2012年11月05日

卒業

tomさん、こんな文章でいいっすかねー?」と若い男性社員が持ってきたお客様向け退職のご挨拶文。ぱっと見てやっぱりなと思った。日本のビジネス社会を経験していな人間としてはネットを駆使して立派に書いているが、一番大事な事を書いていない。

 

「お前さ、抜けてるぜ」と言っても見えない物を見ろと言うようなものなのですぐ説明に入った。「いいか、今の時代になっても日本社会では定年まで一つの会社で働き抜くのが正しいという考えを持つ人が多い。中途退職や転職なんてのは、そりゃ本人が使い込みやったとか先輩の女に手を出した責任と思われるかもしれないんだ。だから円満退職であることを文面に滲ませないと、お前がうちを辞めた後に連絡取ってくるお客が減るぞ」

 

日本での社会経験が殆ど無い彼はキーウィの転職社会を見ているから転職は自分の未来に向かってホップ・ステップ・ジャンプするものと思い普通に「この度退職〜」と書くが、それは今でも古い日本人にとっては良い印象を持たない。だから退職ではなく卒業。

 

この事もぼくは昔から言ってた。うちの会社はニュージーランド社会に入るための登竜門だ。うちの会社でNZで働くという事を学びながら仕事を通じてお客様と取引先の人脈を作る、そして次のステップに移った後も人脈を大事にしてそれを自分の成長に繋げる、それがこの国で生き残る戦い方だ。

 

なのでぼくは最初の時代は「当社で3年以上働くべからず」と言ってた。さすがに現在のような長期ビジネスモデルになるとそうはいかないので言わなくなったが、それでも20代の若い人たちにはどんどん外の社会に出て現実の空気に触れて欲しいと思う。

 

どんな事言っても当社は日本語が通じるし日本人の価値観の通用する会社だ。けれど外の社会では英語しか通じないし日本人の常識も通じない。けれどそのような英語一pん真剣勝負の他流試合が結果的に自分を強くするのだ。

 

そうやって強くなった人間が会社を起こす。そして日本からやってきた若い連中にNZ社会で働くという教育を与えてまた外に送り出す。これを繰り返すことで地域社会で日本人が一定の地位を獲得することが出来るし地域社会の尊敬を勝ち取ることができる。

 

戦前のハワイや南米に移住した日本人は、自治組織を作りお互いに助け合い日本人としての誇りを持って生きてきて、戦後それぞれの国で見事な日本人互助社会を作り上げ地元と融和してきた。

 

ぼく一人でどこまで出来るか分からないが今年から始めた移住日本人向け相互互助会員組織が出来るだけ早い時期に自立活動を開始してそれが教育、成長、卒業、起業、採用、教育を繰り返して循環的に子供の時代に継続して次第に大きくなる輪のような存在になればと思う。

 

「いいか、退職じゃないぞ、卒業だぜ」というと、まるでぼくがAKB48の真似をしているのかと思うかもしれないが、時期的にこちらのほうが10年以上早いし〜(笑)。

 

「またダメッスか!」普通の日本ビジネス社会ではまず勤務中に使わないような言葉を連発しながら、よくこれがお客様の前では「いかがでしょうか?」ときちんと標準語で使い分けてるな、まるでバイリンガルだぞと思わず心のなかで笑った。

 

結局4回校正を行い、まだまだ更生の余地はあるけど自分の言葉でお客様に向け発信させることにした。お客様から様々な反応があるだろう。お客様に育ててもらい社内スタッフの指導を受けて、ぼくが見てきた日本人の中で一番伸び代の高い奴だったな(笑)。伸び代が高いとはスタート地点が低いということでもある(笑笑)

 

「ぼくはこれ(小指)で会社を辞めました_||○」。文字は人を殺しもするし笑わせもするし生かしもする。そのような文化を伝えていくのも僕ら先達の仕事だと思っている。



tom_eastwind at 19:31│Comments(0)TrackBack(0) 諸行無常のビジネス日誌 

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