2013年08月29日

ニュージーランド経済レポート

当社では投資家やファイナンスにご興味のある方向けにニュージーランド経済レポートを毎月発表している。

 

ぼくは日頃自分のブログではあまり数字を多用せずに肌感覚で書いているが仕事では数字を重視している。常に数字を見ながら感情ではなく勘定、データによる検証も肌感覚と合わせて行っている。でもって数字と肌感覚が合わない時は必ず数字側に問題があると推測して数字の出所と根拠を確認する。

 

例えば失業率。8月07日に発表された失業率は前回の6.2%よりも0.2%増えて6.4%になった。予測を0.1%上回ったが、同時に失業率は悪化したものの就業者数は増えたとの記事。普通なら違和感がある。失業率が悪化するのは失業者した人が増えたって事で、だったら就業者は減るのでは?

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失 業率 第2四半期

6.2%

6.3%

6.4%

4月から6月までの失業率は、その前の3ヶ月間が6.2パーセントだったのに比較して6.4パーセントに増加した。しかし同期間で、職に就いた人は8,000人増加した

http://www.nzdaisuki.com/news/news.php?id=5569

NZ大好きより

 

これは何を意味するか?実はここにニュージーランドのからくりがある。失業率とは仕事を探している人の数であり、これは今まで仕事を探さなかった、つまり生活保護を受けてるだけの人が最近になって仕事を積極的に探し始めたという意味であり同時に学生が単位を取得して就職先を探し始めた結果だ(ニュージーランドは日本のような新卒一括採用はない。随時採用が基本)。

 

要するに首になった人が増えたわけではなく就職したい人の数が増えて実際に就職出来た人が8,000人増加したわけで合計労働者数は増えており、日本のように首になって失業者が増える不景気型の雇用状況ではないという事だ。

 

特にこの国は徹底した社会保障で国民が守られており一生に一度も働かなくても食っていける環境があるのに、それでも働こうとする人々がいるって事だ。

 

このような状況判断は毎日現場で仕事をしていないと理解しづらい。机上で数字だけを見てても分からない。ぼくは毎日現場の最前線に出て仕事をして様々な業界の人々と話をするので、今のニュージーランド、特にオークランドの景気の良さは肌で感じる。

 

人々が「今この街は景気が良い、なら今のうちに仕事を見つけて生活保護ではなく、より豊かな生活を送ろう」としている気持ちが現場にいるから伝わってくるのだ。これは本当に現場で仕事をしていないと分からない。

 

7月のNZ企業景況感、14年 来の最高水準

7月のNZ企 業の景況感が、19994月以降で最高の水準に達したことが、ANZ銀行の調査で分かった。同国の景況感は昨年半ばから上昇傾向に ある。ANZ銀行の調査によれば、回答企業の53%が、今後1年 間の事業環境が改善すると予想。6月の50%と比べて3ポ イント改善した。自社の業績については、44%が上向くと回 答しており、前月調査を1ポイント上回った。

 

業界別の景況感の格差も縮小。最高は建設部門で、農業部門が最も低かった。クライストチャーチ地震の復興事業に伴い、建設業の景況感は、住宅部門、非住宅部門ともに4年 来で最高の水準に達している。建設市場の好況を受け、製造業の景況感も5ポ イント上昇した。

 

ANZ銀のチーフエコノミストのバグリー氏は、NZ経 済が成長していることを示していると分析。今後1年間の経済 成長率が3%超となり、向こう2年間は豪州経済の成長率を上回ると予想している。一方で、回答企業 の30%が今後1年 間で価格の引き上げを検討していることが明らかになっている。

 

