2014年11月11日

アベノ使い方

APECに合わせて日中首脳会談が約3年ぶりに行われた。これをもって日中がいきなり仲良くなることは“絶対に”なく、まずはお互いが抱えてる問題の解決策が相手の手札にないのかを見定めることだろう。

 

勿論こういう交渉だから内容が正確に外部に発信されることはなく当然多くの秘密合意事項があるので市井の民間人が細部を考えてもしょうがない。

 

ただ全体的な流れとしては以前安倍首相が韓国大統領と会った時に相手は笑顔も見せずのかなり失礼な態度を取った事で韓国内で問題を抱えているのが分る。笑顔が返せない不自由さは政治家がマスコミや民間に縛られてるのがよく分るからだ。

 

これは中国も同様なのだろう、挨拶の際にぎこちないのは写真の雰囲気から伝わってくる。これは習近平の中国軍部と江沢民に対しての気遣い、つまり「立場弱い」だろう。

 

それに対して日本では政府がマスコミを支配し民間だって笑顔大好き、少々嫌な奴でも一応笑顔って習慣があるから、笑顔で両国大統領に接する安倍首相の印象は悪くないはずだ。

 

日本では中国に進出している経済界が何とか中国とよりを戻したい。てか最近大手企業が次々と法令違反で莫大な課徴金を取られている。

 

だったら中国から出れば?という話であるが、今まで長期間投資をして来てビジネスインフラも出来上がっているのにいきなりゼロには出来ない。

 

なので10年スパンでどうなるかは別として「社長、今は中国と仲良くしてください」なのだろう。

 

ただ安倍首相としては今は中韓と急いで手を握る必要もない。むしろ東アジア沿岸でまるで真珠のように繋がってるASEAN諸国と手を組むほうが余程良い。親日だし中国ほど無茶はせず特にインドネシアとマレーシアは好意的であるからこれを利用しない手はない。

 

そこで安倍首相としては中韓に対しては比較的余裕のある交渉が出来る。米国から「何やってんだ」と言われても米国だって東北アジアの現状をどこまできちっと把握しているのか?

 

米国は難しいことは考えてない、同盟国は仲良くしようぜ程度だがその本音は米国軍が韓国から撤退するから後は日韓でよろしくねだ。元々在韓米軍は数年前から「おれたち出てくよ、あとはそっちで指揮権取ってね」と言い続けそれに対して日頃「米軍出てけ!」なんてデモをやってた韓国が「やめて、出て行かないで!お願い、ここにいて」とやったわけだから話がややこしくなった。

 

日本からすれば防衛戦は日本海と対馬である。そして沖縄。まだ米国の核の傘の下にいるのだから軽武装だけど、いずれ米軍が去った後の不沈空母をやるつもりなんだから中国と正面に構えた「中国包囲網太平洋不沈空母艦隊」が日本の役目であるのは明確だ。核武装もある。

 

今回の日中首脳会談から感じるのは「おお、やっと形になったな。これで日本の不沈空母が確定したな」ってことだ。良い意味でも悪い意味でも。さ、いよいよきな臭くなるぞ。良くも悪くもあるが前政権のような糸の切れたタコでないだけしっかりしてて、ましだ。

 

今回の交渉で面白いのは、日本側も中国側もマスコミはお互いに「妥協しすぎだ、交渉に負けた!」という意見が目立つことだ。面白い、両方共敗ける交渉ってあるのか?

 

無責任な民間人は相手の政府が主張していることを全く理解せずとにかく自国政府が交渉の当初に紙に書いてた事がひとつでも通らなければ「負けた!」という。

 

日露戦争におけるポーツマス条約と同じで、まさに無責任なマスコミが新聞売るために調子良い事を書いて、日頃政治に全く関与もせず考えもしない連中が夏場のプロ野球みたいに勝った負けたと叫んでるだけの「子供の遊び」である。問題は彼らが選挙権を持っていることだ。

 

こんな事をマスコミが書き国民でも知識層と呼ばれている人々が一喜一憂すれば、まさに政治三流国家でしかない。

 

生きるとは常に使ってはいけない武器である「殺し」を前提とした妥協である。ぎりぎりで妥協が必要だ。妥協しなければ周囲に「殿、乱心召されるな」である。

 

しかし試合場にいない人々にとっては関係ない、100%しか正解はないんだよね。交渉してる相手側にも自分と同じような人が数億人いるとも考えずに。

 

冒頭にも書いたが僕ら市井の市民は政治家ではないから本当は北京で何が決まったかわからない。けど少なくともその雰囲気はしっかりみてれば分ると思ってる。

 

今回は安倍さんの戦略勝ちではないかな。何せ玉虫色ってのは日本の得意分野だ、それが合意文書に乗っかったってのは日本側の交渉力だと思うし、今の習近平が日本を必要としていることを日本政府が読み取ってるからだ。

 

僕らも、安倍を好きかどうかではなく、少なくとも小泉以来の安倍をどう使うか、それを考えるべきだと思う。

 



tom_eastwind at 06:17│Comments(0)TrackBack(0) 諸行無常のビジネス日誌 

トラックバックURL

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