2013年05月09日

「さっきのメールは着いたかと、確認メール送るバカ」 ”殺気!”雫井脩介

昨日観た夢は寝てるのか起きてるのかわからない状態で薄っすらと3本立てで観たのだが、そのうちの一本は筋書きのない単発の一発芸みたいな夢だった。

週刊プレイボーイという良い子が見ない雑誌があって、そこのPlayBoyという文字が急に縦に並んでその横にいきなりこんな感じで英単語が並んだ。

Precious

Lovely

Able

Young

BOY

これでプレイボーイ。日本語も自動翻訳で出てきて「貴重で可愛くって出来る若いやつ」ってなった。なんじゃこの夢とか思いつつも結構鮮明だったので、朝の3時過ぎなんだけどすかさずメモってまた寝た。

 

こういうのって何なんだろう?本当によく分からん。いわゆるレム睡眠とノンレム睡眠とは違って寝てるのと起きてるのの合間にしょっちゅう起こるので面白くもあるが、とっても不思議だ。他の2本の夢もかなり現実的な形で筋書きがあって、起きた後もずっと思い出す。

 

丁度読了した雫井脩介の「殺気!」もそんな、変な感覚が主役に来ている。20歳の大学生ましろは、ある時自分に特殊な能力があるのに気づく。それは周囲に誰か殺気を発していると少しくらい遠くても感じ取ることが出来る能力だ。

 

「犯人に告ぐ」で一躍大人気作家になった雫井脩介だが、この作品はミステリーでありながらむしろ東京郊外の多摩が丘という田舎で育った小学校からの同級生達の物語でもある。

 

20歳の学生、高卒で地元の建設会社で働く同級生、アルバイト仲間、近くのモールで開かれるファッションショー、自然公園での探検ごっこ、おとなになって母親の経営するスナックではたらく娘、様々な20歳の人生が繰り広げられて、ミステリーというよりも青春小説とでも呼んだほうが良いような作品である。

 

スマッシュヒット、かな。大当たりではないけど確実に読者をほっとさせてくれるし最後の最後まで読みやすい軽妙な語り口と大人たちの現実と、社会の入口に立ってさあこれからどうしようかと悩んでいる20歳の子どもたちの物語だ。

 

20歳の成人式で再会する同級生、近くの居酒屋で開いた同窓会、18歳で社会に出て仕事をしてる仲間は「やっぱ俺たち負け組かなー、高校の頃は粋がってたけどさ、その点お前はいいよ、国立大学に受かってさ」とつぶやく。その仲間に「いや、オレだって勝ち組に入らないよ、行ってる大学だって本当に目指してたとこじゃないしさ・・・けっこう忸怩たるものがあるよ」と答える生徒会長をしていた仲間・・・。2次会は町田に出ようとかいいじゃんこのあたりでカラオケ行こうよとか。

 

ある時ましろは知り合いの先輩からファッションショーの素人モデルにならないかと声をかけられた。地元に新しくオープンするモールでのショーだ。優勝すれば賞金とハワイ旅行が貰える。父親を去年病気で失くして普通の学生なら冬休みは旅行に行ったりするのだがましろは近くのちっちゃなお店でアルバイト生活。

 

そんな時に賞金付きのモデルだったら出てみたい。友達の女の子に電話すると彼女は

「ぷはは!ましろがファッションモデル?!どうしたの、インフルエンザで熱出してんの!?」

「平熱だよ!」

こんな楽しい日常会話。しかしだんだん迫り来る過去の事実が一気にミステリーに引きこむ。

 

まるで甘いアイスクリームと香りの強いシングルモルトウイスキー、それもアイラ産の強い奴を繰り返し食べたり飲んだりするような「行ったり来たりする」ちょっと不思議な感覚。

 

「さっきのメールは着いたかと、確認メール送るバカ」そんな感じの軽いノリでありながら次の瞬間には「不意に背中を圧迫する殺気が鋭角に変化し、運動エネルギーとして自分に向かってくるのが分かった。背中の肩甲骨付近が焼けるように熱くなった。その瞬間ましろの身体が動いた。」とスピード感のあるアクション。

 

難しい本はどうも、けど何か読みたいなって時には丁度お勧めの内容だ。

今日の写真はぼくの座っている席から西に見えるスカイタワーと抜けるような透明さの青空です。
シティでもこれだけの青空です。
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tom_eastwind at 14:27│Comments(0)TrackBack(0) 諸行無常のビジネス日誌 | 最近読んだ本 

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