2013年09月23日

ソフト・ターゲット

ケニアのナイロビのモールで起こったテロリスト襲撃事件は、数年前に読んだアクション小説ボブ・リー・スワガーシリーズの「ソフトターゲット」とまさに同様であった。

 

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感謝祭明けの金曜日午後。ミネソタ州郊外の巨大ショッピングモール“アメリカ・ザ・モール”がテロリストに襲われた。まずサンタクロースに扮した男が射殺。続いて、銃声が立て続けに轟き、モールを訪れていた客がパニックに陥った。直後、モールのセキュリティ・システムがテロリストに乗っ取られ、モールの内外を結ぶ有線回路は全て遮断された。連絡手段は携帯電話と無線機のみとなる。その現場に、たまたま、レイ・クルーズとフィアンセのモリー・チェンが買い物客として訪れていた…。

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レイ・クルーズはボブ・リー・スワガーシリーズの新しいメンバーであるが、彼がまさに何の気なしに婚約者と訪れたショッピング・モールで突然テロリストの襲撃に遭う話である。

 

これに限らず米国の小説では結構ショッピングモールがソフトターゲットとして狙われる案件が増えた。そりゃそうだ、米軍基地に攻撃を仕掛けるのは準備だけで大変だしハード・ターゲットは相手の反撃も半端なく厳しい。そう考えればソフトターゲットである一般市民が歩くモールや学校を狙った方がよほど効果的だ。

 

つーことで最近はアフリカのアルジェリアで日本の日揮社員が襲われたような(あれはソフトターゲットか?という話もあるが)事件もあり、ソフトターゲットを狙ったテロがこれからますます増えていくだろう。一般市民が普通に歩く場所がテロの対象となるのだ。

 

以前のテロは暗殺者が生き残って脱出することが大前提であったから狙撃場所もある程度絞られた。しかし現在のテロは自爆テロであり死んだら天国に行って遊び放題という愉快な宗教であれば死ぬことも怖くなくなるわな。

 

これはぼくがもしテロリストのリーダーなら当然考える事であり、そうなると例えば米国の資本主義のおかげで大成功して大儲けしたビジネスマンでも週末に家族とモールを歩いてたらテロリストに捕まって殺される可能性がある。

 

こればかりは読みようがない事態でありどれだけお金があっても防げるものではない。どんな事言ったって人間は24時間自分を守ることは出来ない。

 

ソフトターゲットではモール内にはレイ・クルーズという戦闘のプロがおりモールの外にはボブ・リー・スワガーがいて運良く多くの人が助かったが現実の世界ではそうはいかない。

 

その意味でビジネスマンが自分の家族を守るために出来る有効な方法は「君子危うきに近寄らず」しかない。つまりテロの起こりうる場所には住まないという事だ。

 

幸いこれだけインターネットが発達して高速長距離飛行機が空を飛ぶようになったので、あえて危険な地区に住む必要はない。

 

だもんで最近の2年は米国からの投資居住者が激増している。一昔前なら米国の金持ちが田舎のニュージーランドで住むなんて考えられなかったのだが、これだけイスラムとの戦いが激しくなるとそういうわけにもいかないのだろう。

 

元々ニュージーランドに移住する人の半数は英国人であった。英国人は薄暗く雨の多いロンドンから、青空とたなびく白い雲がどこまでも伸びているニュージーランドに未来を観てやってきた。

 

しかし今はお金のある米国人が自分たちの避難場所として自家用ジェットを飛ばしてニュージーランドにやってくる。飛行機を駐機場に入れてシティの弁護士事務所に足を運び、そこで小切手を置いて「じゃあビザよろしく、ちょっと南島に観光に行くからその間にビザを取っておいてくれ」って感じだ。

 

金があっても撃ち殺される。金があるから撃ち殺される。それなら少しでも治安の良い国を目指すのは当然の行動である。

 

ではニュージーランドにテロはないのかという話だが、現時点ではテロは発生していない。政治的仕組みとして発生しない。それはニュージーランドが白人国家では珍しくテロ紛争地域の人々を政治亡命として受け入れているからだ。

 

