2014年04月09日

オークランドの物価 その4 格差社会の始まり

 昨日の続きです。

 

このような固定された格差はインターネットとコンピューターの発達など世の中の仕組み自体の激変が大きいがしかし長期的な視点で見れば大きな原因は教育であろう。

 

70年前であれば高等教育を受けずに15歳で卒業しても「ボーイ仕事」があった。いつもお願いしているタクシー運転手のキースは現在70歳過ぎで現役運転手だが彼がよく話してくれるのは彼が15歳の頃、とにかく何も考えずに次々とお店や会社のドアをノックして「ハイ!ぼくなんでも出来るよ、仕事下さい」というのが当たり前だった。

 

そうすると当時はどこの会社でも便利屋的な「ボーイ仕事」があった。実務的な能力がなくても社会の中で覚えていくことが出来た。ところが現在は世の中がネットとPCで合理化されてしまい「ボーイ仕事」がなくなり卒業時点で即戦力にならない若者に仕事はなくなった。

 

その為若者は中学や高校を出ただけでなんの専門性もなく社会に出ても仕事がなく失業保険で食いつなぎ生活保護を受けて毎日やることもなく街をぶらつき政府から金が入れば酒やマリファナを買い、金を使いきれば乞食になったりカッパライをしたりと非行化が進んだ。

 

とくにオークランド南部に行けば昼間でも車から降りたくなくなる地域がたくさんあり明らかにノースショアと人種が違うことが分かる。あの地域では警察も命がけである。いくら仕事と言っても身長180cm体重100kgくらいの酔っ払ったマオリと正面からぶつかれば、いくら彼らが銃を持ってないとは言え相当に危険である。

 

そのような地区には自然と同じような層の人々が集まって集団生活をする。そして彼らはいつの間にかギャング集団を作り同じ地域の敵対するギャングとしょっちゅう抗争をやっているのだ。

 

その地域で生まれ育った子供でも中にはしっかりした素質を持つ子供もいる。しかし結局兄弟や親戚や親の影響を受けて子供の頃から不良行為を繰り返していつの間にか良い素質は失われて単なるギャング予備団となってしまうのだ。

 

そのような環境で知性的な彼女を探すのは難しいから結局は自分と似たような環境の彼女を見つけるのだが、これまた酒やタバコやマリファナを共有する仲間になってしまい何も成長せず進歩せず15歳で子供を産んでまともに育てることも出来ずに子供を虐待するようになる。

 

本人が虐待しなくても親戚や親が「ギャーギャーうるせーんだよ、このクソガキ!」と言って暴行した挙句に殺してしまう事件が後を絶たないのもこの地域だ。

 

考えてみればタバコなど一箱2千円近いわけであり自分がもらう政府の手当のうち一体いくらがこのような嗜好品に消費されているのか?そういう事さえ考えようとせずにひたすら毎日の享楽に浸るのみの若者・・・。

 

自分が何か学ぶために、つまり自分に投資をするためにお金を使うのではなく単純に一時のきばらしだけでお金を使うようになれば彼に次の浮上の機会はない。沈んでいくだけだ。

 

こうやって数代にわたって貧困と無知と無教育がはびこってきた。そして彼ら仕事のない、やる気のない若者や大人を直撃する事態が現在オークランドで進行中だ。それが物価上昇である。

 

いくら彼らが安いスーパーで買物をするとは言え安さには限度がある。毎年5%程度の物価上昇は電気代やバス代など公共機関の値段も上昇させている。

 

そして真面目に働くキーウィからすれば「何で彼らのために俺の税金を使うのだ?何で俺の金であいつらがマリファナを買うのだ?」という健全な疑問が社会に定着し始めてきた。

 

そこで社会福祉も「実態に合った支給額」や「本当に社会福祉が必要か?」と言ったチェックが入るようになりオークランド南部のやる気のない人々は収入減となった。そうなると彼らは今までは南部の中だけで仲間同士の抗争やカッパライをしていたが、今ははシティに入り込んで来はじめている。

 

すでにシティでは以前は考えられなかったくらい一気にマオリやアイランダーの浮浪者たちの群れが道端に座り込みコーラの紙コップをぶらぶらさせて「小銭くれ」とやってる。これがまた困ることにそのような連中に金を恵むお人好しがいるから彼らがつけあがって更に多くの浮浪者が街に繰り出してくる事になっている。

 

もちろんオークランド市議会でもこのような乞食を排除する法律を作ったのだが何故かまだあまり活動実績を見ることが出来ないのはなにか他に理由があるのだろうか?

 

いずれにしても問題となるのはオークランドの所得格差が固定化し始めていくとニューヨークやバンクーバーのように乞食が増えて治安が悪化して犯罪が増加するという点である。

 

彼ら浮浪者だって十分な金があればいちいちシティまで出て来ることもないし他人の車を盗もうなんて思わない。自分がカローラを所有してるのに隣の家にカローラがあっても盗みはしないだろう。つまり社会に格差がなかったから経済犯罪も少なかったのだ。

 

格差は世界中で問題になっている。何も日本だけが格差問題を抱えているわけではない。世界が100年に1回の変化をしているのだと思った方が良い。オークランドは長い間日本のような格差の少ない社会であったがこれから格差が始まる。移住を考えるにしても自分が海外において格差社会で生きていけるか、考えた方が良い。

 

ニュージーランドに行けば自動的に幸せになれる、なんてことはあり得ない。



tom_eastwind at 13:51│Comments(0)TrackBack(0) 諸行無常のビジネス日誌 

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