2013年02月15日

天動説の日本人が北朝鮮や尖閣問題を語るとこうなる。

北朝鮮と東アジア情勢を見る中で日本人は北には「拉致日本人の返還」を求め自らには「発想の変換」を求めることが必要である。

 

「あなたー、また北朝鮮が爆弾試験したんですって〜」

「そっかー、怖いねー、さ、もう一杯飲もうか?」

 

殆どの日本人にとって北朝鮮核実験ニュースは上記のように他人ごとであろう。ましてやマスコミも「卑怯だ!」とか「国際ルールを守れ!」とかキレイ事ばかりで誰も自分の事と考えている人は少ないだろう。

 

しかし外交とはもっと現実的でもっと複雑だ。日頃外交を世界の視点から見る訓練をしておかないと目の前で起こっているのが何かわからないのも当然である。

 

ぼくが上記に書いた発想の変換とは東アジアと地球全体の動きを日本国内の視点から見ていては次に起こるであろう事象、つまり未来は見えないということだ。

 

ぼくが以前未来が見えると書いた事があるが、この意味は「歴史は繰り返す」と「突発的事象」の二つを理解して現状起こっていることを過去の歴史のどの期間と一致するかを見つけ出せば大体将来の動きは過去と同様の動きを繰り返すという事だ。

 

未来が見える事の詳細はまたいずれ書くとして、今回の事象も含めて日本人は日本の周りを世界が動いていると思ってる。だから日本人は日本の義理人情や道徳観念で「おかしい」とか「気持ち悪い」とか「卑怯だ」とか国際社会で通用しない無意味な表現を使って自分の気持ちを語る、外国人も同じ気持を持ってるだろうし持つべきだと日本の周りを世界が回ってると考えるような天動説なのだ。

 

しかしそんな理屈は世界では全く通用しない、大事なのは日本が世界の周りを回っている地動説を理解すべきだという事だ。

 

21世紀の世界の一番大きな動きはパックスアメリカーナという一極から欧米亜三極に変わり始めている点だ。これは20世紀初頭の英国(パックス・ブリタニカ)の没落とアメリカ(パックス・アメリカーナ)の台頭が起こったのと同様に、21世紀は米・欧・アジアの三極体制になる。

 

アジアは中国を中心とした極となる。米国はグアムと日本の間の第二境界線まで引く。米軍は中東から軍隊を引き上げNATOを縮小する。欧州は独仏を中心としたゆるやかな連帯国家に変わっていく。欧州の通貨危機で目先の為替や南欧国債の暴落などを気にしている人々はその更に大きな動き、つまりこの通貨危機を利用して南欧あたりの外交権などを欧州政府に移管させようとしている動きを見ていない。これはユーロ参加国家の一体化である。

 

それは21世紀を三極の時代にするという地球的方向性と目先の米国の財政赤字による軍備削減が同時進行しており、更にオバマは二期目に入って次はないから彼の持論である核廃絶を進めたい。

 

つまり日本の領土の狭い土地から空を見るのではなく自分の視点を日本から宇宙に向けて飛ばして成層圏あたりを回っている衛星になった積りで冷静に「世界がどうなっているか」を分析する。その際に「日本だけは神の国だ」という私情は捨てること、でなければ判断を間違う。

 

北朝鮮は中国の属国であるうちは良いが中国の意思を無視して独自に核爆弾を製造して米国を狙うような事になれば米国国防の問題に直結する。米国はアジアからグアムの第二国境まで撤退するから北朝鮮の宗主国である中国と直接戦争をするつもりは全くないので中国に対して「キチガイ北朝鮮を押さえてくれ」と訴えた。

 

中国は朝鮮戦争時代を通じて自国の属国であり従順であった北朝鮮に飴を渡して「あなたの土地の中で何をやっても良い、良きに計らえ」という朝貢政治を行なってきた。

 

しかし金正恩が出てきてから彼は危険な賭けに出た、自分のオヤジが米国に対して行ったように。子どもはオヤジが成功したのを真似をして「おれも一発」と脅し外交を狙っているが、環境が変わったことをどこまで理解しているのか?

 

米国の依頼で北朝鮮を抑えようとした中国は何度も諌めたが金正恩はそれを聞かずに実行した。

 

米国はアジアから撤退して北東アジアの安定を中国に要求した。それは同時に中国が三極の中心になることを認めた。ところがその中国が北朝鮮を抑えきれてない。だもんで米国は尖閣諸島を持ち出してきた。

 

去年前半まで米国は尖閣諸島に対する姿勢を明確にしなかった。戦争になった時に日本側と一緒に戦ってくれるのか?それが去年の終わり頃から急に姿勢を変えて「米国は日本を支援する」姿勢を打ち出してきた。そして更に日米共同で離島奪還訓練までやった。

 

これは中国に対する恫喝である。もし中国が北朝鮮を抑えきれないなら米国は尖閣諸島で中国を追い返すよって事だ。これは逆をかえせばもし中国が北朝鮮を押さえ込めば米国は尖閣諸島を手放すので、あとは中国と日本で好きにやって下さいって事だ。

 

勇ましい日本人はあちこちのブログで「中国追い返せ!」とか「日本固有の領土だ!」とか言ってるが、その背景には米軍が助けてくれるって思いがあるのだろう。けど米軍が正式に「知らん、日中で勝手にやってくれ」と宣言されたら、それでも勇ましい連中は「戦争してでも島を守れ!」と言うだけの度胸があるのか?

