2013年09月07日

いましかないかも・・・

あまちゃんの133話で東北大震災の舞台に移る。311の津波の時に小学生が取るものも取らずチームを組んで山の高台に逃げて助かった話がある。たしかNHK特集で見た記憶があるが、何故子どもたちだけでこんなに機敏に動けたのか?

 

それは以前ある地震対策関係者の大人がこの子どもたちのクラスにやってきて、地震がやってきたらそれから数十分後に津波が来るから、必ず高台に逃げるように、だから普段からどこに高台があってどうやって歩けば最も近道で行けるかを覚えておきなさいという事だった。もちろん何かを持って逃げるような事は絶対だめで、とにかく取るものも取らずに逃げなさいという話。

 

子どもたちは実際に大地震が来た時にすぐ大人の指示を思い出してチームを作り最初は低い避難場所に、そしてこれでも低すぎると思い更に高い山に逃げて一難を逃れた。

 

その同時刻、多くの大人が同じ地震を感じていながらやはり家に帰り何かいろいろなものを持ちだそうとして結局津波に巻き込まれて亡くなってしまった。

 

子どもたちと大人の判断の違いは何だったのだろうか?それは2つの理由があると思う。まず子どもたちは大人のようなしがらみがない。例えば亡くなった旦那の位牌とか預金通帳とかだ。だから何も持たずに逃げることが出来て結果的に時間の有利を得た。

 

そしてもう一つは、子どもたちは大人に教えられた事をそのまま信じて「津波は怖い、何を置いてもすぐ逃げろ」の指示を素直に実行したが、大人たちは長い人生経験の中で「まだ大丈夫だろう、自分だけは大丈夫だろう、だって今までも生き残ってきたんだから」と死の実感がないままにぎりぎりまでの余裕を狙って結局時間を読み違えて失敗した。

 

つまり大人たちは自分の命をゲームテーブルに投げ出して自分の経験値だけを理由に出来るだけハイリスクのギャンブルを行なって結局一番大事な自分の命を失ったのだ。

 

今読んでる本が橘玲の「資産防衛マニュアル」だ。冒頭の20XX年の近未来小説がとても面白かった。まさにこれからの日本に起こりうる一つの道筋であることは間違いない。

 

良い本ではある、ただこの本の本題と話はそれるが、唯一彼が間違っているとぼくが思う部分は、彼の話は「人間はすべて合理的であり一足す一は二である」という前提で話を進めている点だ。この点だけは僕の意見はちょっと神がかり的な話になるが、日本人は合理的ではないと思ってる。

 

学者と呼ばれる人々は誰もが過去の日本人の行動を振り返ってそれなりに分類して「日本人は時に想定外の反応を起こす」と定義付けをする。ところが彼ら学者はすべての日本人が未来においては合理的な行動をするという前提で将来の予測をするから結果を外す。

 

これは日本国内にいて学習する日本生まれの日本人にも、また外国人で日本を勉強する外人にも分からないと思う。おそらくぼくらのように日本で生まれ育ち日本を客観的に学ぶことが好きで、更に海外の全く違う価値観の国に居を移して違う価値観のフィルターを通して日本を見た時にしか見えてこない「日本人の特殊性」が存在する。

 

その特殊性とは一時の個人の利害に関係なく大義のために行動する事が出来る日本人が存在するという事だ。それは災害時に自分の命を捨ててでも他人の子供を救ったとかでだけでなくもっと大きな眼に見えないものの為に命を捨てた人々の話である。

 

これを神風と呼ぶか明治維新時の坂本龍馬と呼ぶか日露戦争時の西郷や児玉と呼ぶかは判断者の視点によって違うが日本人の中にはどうもそういう血を持つ人間が存在する。そして彼らは歴史の転回点の一瞬に歴史の波涛上に突如として現れ、大波が消えた瞬間に去りゆき、その後の平和な時代は市井の浮浪雲となってのんべんだらりと生きていく。

