2014年03月11日

NOTHING TOO LATE

1980年代の海外駐在していた日本人商社マンとかは英語力もあり個人としての外国人相手の交渉力もあってタフだったんだけどなー、そんな事を思いつつ昨日は地元最大手銀行のMigrantDep(移住部門)とシティのど真ん中で午前中たっぷりと初会議を行った。

 

いかにも本社部門の優秀そうな白人メンバー4人が向こうに座り、こっちがアジア人チーム3人であるがお互いの利害関係は事前会議でだいたい方向性を付けているので今日はお互いのチーム同士の自己紹介と日付を入れた具体的な方向性を自由討論の形で意見交換することだ。

 

同じクイーンストリートで仕事をしていながら直接会うこともなかったので、話の合間にお互いの背景をメッセージとして伝える。これが難しい。まさに平和外交である。

 

ハイ!こんにちは、うちはここ15年ほどこんな事をBNZ支店で今までやってきてね(ほら、はったりじゃねーだろうがよ、すでにお前んとこの支店にこれだけ仕事出してんだぞ)。そちらの部門は移民部門と名前を付けてるけど実際にはプライベートバンク部門だよね(いくら預けりゃプライベート管理に移れて、どんなサービスがあるんだ?)、どんなサービスを顧客に提供しているの?(ポートフォリオ、FA、このあたりもきちんと出来るの?)。

 

これに対してまるで役人のような話し方でボス(男性)が「うちは顧客向けに正確で緻密な仕事を提供して(お前に言われなくてもうちは出来てるんだよ)、ぼく自身FA免許持ってるし(俺も個人的にゆーしゅーだし)現場では」と隣に座る3名の女性スタッフを指さして「彼ら優秀なメンバーがそれぞれ顧客を対応しているんだ(スタッフの一人はキーウィらしい仕草で両手を持ち上げてにこっとする)から問題ない(心配すんな山猿、客連れてこいよ)」

 

てゆーふーな応酬である。もちろんこのすべてがお互いに素敵な笑顔と考える格好で机に両肘を置き顎の前に軽く手を組む姿勢で真摯に聴いてる雰囲気を醸し出し、笑顔の裏の前頭葉で「次にどんな質問をぶつけてやろうか?」という狙撃者の雰囲気などちらっとも見せない。

 

会議の途中からは段々質問(狙撃者)と会話(交戦)をする人が限られてきて誰がリーダーで誰が実務やってて誰がアドバイザーで誰が質問者の後ろに黙って座ってスナイパーの隣に座るスポッターのようにこっちの話に矛盾がないかどうかをチェックしているのが分かる。

 

今回が第一回ミーティングでありこの偵察部隊同士の威力偵察業務戦闘で相手の実力を測り合う。来週くらいにはまたミーティングを持ってお互いにどこまで何を出し合えるのか、何を言っちゃいけないか、何が相手から取れるのか等などを紳士淑女的な笑顔と握手の裏に隠しつつ交渉に臨むことになる。

 

こんなふうに書くとまるでマフィアの抗争ですか?なんて思うかもしれないが、基本的に西洋人のビジネスは「俺かお前か」であり日本人のように最初から「仲良く半分づつ」なんて発想は全くない。すべては勝者が総取りをしてしまう。だから最初の交渉で甘いことを言ってみたり相手に都合の良い事を言って間違ったメッセージを送ってしまうと後で大変なことになる。

 

西洋人の交渉は厳しい反面きちんとルールを守って戦えば最後は押し切られても“Fair Enough”と答えてくれる。その後も良い関係を保持することが出来てそれが次第に信用につながっていくのだ。

 

一旦彼らの内側に入ってローカルルールだけきちんと守っていればそれなりにビジネス仲間が増えてくる。それも実務的に協力して役立ってくれるチームが出来上がる。そしてこうなると強い。街に流れるビジネス話の裏情報を聞くことも出来るし様々な情報を裏で確認取ることも出来る。

 

