2012年11月13日

風が吹けばユダ屋が損する。

今回の米国大統領選挙は大きな風であった。それは米国内政策だけでなく今後のイスラエル、イランなど中東の将来に大きな影響を与え、それが巡り巡って日本の対米追従政策にも大きな変化を与えそうだからだ。

 

日本国内に住む日本人は得てして目先の細かい事象に囚われて重箱の隅をつつくような意見を得意とするが世界はそんなに簡単ではない。

 

様々な事象が偶発的に世界中のあちこちで発生して、それはまるでチベットを源流として崑崙山脈を経由して流れだした細い川がいずれ長江の大きな流れになるようなものだ。

 

実際に古代中国の王様は治水を大きな仕事としてきた。話は少しそれるが宋文洲さんのメルマガにこんな文章があった。

「「漢字から考察しても「政治」の本来の意味が見えてきます。「政」は「正しい文人、文化」です。「治」は「台」を築き上げて水をおさめるという意味です。」」

 

だが、複雑な事を考えるのは面倒だし考えるとなると持論を持つ必要があるし持論を持つためには他人に簡単に論破されないような理論武装が必要だしその為には学習が必要で時には持論に責任を取る必要がある。

 

そんなのがメンドーだからいつも新聞の意見や週刊誌の記事を自分の意見のように周囲に吹くのだが、自分で考える人から見たら「で、あなたの意見はどうなの?」と突っ込みたくなる。

 

この話はイスラエルが今回の選挙でロムニー支持に回った事が発端だ。今まで数十年間イスラエルロビーは米政界を牛耳ってきたことは羞恥(周知?)であり今回もイスラエルを味方につけたロムニーが勝つと言われてきた。

 

しかし結果的にロムニーが負けてしまった今、オバマは堂々と米国の国益を語ることでイスラエルの勢力を米政界から追い出すことが出来るようになった。

 

米国はイランが核兵器を開発していると濡れ衣を着せてイランを攻撃するような強硬姿勢を採り続けて来たがその目的にはイランからミサイルを打ち込まれては困る(負けるかもしれない)イスラエルを保護するためであるのも周知(羞恥?)の事実だ。

 

実際にはイスラエルはすでに核兵器を保持しており国連の核拡散防止条約に違反しているのは疑惑のイランではなく確信犯のイスラエルである。ところがどの国もイスラエルの核兵器保有に対しては何も言わず、まるで何もなかったような顔をしている。それも米国の存在があるからだ。

 

だから本来なら米国の国益を守るために不拡散条約をきっちりやりたい米国としてはイスラエルこそ真っ先に非難して必要であれば戦争を仕掛けてもよいくらいだ。実際にイラクなど大量破壊兵器を持っていないにも関わらず濡れ衣を着せて戦争を仕掛けているのだから。

 

それをしないのは米政界を牛丼持った、じゃなくて牛耳ったイスラエル・ロビーがあったからだ。しかし今回オバマはイスラエルを相手に戦って勝利を得たのだから、イスラエルに残された道はオバマを暗殺するか敗北を認めて大幅に譲歩するかしかない。

 

ここで言う大幅な譲歩とはパレスチナ国家の成立を容認することでありかつて追い出したパレスチナを認めて彼らに領土を割譲するという屈辱的な内容である。しかしそうしなければ米国の保護を受けられないと悟ればイスラム社会全体を敵に回して一国だけで戦う必要があり、まず勝ち目はない。

 

オバマは外交政策の基本に中東和平を置いており中東から米兵を撤退させて軍事費を削減しようとしている。米国が中東から手を引けばイスラム同胞団あたりが大イスラム国家を作り上げる。大イスラム国家が出来上がればイスラエルは負け戦と分かってもイスラムと戦うかパレスチナと妥協するかオバマを暗殺するしか選択の余地はない。

 

ケネディの時にすでに一回やってるから次の一回(暗殺)が行われれば米国との正面戦争になる可能性もある。だから現実的政策としては妥協が一番良策となる。

 