ニュージーランドには難民ビザという枠があり、毎年アフリカ大陸、例えばナイジェリアの内戦を逃れて来た人々がマウントロスキル地区に集まって生活している。インドやパキスタンからの難民も多く、その意味で宗教や肌の色に関係なく世界中の人々が集まっている。

 

そしてキーウィは白人国家の中では最も人種差別意識が低い。これは歴史的背景があるのだが歴史を学んでない人は目先の個人的感情で語るから話にならない。

 

例えば白人が植民地にした国家、例えば米国や豪州では先住民族を同じ人間として認めず殺しまくった歴史があるがニュージーランドでは初代総督から始まり先住民族であるマオリ語も公用語としてマオリと白人の融和を計った。

 

1860年代には政府の融和政策に従わない一部豪州から渡ってきた貿易商人が土地争いを起こしてマオリ戦争が起こったがそれはあくまでも戦争であり1900年に起こったボーア戦争では白人(パケハ)とマオリが肩を並べてキーウィとして南アフリカで英国軍に協力して戦争に参加した。皮肉なのはボーア戦争自体は英国による侵略戦争であったが。

 

現在は世界中からやって来た人々が自国の文化や習慣を守りつつ現地の生活に同調して安全な生活を送っている。だからと言ってもちろん全く人種問題がないわけではない、他の白人国家と比べて少ないと言ってるだけだが、それでも人種問題で殺し合いが起こった事はない。

 

それはニュージーランドの上流階層の人々の道徳教育水準の高さがある。だからモスリムもロンドンで爆弾を仕掛けることがあってもオークランドで爆弾を仕掛けることはしない。だって差別されてないし母国がニュージーランド軍によって侵攻されてないし、居住者がホウリツで守られて基本的権利が平等なんだからテロを起こす理由がない。

 

ニュージーランドは海外派兵も行っているがそれはあくまでも国連主導の下においてのみであり単独で米国に付き合って戦争はしていないのもテロがない大きな理由の一つである。

 

ぼくは別にニュージーランドを天国として描こうとしているわけではない。悪いことはたくさんある。コンビニは発達しないしカラオケも殆どないしパチンコ屋は存在しないし銀行の窓口でもお金の計算間違う。けれどテロが起こるほど悪い国ではない。田舎である。けど地政学的に外国軍が羊のバーベキューをするために攻めて来ることはない。

 

反戦デモはあるけれど、少なくとも日本のように在特会が昼間から新大久保で警察に守られて嫌韓デモをやるような国ではない。

 

ケニアのモール襲撃事件は起こるべくして起こった事件である。この事件、日本で起こることは1年はないだろう。では1年後は?

 

偶然だが韓国人の若者が靖国神社に放火しようとして逮捕された記事があった。日本がイスラムに襲撃されることはないだろう。しかし隣国からの可能性を全く無視して「おれたち、平和だもんねー」といえる状況に無いのも事実である。

 

それは何も今の日中韓が危険という意味ではなく、だれか政治的思考を持った人間が操るにはまさに使いやすい状況だということだ。

 

第一次世界大戦も所詮一人の王族が殺されただけであんなでかい戦争に成ったのか、何故起こったのか分からない部分が多い(てか実際には裏は見えているが)。

 

これが今の日本で起こっても全くおかしくないのは現実である。例えばあなたが御殿場のアウトレットで商品を選んでいる時に「殺すぞ!」と銃を頭に突き付けられたらどうする?

 

ケニアのナイロビのモールで起こった事件は、まさにイスラム勢力にとってソフトターゲットが明確になった案件である。これが広がらないとか、これが例外案件と思うことは誰にでも出来る。それは「大丈夫、すぐに助けが来るよ」ってあり得ない援助を期待する気持ちのようなものだ。

 

問題はそれが世間、テロリストには通用しないってことだ。今の日本では日本政府に期待するか自分が自己防衛して家族を守るか、二択じゃないかなって思っている。

 

どなたかもしこの記事に興味があれば、ぜひとも「ソフトターゲット」を読んで頂ければと思う。



tom_eastwind at 19:15│Comments(0)TrackBack(0) 諸行無常のビジネス日誌 

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