電話一本やメール一本で様々な問い合わせも出来るわけで、もちろん相手からこちらに情報が流れてくることもある。

「おい、こんな日本人が来てるんだけど知ってるかい?」

「ふーん、直接はしらねえな、いいよ、裏取ってやるからそいつの事も少し教えてくれ」

そうやってこちら側の日本のパイプを通じて情報を取ってこっちの仲間に

「おい、そりゃヤバ筋だぞ」等などを伝えることになる。

 

逆に言えばきちんとした信頼関係を作るというのはこっちが相手のルールを理解して相手と同じくらいの交渉力があることをきちんとメッセージとして伝える事が出来て初めて構築出来るものである。

 

今日こんな事を書いたのは、最近日本の企業から派遣されてニュージーランドにやって来るビジネスマンの中で時々英語は出来るけど会社の看板外しては全く駆け引きが出来ないビジネスマンを観る機会が増えたからだ。

 

ほんっと、昔の海外駐在の商社マンなんてのは駆け引きも英語も出来る奴らが多かったんだけどなー。ぼくが1991年から6年間香港にいた頃の最初の2年くらいは住友商事のオフィスの一部を間借りして入居して彼らの仕事を請け負ってたから彼らの現場でやってる話をいつも聞いてたしイラクや中東、中国の山奥にまで入り込んでビジネスをやるのをずっと観てた。

 

それに比べると現在のビジネスマンは学生のようなぼさぼさの髪型から始まりスーツ姿なのに背中にバックパックを担いでみたり靴も磨いてない。僕は個人的には人は見た目が9割と思ってないが世間がそうなのだから世間に合わせるのも社会人の第一歩である。

 

そして会社の期待を背負って気負ってるのがよく分かるのだけど話に相手に通じるロジックが存在せずただ会社に言われたことをそのまま伝えるだけのメッセンジャーに過ぎず交渉にさえならない。聞かれた事の裏側を理解も出来ず「それでは持ち帰って検討します」たって、じゃああなたはここまで何の為に来たのかって話である。

 

だから現場で行われている会議や交渉がどういうものか、ここがニュージーランドという田舎のお人好しの国であってもビジネス現場はちょっと違うよってことを知ってもらいたかったので、ちょっと最近の会議の様子を書いてみた。

 

勿論こういう交渉は日本人の得意とするところではないが、だからと言ってこの街で使われているルールを守らずに日本式のルールを押し付けても通らないどころか話の通じない変な事ばかり言うビジネスマンだと思われてその後は話もできなくなる。ましてや看板を外したら誰も相手にしてくれなくなる。

 

蛇足だが、ぼくがこんな事を書くとまるで英語が出来るようだが、実際の僕の英語力はうちの社内で見ても下から数えたほうが早いくらい発音悪いし文法なんて年中間違ってるしその意味では使いものにならない。

 

ただ何故か伝達能力だけはあるようで相手に「おれは英語は上手じゃないけどお前の言ってる意味と言いたいことは理解しているしお前のロジックで考えているよ」ってメッセージだけはいつも確実に送っている。

 

そして例えここがニュージーランドで田舎の農業国とは言えどビジネスのロジックは英国に近いものがありそのロジックの根本にあるのが「死ぬのは奴らだ」なのだ。だから西洋的に「お前に殺されるほど甘くはねえよ」ってメッセージを送りさらに「それより俺と組んだ方が得じゃねーのか?」という東洋的メッセージを送ってこそユニークな交渉力になるのであって会社の看板などは最終的に役立たない場合が多い。

 

Winner takes all の英語圏ビジネス社会の中でそれでも相手と分前を共有しようよ、組んでパイを大きくしようよ、そういう姿勢を伝えること。20世紀後半の日本人ビジネスマンは何もないところからそうやって世界に広がっていってトランジスタラジオを売りウォークマンを開発してきた。

 

これからの日本はインフラと環境を世界に売り込むことが出来る。その時に外人との交渉が苦手とかやった事ないしーなんて言わず”Nothing too late” 何事も決して遅すぎることはないんだから。



tom_eastwind at 14:19│Comments(0)TrackBack(0) 諸行無常のビジネス日誌 

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