2015年08月20日

キングの身代金

パソコンデータ人質誘拐事件、これからはこんな事件が増えるんだろうな。昨日弁護士事務所の刑事法担当弁護士に聴いたところ、僕のケースでは犯人が具体的にカネを要求しているので一発で「脅迫罪成立」。

 

冗談では済まなくて犯人は禁錮刑は確実。刑務所にどれだけ入るのかは実際に実行した内容で変わるが弁護士君はっきりと「これ、この国では冗談じゃすまないよ」との事。本人が日本にいようがニュージーランドにいようが関係ない。両国の警察が連絡を取り合い犯人探しをすることになる。明日はまた関係者と会う予定。

 

確かにこの国は犯罪フレンドリーで、車上荒らしや空き巣などの軽犯罪は殆ど「教育が悪い、政府が悪い」となる。何せ司法は社会主義者の拠り所であるが、確信犯的な脅迫などの犯罪については厳しく対処する。

 

21世紀になりインターネットが発達すれば社会人の多くがネットと繋がったパソコンを持つようになり、その内部には次第と個人情報が積み上がっていく。

 

ある日どこかのハッカーが「誰でもいいや、とにかくやっちまえ」ってことで年金保険機構を狙って多数のメールを送り込む。そこに馬鹿が引っかかってウィルス侵入。これで数百万人の個人情報が漏洩。

 

これなどは全体責任であるから機構からすれば「ごめん」で済む。しかしこれがもし誰でもいい個人を対象として狙い撃ちされたら?

 

「キングの身代金」は1959年に発行された87分署シリーズの一冊である。作者はエド・マクベイン。こ洒落た文体で読みやすく僕は日本に住んでた時は全巻持って楽しんでた。

 

ある時お金持ちの家の子どもとその使用人の子供が遊んでいたら、一人が誘拐された。誘拐した方はお金持ちに電話して「子供を誘拐した、カネ払え」となる。ところが実際に誘拐したのは使用人の子供。そしてお金持ちの手元にある現金は明日の取引の為に絶対に必要で、この取引に失敗すれば会社が潰れる。

 

使用人はお金持ちになんでもするからそのカネを貸してくれと懇願するがお金持ちとしては自分の子供でもないしカネを渡したら自分が倒産する。

 

誘拐犯からすれば「こうなったらもう誰でもいい、とにかくあの金持ちに払わせるんだ」と脅迫にかかる。

 

事件はそこから展開するのだが日本でも「天国と地獄」というタイトルで黒澤明監督により映画化された。

 

誘拐犯からすれば誰を誘拐してもカネになるならどんな子供を誘拐しても政府に身代金を要求するとかあり得るわけで、面白い着想だなーと思った次第である。

 

そして時代は21世紀になる。誘拐そのものは重犯罪として半端なくなり費用対効果が合わない。

 

ところがインターネット経由で他人のパソコンに入ればだれでも良い、その個人情報が手に入る。殆どの個人はパソコンの中に他人に知られたくないデータを入れてるだろう。その情報をネタに脅迫するのだ。払えそうな金額を想定して個別に身代金を見積もって裏ネットで買った口座に振り込ませる。

 

その情報自体は誘拐犯にとって何の価値もないがパソコンデータを誘拐された方からすれば大変な騒ぎである。ウィキリークスの世界だ。

 

今はまだパソコンデータ誘拐罪という特定の法律はなく電子情報なんちゃら法一本だが、個人情報保護は21世紀における大きな問題になるだろうから、いずれ大きな事件が発生すれば現在の「振込詐欺」と同様に厳しく対処することになるだろう。



tom_eastwind at 19:52│Comments(0)TrackBack(0) 諸行無常のビジネス日誌 

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