 

本題に戻って橘玲の見せる近未来は確かに実現可能性が高い。とんでも本として悪評高く有名なのは何度も日本の金融危機を具体的に時期を書いてはその度に外して、しばらくするとまた次の危機を具体的に日付を入れてまた外して、懲りもせずに繰り返し同じ事を書いてはニュージーランドの不動産を会員に売りつけて迷惑をかけている人とその仲間であるが、橘玲の場合はしっかりと現実に目を向け明晰な頭脳で先を見ている。

 

僕が彼を最初に評価したのは彼が香港の口座開設ビジネスを実態を含めて解説している小説だった。まさにぼくが香港にいた1990年代にぼくのに目の前で起こっていた事を彼がその後小説にして日本人が海外に口座を作る背景を説明して、更に税務署がそれにどう対抗するかも予測した内容であり、「おお、こりゃ現場を知らんと書けない」って思ったところから始まる。

 

普通の、上記に書いたとんでも本作者などは自分の商品を売るために本を書いては外してその度に投資家に迷惑をかけているが、橘玲の場合は商品ではなく本そのもの、つまり情報を売る仕事をしてるから情報精度が高く偏見が入ってないから良い。現場をしっかり見てきた人だから書ける内容になっている。

 

今回の「資産防衛マニュアル」もその一つである。少し煽るような部分はあるものの、金融知識のない人たちには役に立つ一冊である。

 

特にこの本の中でも繰り返し書かれているテーマが「恐れる必要はない、しかし備える必要はある」という帯のセリフである。これは「むやみに恐れるな、しかし正しく恐れろ」とか「焦るな、しかし急げ」とも通じるセリフだ。

 

本書では日本に迫る金融危機を本題として描いているが、前半は現在から近未来における経済実情と予測を掲げて後半ではその対策を書いている。

 

ぼくがこの本を読みながら思ったのは、たしかに今たくさんの経済予測本が書店で平積みにされて多くの人々の興味を誘っているが、それが現実の行動と結びついているかどうかだ。

 

ぼくの仕事は日本に行って飛び込み営業で見知らぬ他人のうちのドアをノックして「シロアリ検査ですー」とやることではない。日本では一切の営業もせず(これはオークランドでも同様だが)うちが出来る事をウェブサイトに掲載しているだけだ。

 

例えて言えば外商のいない三越百貨店みたいなもので、お客様は店頭に来てじっと眺めて説明を聞いて納得すれば買う、しかし決してこちらから相手の自宅に行って何かを売り込むことはなく、あくまでも相手がこちらの商品に興味を持ってやってきて現物を見て納得してもらってから商品説明をするだけだ。

 

だから当社のドアをノックする人は現実の行動にむけて第一歩を踏み出した人々だと言える。そんな人はもちろん日本全体の5%以下にしか過ぎない。本当に少数民族ではあるが、彼らの意志は固いからしっかりと現実の行動に結びついている。

 

こういう仕事をしていると本当に日本の旬を感じる。今月はこういう業界から問い合わせが多いなとかだ。

 

最近増えてきたのがサラリーパーソンである。普通の人々がすでに移住を視野に入れ始めた。すでに彼らの段階まで危機感が広まっている。とは言っても日本全体で言えばまだ人口の5%である。95%の人々は今日と同じ明日が来ると信じている。けれどそんなものは来ない。

 

今日の個人面談でも話をしていて、わざわざ高いお金を払って個人面談してるのに「僕は慎重だからこれからどうするか考えます」という。これなどまさに東北大震災の時に「まだまだ大丈夫」と思って結局津波で亡くなった人のようである。彼らも逃げる時間はあっただろうにと思う。

 

なのに前回大丈夫だったから今回も大丈夫だろうって思ったのだろう。

 

今しかないかも。そういう気持ちで生きていくことが大事ではないかと思う今日このごろ。



tom_eastwind at 16:59│Comments(0)TrackBack(0)

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