2014年01月28日

ニュージーランドにおけるTPP問題



ニュージーランドのTPPに関するお問い合わせを頂いた。こりゃ近接遭遇戦だな(苦笑)。こんなところでこんにちは!って感じだ。

 

TPPNZが終わる!みたいな記事を見つけました。本当にNZTPPで危機に陥るのでしょうか?」

The TPP – The End of NZ as a Sovereign Nation

http://www.scoop.co.nz/stories/PO1401/S00088/the-tpp-the-end-of-nz-as-a-sovereign-nation.htm

 

答は一言。陥りません。

 

英語記事をよく読めば答は分かるが文中に「陥る必然性」について語った具体的指摘がなく、米国発のサンモント社の種苗問題、遺伝子組み換え問題は以前から指摘されているが、いくらニュージーランドの人間が書いたからってそれが「陥る事に決定した事実」とは限らない。

 

作者が自分なりに社会に対して問題提起をするのは良い手段であるが、これはあくまでも問題提起記事である。「受け入れたら終わるよー!だから反対しようねー!」って文意なのだ。

 

TPPは非常に複雑で不透明な問題があるが、どこの国も自国に不利になる契約を黙って結ぶことはあり得ない。ニュージーランド政府としてまずTPP全体を見渡して総合的に利益があれば不利益な部分も受け入れるだろうがそこにキーウィ国民にとっての核心的利益が阻害されるようであれば国民が受け入れない(日本のことは含めない)。

 

どれだけTPPが重要であっても条約であってもそれを国家が批准して初めて効果を発するわけであり、それまでは効力を発しない。

 

TPPの結果がニュージーランドにとって負の部分が多ければ国民が受け入れないしそれはつまり国民の代表である政治家が時刻の議会でTPPを受け入れるような議論をするわけがない。ニュージーランドでは政治家はいても政治屋はいない。利権で飯を食ってる政治屋と根本的に立ち位置が違うのだ。

 

遺伝子組み換え、モンサント、そのような食物を自然と健康を最も重要視するキーウィが受け入れないのは自明の理である。それが彼らの寄って立つ価値観だからだ。

 

例えば1970年代、世界では核攻撃や核爆弾が国家の当然の権益と考えられてた時代からニュージーランドは反核国家であった。

 

フランスが南太平洋で核実験を行おうとしたらニュージーランドの「虹の戦士号」が投下予定地点の真下に行って「落とせるもんなら落としてみろ!」とやったような国である。

 

その後この船がオークランド港に戻った時にフランス軍諜報部によって撃沈され、ニュージーランドはフランスの公式謝罪があるまで国交を断絶した。また米国籍の核ミサイル搭載艦が共同訓練のためにオークランドに寄港しようとした時も核を搭載していることを理由に米国艦を追い返して実質的に米国と約8年国交を閉ざした。

 

このようにニュージーランドは小国でありながらそれなりに独自路線を築いている。今回のTPPについても、もし米国が大国の力を借りて無理押しするようならニュージーランドはすぐに離脱する。米国追従ではない国家なのだ。

 

「離脱なんて出来ないよー、だって紙に書いてるもん」なんて言っても国内で批准されない限り条約は効力を持たないのだから「すでに決まっては」いないのである。とくに現在のジョン・キー首相は長く米国で働いており米国人の発想がよく分かる。

 

そしてジョン・キーは同時にキーウィであるから自然を守るキーウィの考え方が理解出来る。キーウィは少々不便でも自然を大事にするのだ。そんな国家が「米国様」だからって素直に従うと思うだろうか?

 

国の大きさと個人の戦闘力は全く別物である。ニュージーランドはちっちゃな国家であるが個人的な戦闘力は非常に高い。だって「人は何でも出来る」って学校で学んでいるからそう簡単に諦めはしない。ただこれが悪い面に出てくるとあふぉーのグリーンピスなんて犯罪行動に出てしまうのだが・・・。

 

TPP問題は様々な利権が絡んでおり日本の農協のように「おのれのカネ目当て」で発言する連中が多い。そのような雑音が多すぎる上にこの問題は何が問題かって言えば「何も決まってないしだれも方向性が分からない」って事だ。

 

何も決まってない時点で多くの人間が自分の利権の為に遣って議論している。もう少し人類全体を考えた議論は出来ないのだろうか?と思う。

 

いずれにせよニュージーランドにとって農業は基幹産業であり輸出総額の3割以上を占めている。また自然を大事にする価値観の国である。基幹産業を滅ぼし国民の価値観を否定するような条約が、どうやれば国内で批准されるのか?

 

もちろん問題提起の方法としてキーウィ国民にもっと問題を理解してもらう為に記事を書くことはあるが、それはアジテーションであり「はいはい!今観ないと一生の後悔だよー!ほらそこのお兄さん、行ってらっしゃい観てらっしゃい!」と限定商品を売るようなものだ。

 

元ネタを当たるときは字面の英文だけでなく健全に疑問を持ちつつ「あれ?だってそんな事なったらどうなるの?」と二段階や三段階思考を使って読み取ればこの記事もその意味するところが見えてくる。



tom_eastwind at 18:35│Comments(0)TrackBack(0) 諸行無常のビジネス日誌 

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