2012年12月02日

最低賃金廃止について

維新の会が主張する最低賃金廃止への反対論があっちこっちから噴き出している。代表的なのが内田樹氏の主張だ。

http://blogos.com/article/51462/

彼の主張は最低賃金を下げたら日本全体の賃金がどんどん下がって地域経済は崩壊するという理屈である。

 

彼の文章を読むといつも違和感を感じる。まるで村上春樹を聴かされているようで、なんだか社会を斜めから見て一人孤高に立ってます、あたしゃ何でも知ってる片隅のいぶし銀だよみたいな雰囲気を漂わせながら結局生産性のない話でしかなく社会の当事者としての責任感が見えないから好きになれないのだろうと思う。

 

しかし好悪は別として彼が「日本の賃金が中国並になっていいのか?」と質問しているが、このブログで以前から何度も指摘していることだが、世界はネット社会になって中国は日本に近づき日本は中国に近づき、賃金も含めすべてのものが平準化していってる現実に気づくべきだ。

 

ぼくは最低賃金廃止案には賛成であるというと不思議に思う人もいるだろう。けれどそれは日経連や経営者の為ではなく肝心の労働者の雇用を守るためだからだ。

 

まず今の世界の中で日本人は能力の割に給料を貰い過ぎている事に気付こう。

 

世界が平準化する中で低賃金国家の中国は一気に賃金が上昇して内田氏の指摘するようにインドネシアもいずれ上昇する。そうして日本の賃金は少しづつ下がっていき最終的に世界の賃金は平準化していくのだ。つまりそれは日本で能力の低い学生は賃金が下がっていくという事だ。そうでなければ誰も同じ商品を高く買うことはないから賃金の高い日本から雇用そのものが失われていく時代になったのだ。

 

ネットのなかった時代、国境が明確にあって移動が大変で他国で工場を作ることが難しかった時代には日本発の商品がよく売れて給料は上がり続けた。しかしネットが発達して経理総務などの後方業務をインドや中国に移管するようになり国境の壁が低くなり他国で工場を作ることが簡単になると企業は次々と海外に移転する。

 

なぜなら世界の何処で仕事をやっても影響はなく他国で安い賃金で雇用が出来るのになぜ高い日本人を使う必要があるのだ?そんな低賃金じゃやらないよと言えば本当に仕事はない。

 

1980年代であればアジアの金融の中心地は東京だったが今ではシンガポールに完全に奪われている。それはバブルが弾けたとかだけじゃなくシンガポール人の方が英語が出来て西洋式業務が出来てなおかつ中国語も出来て、それでいて給料は日本人ほど高くないやる気のある優秀な社員だからだ。

 

内田氏に賛成する日本の大卒の人々は自分たちの能力が中国の精華大学や復旦大学卒業の中国人学生やインドの一流大学を出た若者と比べて優秀だと本気で思っているのだろうか?

 

仕事が中国やインドに流れる、何故なら彼らのほうが優秀だからだ、それほどに日本人の個人的労働能力は下がっているのだ。なぜ自分たちが国際化に晒されて世界中の若者が平準化されて比較されていることに気付こうとしないのか?

 

能力が下がっているのに賃金が守られているから仕事は次々と外国に向かう。その結果として国内に雇用がなくなる。失業者は増加して街は死に絶える、それを防ぐには最低賃金制度を廃止するしかないのだ。

 

そんなんじゃ給料下がるじゃねーかと叫ぶ若者に聞きたい、そんなら中国の若者に勝つだけの能力があるのかって。

 

今の日本が考えるべきはいかに国内で雇用を生み出すかである。その為にまずは法律改正して最低賃金制度を廃止して、能力に応じた賃金制度にする。それでも同世代の世界の若者と比較して優秀なら高い賃金が貰えるし更に個人競争力があればもっと高い賃金が貰えるのだ。

 

じゃあ賃金が下がったら街が崩壊する?するわけがない。現実に中国やインドは安い賃金の地域でもそれなりに生活をしている。賃金が下がればそれに合わせて自然と家賃は下がるし食費も下がる、そして質を下げずに生活コストを下げる方法を思いつくものだ。

 

今の日本では住居費が高い。何故なら一人暮らしをするからだ。ニュージーランドのフラット共同生活なら入退去も簡単だし引越しにかかる莫大な手数料も不要だ。デパートやスーパーの惣菜も一人向けの小型サイズが売れるわけで食べ残しの無駄がなくなる。

 

日本では非常に厳しい賞味期限規制をしてまだ十分食えるのに捨てるしかないような基準だ。日本で作った出前一丁がなぜ海外では高いか?それは仕入れコストだけでなく賞味期限が短いから売れる期間が短く一個あたりの利益率を高めないと商売にならないからだ。

 

ところが同じ出前一丁でも日本製が一袋5ドルなのに対し香港製の出前一丁は一袋1ドルである。面白いことに内蔵されているスープは日本製である。それでもこの値段差が出るのは、もちろん中国市場が大量消費という要素もあるが賞味期限が日本の3倍以上あるという部分も大きいからだ。

 

今までの日本の常識で物価が設定されていたが世界の現実を見ながら組み替えていけばまだ安くなる。それが良いかどうかではなく、物価も世界並みに下げなければ下がっていく給料に対応出来ないから自然と下がっていくようになる。その時に日本の過去の常識が少しづつ変化していく。

 

何でも新しいもの信仰が、例えばまだ十分使える中古住宅が売れるようになる。車はしっかり20年乗るようになる。服は、自分で作るようになる。賃金に応じて社会は変化していくのだから社会は決して崩壊しない。だって戦後の焼け野原の東京からぼくらは生活を再構築して世界最高の水準に持っていったのだ。水準を上げることが出来たのだから、今度はゆっくり下げていけば良い。

 

今の日本の賃金に残された道は二つ。世界中の同世代の若本と比較しても絶対優位に立てる能力を持つ国際的に優秀な学生を生み出すか、日本社会を世界平準化の中で低賃金対応社会に作り変えるかだ。内田氏の勤務する大学の学生が余程優秀であることを祈る。

 

いずれにしても、どちらも選ばず現実を無視して砂の中に頭を突っ込み「社会が崩壊してもいいのか!最低賃金を守れ!」と叫ぶのは現在高賃金で雇用されている無責任で当事者意識のない今の大人達の自己擁護にしか過ぎない。 



tom_eastwind at 11:48│Comments(0)TrackBack(0) 諸行無常のビジネス日誌 

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