2014年01月03日

あんたー!雪国での叫び(笑)

「あんたー、何考えてんのよー!あったま、おっかっしいんじゃないのー、あたしをこんなとこに連れてきてさ!あたし帰る、あっち行くー!」

 

若い女性のすさまじい大声が聞こえてきたのはぼくがスキー場の中腹まで降りてきて中級コースに作られた軽いコブ斜面の入口であった。

 

どうやらスキー上手の男とスキーデートに来たんだろうけど、ここにやっとボーゲン程度の若い女性を連れてくれば、そりゃその斜面を見た女性はまるで今から逃げ場のないどっかに連れ込まれるような恐怖を覚えて叫んだのだろう。

 

この二人がこれからどうなるか分からないが、何とかなだめても賠償金は高いものにつくだろう、彼氏が定職と高給料を貰っていることを期待する(苦笑)。それにしてもこの女性、すごい声出してたな、それからいそいで板を水平にして階段登りして他のコースに移動してた、ははは。

 

スキーではカップルの不釣合いがよく見られるがこれは何も日本だけではない。今日は偶然リフトに乗り合わせた米国人4人家族の話を聞くともなく聴いてた。この家族、けっこう長く日本に駐在しているか、もしかしたらすでにこちらでビジネスをしているのかもしれない、日本慣れした様子でいろんなスキー場の話をしてた。

 

その家庭では10歳前後の女の子が二人いて、一人はわりかし自信家でスキー大好きーって言ってて、もう一人は「お父さん、あなたひどい、なんで苗場に連れてきたの?あたしが下手って知ってるじゃん、第一お腹すいたしー」とすねて文句を言ってる。奥さんがなだめるもおねえちゃんらしき方が話を聞かず妹らしき方が「おねえーちゃん、スキーって簡単だよー」とかちゃちゃ入れしてるし。

 

そのうちお父さんも段々腹がたったようで妹に「ねえ、今から始めて欲しいことがあるんだよ」というと妹はにこっと笑って「なに?お父さん?」と聞く。父さんは「黙って欲しいんだよ、これ以上口を開かないでもらいたいんだ」これにはぼくも思わず腹の中で笑った。外国人も来てますね。

 

今年のこの時期のこのスキー場の特徴としては、やはりちっちゃな子供連れの40代の元スキーを楽しんでた両親が子どもたちを連れて戻ってきた事だろう。

 

日本がバブル崩壊して長い期間真っ暗なトンネルを歩いてきたが、アベノミクスになり大手企業の社員はどうやら一息つけそうだ、これから大手企業は給料も少しは上がるだろうし何より企業業績が良くなれば俺の部署も仕事が受注出来るだろう、何より周囲の眼もありお金も使えなかったけど、今年なら正月のスキー旅行くらい、いいよね。

 

そう、大手企業は一息つくしあなたの仕事もうまくいけばリストラなしで他の仕事を取れるだろう、けど国境の長いトンネルの向こうは決して「私をスキーに連れてって」の時代ではない、そのことだけは肝に銘じておいた方が良いだろう。

 

それでも一昨年までは正月といえどここまで日本人滞在客は見かけなかった。正月と言えど安い夜行バスで朝4時に到着してバス内で仮眠、朝一番から滑ってお昼ごはんだけ食べて夕方にはバスで帰るようなツアーが目立った。

 

その時このホテルに泊まっていたお客の3割くらいはアジア人を含む外国人であった。ところが今年は、もちろん外国人も来ているがそれよりも数日宿泊する日本人スキーヤー家族の姿が目立つのだ。

 

久しぶりに見るスキーロッカーに「おお、ずいぶん変わったなー、おれが学生だった頃はさー」とか「え〜?こんなゴンドラ、あの時あったかなーお父さん?」とか、それなりに皆「ここ、まだ頑張ってるなー」って懐かしい感銘だろうか。

 

お風呂に行っても今まで殆ど見かけることのなかった5歳児くらいの子供のはしゃぎ声が聞こえる。お父さんもお母さんも何となく先行き良さそうで、二人が知りあうきっかけとなったスキーを子供にも教えてあげたいって気持ちなのかな。

 

今年は連休が長いってのも一つの要素である。15日まで休んでいる人は今日と明日はスキーを楽しみ日曜日、5日の午前中滑って午後の新幹線で東京に戻るのだろう。

 

だから彼らの場合意外と軽装である。ブーツとスキージャケットは持参するが面倒くさい板とポールは現地調達。これでレンタルショップは利益が出るし客は面倒くさい荷物を持ってくる必要がなくなり子供にもっと集中出来る。

 

16日以降はまたいつものように退職した老人たちがスキー全盛時代の思い出を胸に3種の神器(板、ブーツ、ウエア)を持参して仲間と数本滑っては昔話を楽しむのだろう。

 

それでもお正月に両親と楽しい思い出を作った子どもたちの中には「ねえお父さん、また連れてってー」というのが出てくるだろう。冒頭のような「あんたー!」がどうなるのかは、神のみぞ知るであるが(苦笑)。

 

ぼくは日本が好きである。長期的には決して悲観していない。日本人の強さはその国土にあり国民にある。しかし一時的にどうしようもない不幸に陥れられる人がいるのも事実である。それは無作為に、しかし確実に一部の日本人を拾い上げて政府のための人身御供にする。

 

それは1945年の時点では300万人の日本人が殺されたという事実である。バブル崩壊では死者の数量は銀行員がフィリピンで行方不明になるとか射殺されるとか程度で決して数万人単位でさえないが、世の中の様相を完全に変化させ不動産経営者が破綻して関連産業の社長から社員まで皆ブルーシート生活に陥り家庭崩壊とかが起こり日本社会そのものが完全にそれまでの日本と変わってしまった。

 

自分だけはそうならないと信じるのは自由である。しかしそうならないように準備した方がもっとましではないだろうか?とも思う。

 

けど正月3日の今日、こうやってたくさんの日本人家族を見るのは心情的にとてもうれしい。この、子供をスキーに連れてきてる父親も東京に戻ればずいぶん冷徹に戦ってるだろうしそんな時の彼に会いたいとは思わないが、こういうリゾートでは少し顔が緩んでいるのがうれしい。

 

子供にとって何よりの宝は親が自分に気持ちを注いでくれるその笑顔、その思い出は一生忘れない。これを機会に、スキー、また日本でブームになってくれないかなーって、今日は単純に一人の親として、そしてスキーヤーとして思った。

 

あはは、今日は単なる旅日記になりました(笑)。



tom_eastwind at 17:03│Comments(0)TrackBack(0) 諸行無常のビジネス日誌 

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