2014年05月02日

政府の逆襲

昨日も少し書いたが各国政府による金融規制が急激に強まっている。これは日本政府がど〜のコーのでなくて世界全体の現象である。

 

1980年代から始まった市場原理主義により民間は強くなり政府はそれまでの国家プレイヤーの位置から審判の位置にシフトしてその審判も事前チェック方式から事後チェック方式に変わった。

 

その弊害としてリーマン・ショックなどが発生したが、自由を得た民間企業は「まずはやってみよう!」という英米人発想で次々と新しいアイデアを発明して世界を一つにしていった。

 

世界の市場は金融緩和やインターネットとコンピューターの発達、航空機の高速長距離化等でこの30年で急速に拡大して国境の壁はどんどん低くなっていった。まさにOneWorld(キャセイ航空も加盟してます)である。

 

金融の世界ではすでに国境は存在しない。政府がどれだけ追っかけてもおかねは世界をぐるぐる回り続けて一番税金が安くて一番使い勝手の良い国に移動するようになった。

 

人間も、個人に能力さえあれば自分が住む国を選ぶことが出来るようになった。30年前であれば誰がニュージーランドに移住しようと思っただろう?羊がたくさんいることは分かっててもそれ以外の情報が何もない状態では移住のしようもない。

 

また移住するにしても移動手段は?成田からオークランドにジャンボ直行便が就航したのがまさに1980年代初頭である。

 

ところが現在、ぼくの説明会に参加頂くお客様の半数はニュージーランドに行ったことすらなく、けれど移住を決め打ちしている。それはインターネットの発達で情報が豊かになったからだ。

 

ニュージーランドに渡航する前からすでにワークビザを入手して、なんて事も可能になった。

 

その結果として政府の立ち入る部分は少なくなり民間からすれば「さよなら政府、こんにちは世界」の状態が約30年続いていた。

 

これに対して国家は存在の危機を感じたのだろうか、金融と貿易は政府の城であるって感じで政府の規制が強まっている気がする。国家と言っても一つの組織であり、組織である以上自己保存本能が働いて自分の領域を広めようとする。

 

それが政府による規制であり規制を管理する当局が創設されて組織が拡大していく。今世界で起きているのは政府の逆襲ではないかと思う。今までは民間に任せてたけど、やはりダメじゃないか、おれたち政府がやるほうがずっと良いんだよ、ほら、そこどけ、選手交代だ、なんだかそんな声が聴こえてきそうだ。

 

もちろん国家や政府を強くする方法は国によって違う。そこは各国の国の生い立ちの事情があるだろう。

 

例えばニュージーランドは伝統的に社会主義であるから基幹産業である農業であればフォンテラ、ゼスプリ、アンズコなど元の農業公社が力を持っておりここは政府規制が出来ているから問題ない。NZから輸出する農作物のほとんどはこの3社が支配している。

 

また実際に農業分野に新しいプレイヤーが参入すると、彼らがフォンテラなどの組織を経由してビジネスを拡大するのは問題ないわけで、問題はフォンテラを飛び越して勝手にビジネス展開をする組織は国家が認めないよって事だ。

 

去年から問題になっている中国の企業がNZの農場買収をする事を拒否しているのもこの流れである。

 

そしてNZが慣れていないのは金融とサービス業である。この両方にいかに規制をかけていくかが現在の政府の目指すところである。実際にどのような規制をかければよいか分からないけどとりあえず何かしなくちゃって事でいろんな法律を作ってはその都度改正している。昨日言った法律の解釈と今日の法律解釈が違うなんてのはごく日常茶飯事で、同じ日に同じことを聴いても担当者によって全然答が違うってくらい今はまだ整理できてない状況である。

 

日本では政府がすべての業種の上に立つ日本株式会社を目指す、てか元々そのやりかただったのを1990年代の英米からの攻撃で金融ビッグバンなどやってしまったが、今後は政府がもう一度手綱を握りなおしていくぞって事だろう。今でも十分政府規制が強いのだが、今後は戦前や昭和中後期のようにびしびしいくぞって感じだ。良くはないけど意気込みを感じる。

 

この流れは時代の大きな潮流なのでそう簡単に変わることはない。少なくとも国境が実質的に無意味になる5年後くらいまでは。

 

今後ぼくらの生きる道は政府の規制の下で自分の意志を持たずに政府に言われた通りに黙って働くか、それともそのくびきを逃れて自己責任で生きる自由を選ぶか、ということになる。

 

この、自由を選ぶ選択肢は結構きつくなる。何故なら自分が独立国になることは現実的に難しく、やはりどこかの国家に帰属せざるを得ない。そうなればその国家からどれだけ良い生活条件を引き出せるか、逆に言えばいかに自分に魅力があるかを提示出来なければならない。

 

彼ら国家の持つ権限は国境を越えると発動出来ない。だからぼくらがここで考えるべきはいかにして国家から「自由になる権利」を勝ち取るかである。もちろん完全な自由は不可能だが一番住み心地の良い土地を選ぶ権利である。

 

その意味で永住権とは一箇所だけにしか住めない状況を改善して、必要ならどこの国にでも移動して生活するよ、なに、あなたの国の条件はその程度?じゃあいいよ、他国に行くからって言えるだけの力を持てるかどうかだ。



tom_eastwind at 14:46│Comments(0)TrackBack(0) 諸行無常のビジネス日誌 

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