2014年12月10日

KYC 昭和は遠くになりにけり

昨年のG20以降、どこの國も連携して「大きな政府」として国家管理体制を取り始めて自国民が世界のどこにいようが税金を取る仕組み作りに忙しい。

 

昨日は地元銀行の国際業務担当責任者とのミーティングだったが、彼らもアメリカ様から命令されてNZで新規口座開設をする人すべてに「米国との取引や居住歴」の提出を要求付けるようになったってぶつぶつ言ってた。米国では米国籍を離脱した後でも10年間は課税するなんて離れ業をやっている。これも米国の国力が今だ強いからだ。

 

日本では出国税が話題に上っておりいよいよかーって雰囲気が広がっている。ぼくが初めて出国税の話題を書いたのはたぶん3年くらい前だと思うが当時は「お前バカ?」呼ばわりされたものだ。何時の時代もそうだったから気にはしないが(笑)。

 

そして今ニュージーランドではテロリスト対策と称して“Know Your Client”という仕組みが導入された。マネーロンダリング、組織犯罪などを防ぐために銀行が企業を対象に口座開設をする際に開設理由を聴く。更にその口座が海外の投資家と関係があると聴いた場合、その場で口座開設を断る。

 

例えばBNZでは去年までなら支店レベルですぐに口座開設出来たのが、今は開設する場合は銀行法務部の人間とテレビ電話で話をする。話の内容が彼らにとって不自然(つまり馬鹿だから理解出来ない)と感じたらその場で「あ、すみません、お断りします」だ。

 

つまり世界の大きな流れは「自国民から税金を取る」、「たとえ外国に行く時でも取る」、そして「国際テロと戦う」の3つである。

 

事の起こりの一つは2008年のリーマン・ショックで、それまで投資銀行業務で大儲けしたバンカー達が銀行の借金だけ国民に押し付けて自分たちは太陽の照るタックスヘブン街に引っ越した、大金を抱えて。

 

そこで銀行性悪説が出て来て、だから銀行は自由化をやっては駄目だ、政府が徹底的に規制すべきである、正悪説を基本としてって事になってKYCが出て来た。

 

そしてイスラム国家の台頭である。世界に散らばったイスラム原理主義者が様々なルートを使って世界中の金をイラクやアフガンに送り現地ではその金で欧米、ロシア、中国から武器を買いアメリカ人を殺す。

 

豪州ではすでに相当数のイスラム系オージーがシリア、イラクに行き軍事訓練を受けて殺し合いに参加している。英国系イスラム原理主義者が白人の人質を殺したのも有名な話だ。

 

実際は一番の悪役はサイクス・ピコ協定を結んだ英国なのだがそういう「原因」は棚に上げてとにかく今起こっている「結果」をイスラムにかぶせているのだから、そりゃイスラムからすれば怒りカックラキンである。まさに鬼畜米英ってのを翻訳献上したいくらいだ。

 

しかし、だからと言って今頃そんな事言っても時効でしょ、てか英国の策略に乗っかって国家分断されたあんたらの祖先も情けないよねって話である。

 

そんな事より今からでも遅くない、自分たちの国境を自分たちで見なおして内乱の起こらないような昔の国境に戻したり政府を廃止して各部族ごとに戒律を持って生活すれば争いの多くはなくなるわけだ。

 

戦争すると必ず儲かるのが兵器産業でありそれは欧米中ロの兵器産業からすればお得意様である。何のことはない、イスラム人が欧米で働いて得た収入が中東に送金されてその金で欧米製の武器を買い欧米の兵隊や民間人を殺しているのだ。全く死の商人とはよく名づけたものである。

 

僕から見ればどっちもどっちの戦いだが、問題はそれに全く関係ないぼくのような日系キーウィまで巻き込まれるって事だ。

 

銀行の規制強化により海外送金がものすごく締め付けがきつくなり少額の送金でも色々聞かれた挙句に断られてみたり、移住目的で口座開設をするにも山ほどの書類を(大体3cm程の厚さの書類なので山ではないか)要求されて質問の受け答えに失敗したら口座開けない。

 

ほんとにまあ昭和の時代が懐かしいって話だが(笑)とにかく何するにしても誰よりも先にやらないと、とろとろやってるとあっという間に規制かけられて何もできなくなる。

 

昭和といえば実は最近おもしろい案件を数件扱っている。1980年代後半のバブルからバブル崩壊後あたりにかけて表に出ないまま結構な額のお金が海外に出て行った。

 

当時は送金規制もうるさくなく外為法があったけど腹をくくった人々はえいや!って掛け声をかけたのだ。そのうち一部はまだ見ぬ国ニュージーランドにもやって来た。そのお金は誰にも知られぬまま20数年様々な形で膨れ上がっていった。

 

そして今その投資家はそろそろ鬼籍に入るようになり、残された子供が亡くなった父親の資産を整理してたら「何じゃこりゃ?」ってよく分からない英語の不動産書類が出て来たのだ。

 

相続税は時効が基本5年、実際は7年が適用される。所得税も同様の決まりがある。あ、一つ覚えておくといいのが相続税法と所得税法はそれぞれに違う解釈があり相続税法で逃げたと思っても所得税法で補足される事があるのでご注意。片方だけ知ってても意味は無い。

 

さて銀行の送金書類は7年間保管されるがそれ以降は基本的に個人が特定されない限り調査されようがない。倉庫の奥にマイクロフィルムで眠ってるだけだ。20年以上前に隠された宝ですな(苦笑)。

 

そして僕が受けた仕事は宝探し(笑)。こんな仕事もやってみると面白い、隠された当時のいろんな事が分かってくるからだ。そうか、この人はこう考えてたんだ、こうやって何とか家族を守ろうとしていたんだ、会ったこともないその父親の気持ちがよく分る。

 

この国では本人名義のまま死亡した場合、不動産は裁判所によって凍結されてEstateとして扱われ弁護士が被相続人の遺書に従って処理するのだが遺書がない場合は裁判所に告訴して自分が正式な受取人であることを証明する必要がある。

 

この手続だけで最低半年はかかるが、親からすれば子供のために最後に残した資産なのだろう。しかし資産の存在は表に出せない。言い出せないまま父親はあの世に行ってしまい、あの世から子供に「あのよー」って声かけても届かない(笑)。

 

お子さんはどこに相談していいか分からず当社のような何でも屋に問い合わせしてくる。昭和の匂いのする案件を扱いながら今の銀行規制を見つつ「昭和は遠くになりにけり」と思った1日でした。



tom_eastwind at 20:49│Comments(0)TrackBack(0) 諸行無常のビジネス日誌 

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