2013年10月13日

大風の中で

金曜日の夜は家族で久しぶりに山水で食事をする。この店では先月日本から来た日本食の職人が本格的な懐石料理を提供出来るようになったので今のニュージーランドではまずお目にかかることの出来ない懐石料理を家族に食べてもらう。

 

この店で懐石料理はまだ通常のメニューには入れておらず予約のみである。手間暇を考えれば予約なしに飛び込みで注文されてもすぐに用意出来るようなものではない。

 

金曜日の夜は6時の時点ですでに半分近く座席が埋まっており7時には満席になっていたが、そのうちの一組のカップルは座敷個室を利用して懐石料理を頂いていた。料理長に聞くと、一週間ほど前に予約がありアレルギーとか好き嫌いなど食事内容を打ち合わせている内に「では日本式懐石をお出しします」という事になったようだ。

 

キーウィ男性と日系ではないアジア人女性だったが、何だかお二人にとっては特別な日だったらしい。2時間ほど食事を楽しみ最後のデザートはちょっと洋風に仕上げていたが、どれも口に合ったようで全12品すべてをきれいに頂いたとの事。お二人に幸せあれ!

 

うちの席でも同じ12品の料理だったが、テーブルには予めお品書きが置かれており、大体日本語の読めるむすめが何となく理解して奥さんは

「えーっと、これはうなぎにきゅー・・?」

「うなぎにキュウリ」

「この魚の卵、クリスピーだね」

「いくら・・・」

みたいな感じで、りょうまくんに至ってはなんとか平仮名を読める程度なので

「す、すきやきー!」と喜んでいた。

 

オークランドは最近和牛が入手出来るようになり、この日も普通のすき焼きよりも厚めに切った和牛がお皿に乗って来た。これくらい新鮮だと小鍋でさっと湯がくだけで半生でも十分に食える。オークランドバンザイである。

 

料理長に「今日の材料はどれが日本から送ってきた分ですか?」と聞くと「いえいえ、全部地元で揃いましたよ、いやー、驚きましたね、オークランドって良い食材がいっぱいあるじゃないですか」ですって。ますますオークランドバンザイ!

 

そうだよなー、この国は肉も魚も野菜も素材は良い。ただ今までは英国から来た味音痴連中が素材をぶち壊してテーブルに並べてたから「ニュージーランドの食い物は不味い!」と言われてただけだ。

 

ワイトモ鍾乳洞見学に行く際の昼食レストランではステーキランチだが、せっかくの美味しい牛肉をガチガチになるまで焼いて出すものだから、ぼくらはそれを「草履ステーキ」と呼んだものだ。

 

これなら良い。味も雰囲気も向上した。オークランドの地元に住むキーウィにもアジア系にも堂々と提供出来る。キーウィに味は分からないというのは彼らが「なんちゃって和食」を日本食と思って食べてたからだが、それは結局提供する側が甘えと逃げで使ってた言葉だなって、昨日久しぶりに日本酒の熱燗を飲みながらしみじみ思った。

 

やっぱり美味しいものに国境はないと言うのは事実だ。

 

なんちゃって中華料理を食べてる日本人を見て腹が立つ中国人はいるだろう「本物を知らねー!」と怒るだろうが、では日本で本格的な中華料理はどこまで普及しているのか?美味しいと思うのなら本物を持ってくるしか無い、そして日本で流行ってるラーメン・餃子は中華料理ではないと日本人に伝えることだろう。

 

中華といえばラーメン炒飯餃子くらいに思ってる日本人の意識を作ったのは、実は中国人ではなく戦後に日本に増えた「なんちゃって」中華料理屋を経営する日本人である。大体中国の餃子にニンニクが入ってるのか?ぼくも1970年代の終わりに北京と上海と広州を回った時にラーメンが存在しない事を知ってびっくりした経験で、今でも鮮烈に覚えている。

 

イタリア料理も同様である。昭和の時代からイタリア料理の代表と言えばイタリアに存在しなかったナポリタンスパゲティである。諸説あるが横浜のホテルニューグランドが発祥であると言うよりもフランス料理のサイドディッシュとしてパスタが存在したという話があるが、いずれにしても本場イタリア人からしたら迷惑この上ない話だ。

http://www.alpha-net.ne.jp/users2/n412493/kit/napoli.html

 

そんな事を思いつつ今日初めてオークランドで地元の材料を使った懐石料理12品を堪能した。いや、格が違うな、他の有名な日本食レストランも大体知っている(オーナーも含めて)が、これは美味い。

懐石photo

 

中国人は世界に誇る中華料理を作り世界の高級ホテルに入ることが出来た、三番手として。イタリア人が世界に美味しいものを発表したが高級ホテルに入れる本格的イタリアンになるまでは1990年代までかかったし、今でも「美味しくて個性的で最高!」と言われてもやはりフレンチの地位には未達だ。

 

その点日本食は面白いことに世界中で受け入れられているし高級ホテルにも入っている。ただあまりに味が繊細だし職人のこだわりが強すぎるから世界に広げていくには難しい。その間隙をついて出てきたのが中国人や韓国人の経営する「ジャパニーズレストラン」である。

 

山水での食事後に外に出るとそこはすんごい大風。丁度この店の前の道路が西側から東側に沿っておりまさに風の通り場になっている。その時にネットで調べると風速40kmであった。りょうまくんに「今なら大きなタオルケット着ければ飛べるよ」と言うとびっくりしてた。

 

ウィンドサーフィンでは風力の読みが大事であり白波が立てば20ノット、つまり風速32キロだ。例えばぼくの体重は60kgなのでこの時点で4.4m2の帆を張ると大波が来てもコントロールしながらほぼ楽しく5メートルほど飛べる。

 

初春のオークランドの週末、山水の懐石に日本を味わい大風に吹かれて散るであろうコーンウォールパークの桜を思いつつ、「いいな、オークランド」って金曜日の夜を過ごしました。

 



tom_eastwind at 11:16│Comments(0)TrackBack(0) 諸行無常のビジネス日誌 

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