2014年08月21日

Need to Know Basis

知る必要のあることだけ伝えるって意味の英語が上記。情報管理が進んでいる英連邦系国家であるニュージーランドでもこの意識は浸透している。

 

日本が個人情報保護などと言ってるが、あれって本気か?なんて思うのが、個人住宅の表札や電話帳である。あれえ?殆どの個人情報晒してるじゃん。かたっぽでは個人情報さらけ出しながらかたっぽでは個人情報保護なんて、うーん、どうなんだろうと思う。

 

ニュージーランドでは殆どの自宅に表札はない。たまに見かけると「ほ^、珍しいな」って感じだ。

 

またも選挙ネタだけど、今日はSISと呼ばれるNZの情報部、つまり非常に省略して正確にはちょっとちがうけど日本の人に分かりやすく言えば007の勤務先もやり玉に上げられてて、前回の総選挙の際に首相公務室でSmokeGunという暗号を使って敵陣の個人情報を探れと指示があったって!

 

まさしく007の国内版、人が死なないだけでやってることは相当にド派手である。ところがこの件をインタビューされたジョン・キーは「ぼくは君らマスコミに付き合ってたらいつまでも話し続けるしかなく君らはそれで本望だろうが僕は首相としての仕事があるんだ!」と怒りつつ、「ふざけんな、その時期僕は休暇でハワイにいたんだ、僕が何か直接に指示出来るわけない!」

 

それは事実であるが同時にSISの幹部は「首相公務室で指示を受けたので当然これは首相の指示だと思った」との話。もちろんこれはスキャンダル本の内容の一部である。

 

TVONEが緊急アンケートを取ったところ、この本を読んで「納得した!」と回答したのが10%以下、ネガティブと捉えたのがやはり10%以下、残りの80%は「くそったれ」、つまり無視である。

 

日本だとこんなスキャンダル本が選挙の5週間前に合わせて発刊されても「ええー、あの方がこんな事をー!」ってなるのだろうが、NZでは国民が「マスコミやネガティブ出版の嘘」をよく理解しているからいちいち真面目に捉えない。

 

てか政治や選挙って誹謗中傷の嵐だし本国の英国でもSunなど皇室スキャンダルネタをしょっちょうやってて、だからある程度の立場にいる人はゴシップの対象になるってのが国民の認識であり、けどそれには限度がある、信頼性は少ないってのも共有の認識である。

 

元々ジョン・キーが2008年の総選挙で初めて党首として戦った時が丁度リーマン・ショックのど真ん中だった。当時労働党のヘレン・クラーク首相は「リーマンショックを起こしたのは米国の金融機関、当時その最大手投資銀行で副社長までやってたのがジョン・キー、こいつは諸悪の根源だ!」と訴えた。

 

ところが選挙ではジョン・キーが勝った。何故か?それはジョン・キーが「そうだ、リーマンショックを引き起こしたのは米国の金融機関であり僕はそこで幹部として働いていた、だからこそこのリーマン・ショック危機を乗り越えるやり方を知っている」と主張したのだ。

 

この点キーウィが賢いのは政治センスが高い事であり「政治なんて所詮汚れ仕事、だったら高潔で無能なヘレン・クラークよりも悪い手口も知って汚れ仕事も出来るジョン・キーの方が経済再生出来るじゃん」と判断して国民党が勝利、そして実際に経済を復活させて今日の成長があるのだ。

 

現在もニュージーランド、特にオークランドの経済成長は先進国と比較してはるかに伸びており、毎年5万人がオークランドに移住しており毎年の物価上昇は肌感覚で約5%、土地の値上がりも510%、最低賃金も毎年35%上昇、普通のビジネスマンの賃金も同様に上昇している。

 

たしかに二極化が激しくなっているがこれはNZ固有の問題ではなく世界で同時に発生している現象であり日本でも米国でも同様に問題視されているが「大学は出たけれど」就職先がなくてマクドナルドでアルバイトするしかないなんてのは日本だけの現象ではなくNZでも同様だ。

 

だから二極化は進むものの、これはもう上側の波に乗れるか、その為にはどうすべきか、国家の構成員である国民の出来るだけ多くの人々を波の上に乗せられるか、その為にTPPであろうが何であろうが使える手段は全部使う、そういうハングリー精神を持った政治家を国民は選ぶ。

 

言葉は悪いが政治の場合に限定すれば「目的は手段を正当化する」である。そして国民はジョン・キーを選んだ。

 

ぼくら日本人の目からすれば「ここまでやるか?」と思う時もあるが、これは話は飛ぶが本国である英国では現在街角のあちこちにカメラを設置した「監視社会」になっている事実がある。

 

政治一流と呼ばれている英国とその元植民地であるニュージーランドも常に現実に目を向けている。どんなキレイ事を並べても世の中の現実問題は解決しない。監視をする、情報管理をする、知る必要のある人に知る必要のあるだけの情報を提供する、そういう文化が世界で初めてスパイを養成して19世紀の英国の繁栄を築いた。

 

例えばアラビアのロレンスって映画ではカッコ良さそうだが、あれは単なる軍事スパイである。またアフガニスタンとの戦争に負けて中東の土地を去る際も出来るだけ地域紛争が起こるように国境線をわざと作ったのも英国である。

 

その意味で英国は確実に政治一流なのだ。

 

今回の選挙はまだまだ何が起こるか分からない状況が続いているが、日本のような選挙カーで怒鳴ってみたり騒いでみたり挙句の果てに奥さんが「主人を男にしてやってください!」なんて泣くような選挙よりもずっと現実性を感じる。



tom_eastwind at 07:40│Comments(0)TrackBack(0) 諸行無常のビジネス日誌 

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