2012年11月02日

信に対して信で答えるという事

時々変な質問をされる。「あなたは何故そんなお金にもならない約束を一生懸命守ろうとするのですか?」

 

どうもある種の人から見ればぼくは日本人らしくなくビジネス論理だけで仕事をしているようだと思われてるらしい。だから金にもならないちっちゃな約束を何故守ろうとするのかが理解出来ないようだ。

 

ただそれは、ぼくをどの角度から観るかによるだけだと思う。

 

ぼくは海外に飛び出て誰の助けもなく25年間生きてきた。その中では様々な体験をした。そして一つだけ自覚したのは、どうやらぼくは状況に応じていかにも変化が可能な能力を持っているという事だ。

 

それはニュージーランドにおいては冷徹なまでのビジネス論理でなければ理解もされないし生き残ることも出来ない、「感情論」とか「やればどうにかなるさ」とか戦前陸軍の体育会系の発想では、1回の戦争はまぐれで勝つことがあっても100年を生き残ることは出来ないということだ。

 

そして香港では他人に騙された方が悪いという短視的な直感で判断する能力が要求される。西洋的な理論でやってたら中国人の博打的判断の速さに負けるし日本的に「上司に聞きます」理論でやってたら全線全敗である。その場その時に自分が全責任を負って即答して実行して相手の信頼を得て始めてビジネスは成功する。

 

しかし日本では最初から信頼が全てだ。言ったことは守る。それはビジネスとしてのお金の多寡ではなく約束を守る事自体が社会を守る大事な要素だからだ。

 

日本のビジネスモデルは世界で最も進化した形態であり長期的契約を前提とした信頼で成立している。お互いを騙さないという事が原則として存在し、その上にビジネスが存在する。

 

勿論西洋人でも信頼を守るという姿勢があれば日本人との間でビジネスは成立する。だから日英は割合相性が合う。しかし西洋人の理屈はもっぱら狩猟民族であるから「俺かお前か」の二者択一であり最終的には契約社会の中で日本人が食い物にされる事がある。それは1990年代から騒がれるようになった著作権や知的所有権問題で如実に現れた。

 

このことを書くと長くなるので割愛するが、信頼に重きを置きすぎて不断の努力を忘れた甘すぎる日本人ビジネスパーソンの論理構成に対して冷徹な論理で戦う英国系(つまり欧米)が見事に隙を突いて食い込んで来たわけだ。それは最近の地球温暖化ビジネスでも同様である。まさにタコが踊らされているような状態だ。

 

ただ、ぼくは日本人である。いろんな国でいろんなビジネスを見てきた。自分で毎回現場に飛び込んで戦場視察をしてきた。戦場視察とは一つ間違えば自分の乗ってる船も沈んでしまうような状況だ。

 

そうやって学んだのが、結局地球を一つの生命体として見れば信頼を基礎とした日本的ビジネスが最適であるという事だ。誰か一人だけが生き残るという英国的なビジネスではなく誰もが食い合うという中国的ビジネスでもなく、実は古代中国の歴史を自己に取り込んだ「誰もが助けあい皆が生き残る」日本的相互援助組織的ビジネスが最も持続可能で強いのだ。

 

面白いものだが中国の古典的教養は日本で花開き中国は日本を中国の領土と認識しなかった為に文化は伝わったが領土問題にはならなかった。ある意味美味しいとこ取りをしたようなものだ。

 

僕は日本的ビジネスをこのニュージーランドでも実現させたい。そしてそれは可能である。ただしそれには不断の努力と忍耐が必要である。体育会的な「ノリ」だけでは絶対に解決しない。日本人チャチャチャ!でも解決しない。

 

酒を飲んで仲間意識を高めて内輪で煽るだけでも解決しない。つまり忍耐力も理論力も持続力もないビジネスマンにはやっていけない世界だという事だ。

 

しかし、だからと言って西洋論理に巻き込まれてしまえば金持ちと貧乏人が生まれる格差社会が固定化するし、中国論理に巻き込まれてしまえば信頼をする方がバカだという刹那的で非人間的な社会が構築される。

 

かなり中庸的な立場を守る事が必要であるが、それこそが持続成長する社会を維持する方法である。

 

だからこそ日本的な信頼を基本にした社会を作り上げて誰もが平等に平和に過ごせる社会が出来るためには少々裏切られても最終的にはこちらが生き残り相手に恥ずかしいと思わせるような体力と、こいつは本物だと思わせる努力をして信頼を作れば誰でも夢を持って起業出来る素地がある。

 

そのためにこそニュージーランドではビジネス論理を持って冷徹に戦う必要がある。しかしそれは信を失う方向での冷徹さではなく日本的な長期互助会を守るためでなければ成立しない。だからこそ僕は信を守る。随分昔のお金にならない約束、けれど、どんな約束でも守る、それが約束である限り。その気持が持続する社会を作る絆である。

 

信頼を基礎とした仕事をする。時間はかかると思うが、それでも目標を持って生きていきたい。強くなければ生きていけないが、信を失っては日本人として生きる資格はない。



tom_eastwind at 17:29│Comments(0)TrackBack(0) 諸行無常のビジネス日誌 

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