2014年05月03日

あなたの年間労働時間は?

僕の住むノースショア(北浜)・グレンフィールド地区は天気の良い日曜日の昼過ぎになるとけっこう面倒である。窓を閉めると涼しい風が入って来ないし窓を開けるとぶっっっおおおおおお!って騒音が聞こえるからだ(笑)。

 

じつはこの騒音、草刈機の音である。天気の良い日曜日の午後になるとどこもお父さんが作業着を着て、ある人は草刈機を両手に持ち地雷発見機みたいに左右に振り回しているし、ある人は4輪車になった草刈機に乗り込み自分の庭を走らせて、窓を開けていると騒音と共に刈られたばかりの青い草の匂いまでやってくる。

 

ある意味のどかな田舎の景色である(笑)。

 

オークランドは人口150万人の街で南北に長く、ハーバーブリッジを北向きに渡ってから緑に覆われた住宅街が続く。一般住宅の敷地内であっても大きな木を切ることは許されず勝手に切ると罰金どころか「植え直し」を要求されることもある。

 

また道路は都市計画に基づいて最初から計画的に広めに作られている。幹線道路はグレン(谷間)の尾根沿いをうまく利用しており更に道路の横には十分な広さの歩道があってそこから個人の敷地になるがフロントバウンドリーと言うルールで敷地から6メートルまでは庭か芝地にしておく必要がある。

 

勿論敷地の左右も同様でここはサイドバウンドリーというルールで隣のうちから最低3メートルづつ空けるとか、裏庭でさえ一定の基準がある。

 

このような厳しい決まりがあるからグレンフィールド地区のうちの近くではまるで緑の森林の中に住宅がポツーンと建っている見える場所がたくさんある。中にはほんとに高さ10m位の自然木林に囲まれた行き止まりの住宅地などもある。それでも夜になるとお家がまるで緑のビロードの上に置いた宝石のように光を映すのでなかなかにキレイである。

 

さて、オークランドのビジネスマンお父さんたちの週末の仕事と言えば一番が草刈り、二番目がバービー(バーベキューの略)の支度、三番目が家族と遊ぶことだ。なにせこの国では仕事よりも個人や家族の生活が優先されるから、残業はないし週末は確実に2日休むし年休は一年で一ヶ月あり完全消化が当然の前提である。

 

ただその分シティで働くビジネスパーソンたちは地位が上に行けば行くほど忙しくなる。

 

シティの業務時間は通常9時から5時であるがキーウィ企業の場合朝8時位から仕事をしているのも極普通である。当社が930分出社にしているのは早朝の交通渋滞を避けるためと日本との時差があるためだ。

 

シティのビジネスパーソンは取引先とのランチでなければそのへんでテイクアウェイを買って30分程度でささっと片付ける。食事後はまたデスクに戻り(又は机の上のテイクアウェイのゴミ袋を隣のゴミ箱に放り込み)仕事を再開する。

 

こんな事書くと「へー、キーウィってもっとのんびり仕事していると思ったけど?」と疑問も出て来るだろう。そう、一般的にはのんびり仕事をしている人のほうが多い。

 

しかしこのシティ内部に限ってはそうではない。ニュージーランドで最も家賃が高く、高い家賃を払ってでもこの場所に居ることが効率的な、またはこの場所にいなければならない業種で働く人たちは通常のキーウィよりも相当なストレスで仕事をしているのだ。

 

そのような職場で働くビジネスパーソンたちであるが、夜は早い。5時過ぎにはとっととオフィスを引き払って自宅に向かい一直線で自宅に帰る。要するに朝早く来るのは夕方早く家族の元に帰りたいからだ。

 

このようにシティや首都ウェリントンの官庁街で働くビジネスパーソンは普段は大忙しであるがそれでも子供の学校の迎えを優先したり幼児を預けている親は早めに仕事を切り上げることもごく普通である。

 

実際にぼくのオフィスの隣にある駐車場では午後3時ころから月極契約の車が次々と出て行く。自宅に帰るのだ。何故ぼくがそれを知っているか?ぼくも午後3時には仕事を終わらせて自宅に帰るからだ(はは、笑)。

 

もちろん早く帰る分自宅に仕事を持ち帰るビジネスパーソンも多い。子供は夜の9時には寝るのでそれから机でパソコンを立ち上げて残った仕事を片付けるってことになる。

 

このようなビジネスパーソン達は皆年俸制度であり時間給で計算することはない。好きな時間に好きな場所で仕事が出来るし長時間労働ではなく年末の実績で勝負をすることになるのであるが、では年間で何時間働いているのだろうか?

