが食べることになる。親として嬉しい悲鳴であるが財布にとって決して楽しい話ではないのも事実、はは。

 

しかし今晩については幸運なことに彼らが頼んだ料理はすべて彼らがぺろっと食べてくれて親の残飯処理は不要(苦笑)。

 

この店は完璧に大人向けに作っているからちっちゃな子供を連れて行って良い店とは言えない。せっかくの雰囲気が壊れるからだしもともとメニューに子供向けがない。また一つ一つの料理がまさに手を凝らして作っているから子供が食べても何が良いのか理解不能だ。

 

とくにキーウィの子供からすれば一皿あたりの量の少なさにびっくりするだろう。全部食べ終わった後に「ところでメインコースはいつ来るの?」って感じだ。

 

そしてりょうまくんもまさにキーウィキッズなのでメインの上質なスロークックステーキが出てきた時は「ステーキの前菜?」って寂しそうな顔をしてた(笑)。けれど食べ始めるとその味の上品さと肉の柔らかさにびっくりして「お父さん、アンガスステーキとは全然違うけど美味しいね〜」と喜んでた。

 

アンガスステーキハウスとは龍馬くんの大好きな直火焼きステーキで彼の注文するTボーンステーキはしっかりと焼き目の付いた1キロステーキである。

 

けどさ龍馬くん、おいしいものってのはバカ食いするものじゃないんだよ、美味しい物はじっくりと味わって、それでお腹がすくなら家に帰ってラーメン作ってあげるよ。

 

ぼくはメインに金目鯛を注文したが素晴らしく魚の旨味のある油ののった美味しい魚が、隣に先ほどの酒蒸しのスープを使って作ったパスタと共に出てきた。娘がちらっと見て「お父さん、そのパスタちょっと頂戴」と言ってほんのちょっと渡したのが運の尽き、ぼくが食えたパスタは一口サイズになってしまった(笑)。

 

それにしてもこのパスタ、美味いな〜、蛤と酒の旨みをそのまま染み込ませて他に余計なものが何もないから純粋に美味い。こういうパスタを食べた後に具たくさんのパスタを見ると何だか下品な感じになるのは悪いと思うけど事実。

 

娘は味に妥協がないのでまずければ一切口にしない代わりに美味しければ最後の一片まで妥協せずに食う、それが誰のものであれ、ははは。今回は蛤の酒蒸しの旨みを理解して貰ったようで後日談だがその翌日彼女は魚市場でさっそく蛤を買い込んで自分で料理してた。

 

この店を訪問してぼくが一番うれしく思うのは、まさにこのような店は日本人にしか経営できない領域でありオーナーが直接料理をするお店だからこそその品質とサービスが維持されると言うことだ。

 

このようなサービスこそ日本人が一番得意とする「品質管理」である。このような店はNZに住む中国人には作れない。彼らはレストランに対する感性が根本的に違うから、どれだけ最初に立派な箱を作ろうが結果的に中国人の飯屋になってしまう。成長することはあり得ず必ずどこかでダメになる。

 

そしてキーウィのプロフェッショナルにもこのようなサービスは難しい。彼らが提供するサービスはどんなに素晴らしいレストランでも基本が自己責任であり子供の頃からの教育である失敗を認める文化であり、それは日本のような常に最高品質を提供して絶対に間違いのない文化とは根本的に異質だからだ。

 

お店の帰りにパンを一本売ってくれた。最初は「今日は数が足りないから無理かも」と言われてたが結局最後には用意してくれた。最初に難しいかもと言った上で頑張って用意する日本文化。これがキーウィなら最初に「いいよ!」って言っておいて最後に「あ、やっぱりなかったわ、また次回ね」で終わる所だろう。

 

まだ暖かいパンを抱えて奥さんの運転する車で自宅に戻る途中「さっきの店、良かったね」と家族が言ってくれる。そうだろう、日本人の一番良い部分を持ってるのだから。

 

これからもニュージーランドに移住して人生を楽しみながら仕事をしたいと思うなら、日本人の一番の特質である品質管理と完璧を追求するビジネスを考えてみてほしい。

 

 



tom_eastwind at 19:57│Comments(0)TrackBack(0) 諸行無常のビジネス日誌 

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