各指標データ

7月のNZ企業景況感、14年来の最高水準

NZ失業率は悪化するも、就業者数は拡 大

NZ国営電力、10月末にも上場

NZ小売売上高、第2四半期は1.7%

NZ 7月食品価格0.5%上昇、野菜が貢献

NZ新車販売12.4%

NZの住宅販売数上昇、過去6年間で最多

住宅市場過熱抑制へ10月から融資規制導入

NZ野党、外国人の住宅購入の制限を計 画

***

上記の「経済成長率が3%であり来年度は国家財政が黒字化される予測であり公定歩合は2.5%、企業の30%が今後の価格引き上げ」とあるが賃金はあまり賃上げされていない状況は、労働市場に参加する未熟練労働者が増えたので給料を大幅に上げなくても労働者が集まるからだ。

 

それでもNZでは毎年最低賃金の見直しが行われており現在の最低賃金は13.75ドル、毎年大体2%程度の賃上げがされている。実際の熟練労働市場では毎年3~5%くらい上昇している。ちなみに当社も毎年5%以上の賃上げを行っている。

 

これから労働需要が増えていけば失業率は一年後には3%程度に下がるだろう、そうなると労働現場では人員不足になるので賃上げと外国人労働者の確保が必要となる。つまり一年後は今よりもワークビザ取得が容易になるって事だ。しかしそれは労働ビザ保持者が永住権を取得する事の容易さには繋がらない。

 

どこの国も発展時は永住権を大量発行して国民の数を増やそうとするが一定数が増加した後は質の高い労働者のみが永住権を取得出来るようになる。今がまさにその時期である。これから永住権を取得するなら「だれでも出来るような仕事」で「英語もろくに出来ない」で「安い給料しか貰えない」仕事は避けたほうが良い。

 

僕のブログは基本的に殴り書きだが例えば「5年先が見える」って時は上記のように数字に裏付けられた経済事情と国家のインフラの動きと肌感覚を足し合わせて書いている。色んな要素を合計すれば今ニュージーランドが置かれている現状が見えてくる。

 

その現状と同じ状況が何時の時代に存在したかをかぶせればそれと同じような未来が次に来ると分かる。歴史は本当に繰り返す。ある意味多くの人間はそれほどに歴史に学べない人々なのである。だから地震などの突発事件は別としてある程度の未来予測が可能なのだ。

 

ところでぼくがこういうようにものを考えることになったきっかけは実は中学生の頃だったかに読んだ一冊のSF小説が始まりだ。それは1950年代に発表されたアイザック・アシモフの「ファウンデーションシリーズ」だ。この作品中に出てくる「心理歴史学」である。(てゆーか、個人的にSFって凄いんだぞとも言いたい(苦笑))

***

膨大な数の人間集団の行動を予測するための数学的手法。社会的、経済的な刺激への人間の感情や反応に一定の規則を見いだすことで、未来の人類の行動をも予測しうる。

心理歴史学による未来予測が可能かどうかは、以下の3点が重要視される。

個人ではなく膨大な集団を扱うこと

人間が気体分子のようにランダムに行動すること(心理歴史学による予測について知らないまま行動していること)

扱う集団が人類のみで構成されていること

ファウンデーションシリーズの根幹をなす架空の理論である。名称自体は1930年代にも実際に用いられたことがあるものだが、作品で使われているものはそれとは関係ない架空のものである。アシモフは気体分子運動論をヒントに作り出しており、個々の分子の運動は予測できないが、集団の気体ということなら平均の運動は計算できるということについて、分子を人間に、気体を人間の集団に置き換えている。アシモフは後に、人間集団の行動はこのようなものではなくカオス的なものではないかと考えている。

***

勿論この理論は架空であるが将来どっかの学者によって証明されるかもしれない。今はぼくは集団がランダムに行動することを前提に数字と市場の定点観測により自分なりに今の時代を読み取りそれに合わせて未来予測を行っている。

 

経済レポートにはランダムに行動する人々の集大成が数字として現れてくる。街を歩く人の無意識の表情に街の勢いが現れてくる。あとはそれを正しく読み取れるかどうかである。



tom_eastwind at 22:20│Comments(0)TrackBack(0) 諸行無常のビジネス日誌 

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