 

米軍のいない南の小島に自衛隊を出動させて中国解放軍とどん八やるだけの度胸があるのか?自衛隊がイラクに行っても法律で仲間を助けるための銃も撃てないし自衛隊に死者が出れば「人命が!てったーい!」とギャースカ騒ぐ連中がいるような国で本気で戦争出来るのか?

 

領土争いは殺し合いなのだ。英国でも南の小島を守るために軍隊を派遣してフォークランド戦争を行い多くの死者を出したがさすがに政治一流の国家と国民である、見事に死者を軍隊墓地に葬り彼らの栄誉を讃えた。

 

尖閣諸島で戦闘が起こり日本国自衛隊の死者が出たら靖国神社に首相自ら英霊を讃えるだけの勇気があるのか?その死者はあなたの子どもかもしれないし子どもの時からの知り合いかもしれない。それでも貴方は匿名で「尖閣はー!」と言えるのか?

 

ぼくが想定する最悪のケースはかなり現実性が高いと思うが、中国はそろそろ本気で北朝鮮に解放軍を送り込むのではないか。最初は国境の治安維持という名目で川の北朝鮮側から解放軍を送り込み、一気に平壌まで北朝鮮軍を蹴散らして進む。そして金正恩を逮捕して代わりに中国が身柄を確保している金正男を政権のトップに据える。

 

そして米国に対して「北朝鮮は押さえた」と発表して中国の完全な支配となった後は攻め込んだ解放軍が支配してすべての権益に自分の息のかかった会社を作り利益を吸い取る。ご存知の通り中国の軍隊は歴史的に軍閥が自前で兵士を養っている傭兵で軍区の中にある権益は軍が作った会社が合法的に利益を得てそれで傭兵を食わせている。

 

中国中央が軍に対して決定的な強みを持てないのは中国の軍閥制度にあり、今回のように北朝鮮の土地をもらえるのであれば軍からすればありがたい権益拡大だ。さらに中国中央からすれば軍に利権を渡すわけで軍が中央に対して友好的になるのは当然の理屈だ。

 

つまり北朝鮮侵攻は中国中央が米国に対して「おれ、アジアの盟主になれるよね?」と言えて、軍は権益を確保出来るという、両方にとっての利益なのだ。これで米国も安心して北朝鮮を中国に任せて自分たちはグアムに撤退出来る。

 

これは副次的な問題を生み出す。それは万が一金正恩がパキスタンあたりに逃亡して亡命政府を宣言した場合、北朝鮮は内戦が発生して多くの難民が小型船で日本海を渡って日本にやってくる。日本政府は難民を受け入れることが出来るか?それとも国際社会の非難を受けながらもう一度海に追い出すか?

 

さらに問題なのは総連が動き出して対中国ゲリラ戦争の本拠として事務所を利用して北朝鮮にゲリラを送り込むようになれば総連事務所が中国により攻撃される可能性があるという事だ。つまり日本国内で中朝戦争が勃発するのだ、それがゲリラ戦であっても当然一般市民が巻き込まれる事になる。

 

そして米国に捨てられた日本は尖閣諸島に上陸しようとする中国海軍と自分の力だけで戦うしかない、今の好戦派連中が煽れば。日露戦争の時も一般民衆が現場の軍隊が大ロシアを相手にぎりぎり必死の戦いの苦労も知らず旗を振って「もっとやれー!」と言ってたのだ。ふざけるな、後一歩で日本海に叩き込まれるほど苦戦していたのは日本陸軍なのに自分事と思ってない連中は後ろでわーわー言うだけだった。

 

当時のメディアが戦争を煽って軍部に対して「何でもって攻めこまないのだ!」と聞くと軍幹部はこう答えた「わしは大砲の数で話しておるんじゃ!」と切り返したという。まさに軍隊の方が現場をよほどよく分かっていたのだ。

 

しかし「あらま、こわいわ、じゃあもう一杯」と他人ごとの大衆は言いたい放題で更にメディアがわをかけて戦争を煽る。その結果は自分たちが背負う事になるということさえ気づかず、新聞は売れれば良いだけ、テレビは視聴率が取れれば良いだけで煽り記事を描く。

 

つまり北朝鮮問題が暴力で解決すれば中国は領土拡大の為に尖閣諸島を占領するだろうしその時に日本はどうするのかという事だ。

 

とにかく今の日本は原発放射能、大地震、黄砂の公害、多くの自然災害を抱えつつ尖閣問題、世界の三極化、実に多くの危険な要素を持っているのだ、その上に米軍が撤退してすべて自前で国を守らねばならない時に、無責任にわーわー言ってるだけで良いのかって事だ。

 

今回行われた核実験は中国のメンツを見事に潰した。このような状態では中国は何でもする。中国人のメンツに対する考え方は天動説の日本人には理解し難い。日本人は早いとこ地動説を理解して世界で通用する常識を持つことである。



tom_eastwind at 17:38│Comments(0)TrackBack(0) 諸行無常のビジネス日誌 

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