さてそうなるとオバマは財政の崖に立っている米国経済を立て直すためにも世界に派遣している米軍を自国内に戻すことになる。ここで沖縄からグアムへの撤退がペンタゴンレベルの判断ではなく米国議会及び大統領の国策となる。

 

そうなれば米国追従で省益を得ている防衛省も外務省も「去っていく米国」を引き止めることは出来ず中国と正面切って対応する必要が出てくる。こうなるとバランスの問題でロシアとの付き合いも大事になるので北方4島をネタにしてロシアとの交渉を止めていたアメリカスクール派閥は一気に力を失いロシアスクールとチャイナスクールが力を持つようになる。

 

こうやって3スクールが駆け引きをするようになると日本の外交や政治が米国一辺倒ではなくなるので自主外交をする必要が出てくる。

 

そうなると北方領土問題を2島返還あたりから始めてサハリン共同開発を進める事になりロシアからガスや石油などのエネルギーを仕入れることになる。

 

中国とは尖閣諸島の棚上げ(共同所有)で海底資源開発の共同作業をすることになる。もしかしたら米国の権益がなくなってこれから日本政府をゆすって金を取れなくなった沖縄は昔のように琉球王国として独立するかもしれない。

 

そうなれば今まで外交について建前論だけで何も自己責任で考えることをしなかった連中の能力が問われるようになり実質的に日本国としての自己責任が問われるようになる。つまりどの国と距離を取るのかバランス感覚が要求される。どれか一つに盲従していれば良いという時代は終わるのだ。

 

そうなれば一般社会人や企業も今までの日本政府追従ではなく持論を持ち自分がどこの国とどのような取引をしていくのか自己責任で判断をする必要が出てくる。例えば三井や三菱などの大手は中東を含めたすべての国と等間隔で取引をする必要が出てくる。

 

中堅商社はどこかの国に特化する方が有利だが、さてどの国が良いのか?共産圏に特化する商社も出てくるだろう(丸一商事などは昔から共産圏に強い)。言葉にしても英語はこれからもビジネスの基本となるがもう一ヶ国語くらい出来た方が有利だ。それはロシア語なのか中国語なのか?

 

そしてこの流れは個人のレベルまで降りてくる。米国が去った後、日本はどのような外交をすべきか。どこの国とどう付き合うべきか。今までは米国と日本外務省の指示の下、とにかく中国批判をして米国礼賛をしてロシア無視をしてれば良かった。けれどこれからはそうはいかない。個人が自分の意見としてどのような外交を行うべきかをきちんと理論を持って考えて動く必要が出てくるのだ。

 

まさに明治維新で日本が門戸開放をした時、例えば福岡の頭山満は大東亜共栄圏を主唱して孫文を助けた。今で言えば右翼の親玉である頭山満だが当時は国士と呼ばれていた。「僕も行くから君も来い、狭い日本にゃ住み飽きた」そんな時代に中国に渡り遂には中国全土の馬賊の頭領として中国での生活を送り生涯を全うした小日向白郎は日本人でありながら中国人民の為に命を賭けて戦った。

 

北一輝、大川周明、出口王仁三郎、そして石原莞爾、戦前の日本では多くの国士が天下国家を自分の言葉で語っていた。日本人がところてんになったのは戦後の教育でところてんにされたから自分の言葉も自分の意見も持たなくなった。とにかく日本政府一辺倒でいれば意見など不要、日本政府は対米追従さえしていれば自己責任など不要、そんな時代が続いた。

 

しかし今回オバマが起こした風は巡り巡って大きな台風となり、戦後一貫として自己責任で判断することをしなかった日本人に対して「人生は決断と実行の連続であり自分の人生は自分で責任を取るしか無い」って当たり前の事実を見せつける事になるだろう。

 

誰かに盲従して崖から落ちるような事になれば以前は消費者は神様ですと無責任な消費者を日本政府が助けてくれた、けれどこれからはそうはいかない。



tom_eastwind at 23:22│Comments(0)TrackBack(0) 諸行無常のビジネス日誌 

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