 

まず1日の労働時間は9時から5時の8時間が平均であるが実際には昼食時間が30分あるので7時間30分だ。一週間で37時間30分の労働である。次に一年は52週であるがニュージーランドでは年休が一ヶ月あるので4週間引いて48週で計算すると年間で1,800時間になる。

 

もちろん管理職の場合は自宅持ち帰り仕事もあるのでもう少し多くなるだろうが、自宅に持ち帰ったとしても毎日1時間も2時間もすることはない。なので1800時間というのはそれほど外れた数字ではない。

 

仕事はきついけど残業がなくて週休2日で年休一ヶ月完全消化出来てて、その意味でぼくは「年間労働時間1,800時間」を実感しているし多くのキーウィビジネスパーソンも同様だろう。

 

あと労働時間とは別に通勤時間も大きな要素だ。ぼくの場合自宅の内ドアで繋がってるガレージで車に乗り込み会社の隣の駐車場に車を入れて自分のデスクに到着するまでに朝8時台の交通渋滞時間なら約40分。帰宅時は夕方の交通渋滞が始まってないので約20分だ。

 

これくらいの労働環境時間なら精神的にも肉体的にも疲れを持ち越さず健康衛生上も良い、さらに知らない他人にハロー!って言えて笑顔で話が出来るしきついジョークでも笑って言い返せる。

 

その意味で僕は日本に出張に行くたびに感じるのが東京のビジネスマンの疲れて苛立った顔である。朝早く電車に押し込められて会社に着くまで立ちっぱなしで1時間は極普通、会社に到着すれば早速仕事がたまっている。忙しい昼間を過ぎて夕方になっても残業が当然のように待っている。てか周囲も帰らないから自分も帰れない残業もあるだろう。

 

結果的に毎日12時間程度の残業をして、繁忙期だと最終電車で帰るとかもありだ。もちろんサービス残業もやるわけで、そうなると忙しいのに給料は増えないわ体は疲れるわで精神的に参ってしまい、土日も仕事で出社なんてなるとたまったものではない。

 

おまけにたまの休みに自宅の布団で疲れを取っていると家族が「ねー、どこか行こうよー」なんて、一体誰のために働いてるんだー!と怒りたくもなる。

 

普通の日系企業であれば年休の完全消化ってのはなかなか出来ない事でありたまにお正月やゴールデンウィークに旅行に行くと人だらけ、かえって疲れて自宅に戻るって事になる。

 

そういうビジネスマンって一体年間何時間働いてるのだろう?そう思って日本のデータを調べていたらこんなブログがあった。

http://blogos.com/article/85696/

 

ふーん、そっかー、年間2,300時間を超えているのかー。なんとなく実感で分かる。ということはキーウィビジネスパーソンと比較して年間で500時間、キーウィより約30%も余分に働いてるって事だ。てーことはキーウィが一日7.5時間働いてるとすると日本人は一日10時間半働いてる計算ですな。

 

おまけに年休未消化、週末のサービス残業、こういうのも入れると更に労働時間は長くなっている。一体誰のために働いているのかと思うけど日本の仕組みの中に居る限り長時間労働から離れることは出来ないのだろう。

 

それにしても日本政府、ホワイトエグゼンプションの焼き直しで労働時間規制撤廃をやってるけど、本来の趣旨であれば僕も賛成であるが今回の目的は違うと感じてる。

 

サービス残業を強いられている労働者が労働基準監督署に告発して会社がダメージを受けなくて良いように裁量労働制を導入すると見せかけて実はサービス残業を実態として法制化しようと言う動きに見えるのは僕だけではないだろう。

 

当初はもちろん年収いくら以上とか職種限定などと言ってるが一旦導入されれば精神は細部に宿り法律だけでなく通達一つでどうにでも変更出来るようになる。財界が望むのも 早いとこ労働基準監督署を骨抜きにして労働者をどうとでも使えるようにしたいというところだろう。

 

それにしても日本の労働者の平均労働時間は1,800時間を切ったなど、よくもそれだけとぼけた事が言えるのも、官僚自身が年間3,000時間くらい仕事をしているからだろう。

 

「おれたち最高学府を出た人間でさえ民間に比べるとずっと低い賃金で年間3,000時間くらい働きその多くがサービス残業なんだよ、居酒屋タクシーくらいで文句言いやがって民間のバカヤローめ!天下りがダメだと!ふざけんな、そんなの入省した時には聴いてなかったぞ、天下りあってこその今の安い賃金だろうがよ!勝手にルールを変えるんじゃねーよ、よっしゃ分かった仕返しだ、お前ら民間野郎、今後はどれだけ残業しても残業手当もらえねーようにしてやるよ、ほーら見ろ、労働時間規制撤廃だー!」

 

民(財界経営者)と官(エリート官僚)の息がピタッと合った瞬間ではなかろうか(苦笑)。



tom_eastwind at 16:41│Comments(0)TrackBack(0) 諸行無常のビジネス日誌 

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