2014年03月03日

帰ってきたヒトラー

帰ってきたヒトラー 上
ティムール ヴェルメシュ
河出書房新社
2014-01-21


出張後初めての週末は一切外出せずに自宅で過ごす。買いためた食料を食いつつ日本で買った本を読む。今回は「帰ってきたヒトラー」上下巻だ。

 

ヒトラーが現代に甦った。その記憶や思想をすべてそのまま残したままに現代に甦った彼は当初コメディアンとしてデビューするが戦前のように素晴らしい演説を連発して、いつの間にか政治家の仲間入りをするようになるのだ。

 

なぜ現代にヒトラーが甦ったか?その原因はこの本では全く問題にされてない。何故ならSF小説ではないのでタイムスリップのことをどうこう書いても本筋の鋭い文体を冗漫にするだけだからだ。

 

大事なのはもし今の時代にヒトラーが甦ったら「どうなるか?」という事だ。戦後60年過ぎた現在のドイツは今でもヒトラーに関する多くの禁忌があり法律で規制されている。まるでヒトラーが狂気の人物でありドイツ人すべてが騙されていたかのように。しかし事実はどうなのだろうか?

 

過去のヒトラーの足跡を辿りつつその演説を現在に移し替えてみて違和感があるだろうか?実は、あまりない。過去のヒトラーの時代も今の時代も本質的な部分は何も変わっていないのだ。

 

ヒトラーは人種に関するジョークを連発する。その中でも秀逸なのが下記である。

問「スペイン人とギリシア人が売春宿に行きました。さてカネを払ったのは?」

答「ドイツ人」

この意味は欧州の日常から離れた日本ではピンと来ないだろうからちょっと言い方を変えてみよう。

 

問「中国人が米国の新聞に慰安婦問題の全面広告を掲載して、韓国人が米国に像を建てました。さて金を払ったのは?」

答「日本人」

こうなると少しわかりやすくなる。戦後中国は日本の巨額なODAで工業を作り日本の技術移転で発展して今では日本を抜いて経済大国になっているが、その元金の出処は日本である。

 

慰安婦問題を捏造して新聞広告までやってるのにその国に今も経済援助を続けている日本。日本人が持つ日本政府に対する単純な疑問は、「なぜ日本を侮辱する国にカネを払い続けるのか?」である。

 

ドイツ人の心情も同様で上記のジョークはドイツ人からすればいつの時代も欧州の中でまともに働かず他国からの援助で遊び呆けている国を何故支援しないといけないのだ?という単純なドイツ人の疑問なのである。

 

敗戦後長い間遠慮していたが、ドイツもそろそろいうことを言うべきである、そういう空気が醸成されてそこに演説上手のヒトラーが国民の本音を代言するようになれば?

 

彼が戦前に使っていた情報媒体はラジオ、テレビ、新聞、そして演説であった。現代に甦ったヒトラーは最初はテレビを使いすぐにYoutubeを利用して自分の演説を放映して雑誌を活用して多くの議論を挑んだ。そしてウェブサイトを開設して常時ヒトラーの意見を述べるようになった。

 

「ルールは60年前も今も同じだ。ルール自体はけっして変わらない。」

 

そう、変わったのは媒体だが訴えることや訴え方そのものは何も変わっていないのだ。これはまさに時代がどれだけ変化しようが政治の本質は民衆の心を掴むことであり掴むためには民衆の本心を理解して彼らの望む方向へ国を導くことだ。

 

では?となる。ヒトラーが戦前の政治体制で彼だけが「例外的に異常」で「狂気の独裁体制」で「すべてを支配して国民を操った」と言えるのか?

 

現代ドイツではヒトラーに関する様々な制限がありこの本も他の形で発行するのは難しかったのだろう。唯一SF的にヒトラーを甦らせ、コメディアンとして出演させて、ジョークという形で少しづつその本音を出させていき、最後にはドイツ人自身の心に「おい、ほんとはどうなんだ?」という疑問を投げつける。

 

本日より会社文庫に掲載。



tom_eastwind at 14:38│Comments(0)TrackBack(0) 諸行無常のビジネス日誌 

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