2015年10月01日

ビッグデータ・コネクト 藤井太洋

隣で地雷を踏んだ奴がいた。ドッカーン!丁度今日入った情報で分かったが、やばいぞ。僕は現場で仕事をしているのでこういう現場での生々しい話がそのまんま入ってくる。一般世間には絶対に公表されない。

 

普通にニュージーランドで生活をしている人からすればあり得ないような話だがニュージーランドってのは天国でもなければ極楽でもない。ビジネスというカネが動く場所では人と人がぶつかり合い時には殴り合いになる。それが地元キーウィ同士だと遠慮なしにボコるから、隣で見てるこちらからすると「あーあ、どうすんだ、でもまあ俺関係ないもんね」て感じだ。

 

毎日毎日現場で仕事をしているからこんなネタが集まるわけで、だから飲み会での話にネタは尽きない。特に日本在住のお客様からすれば地球の裏側のちっちゃな島国でそんなことがあるんだー、とびっくりされる。

 

さていよいよ日本ではマイナンバー制度開始だ。本来なら合理的な制度なのだが何せ扱うのが日本政府でしょ、やっほー!としか言いようが無い。

 

ビッグデータ・コネクトの中でも刑事が個人情報を調べるのに当該地の役所に電話して12桁の番号を確認、そこから出身学校、銀行口座、最近借りたレンタカー、ガソリン入れた場所、なんてのが出てくる。要するに丸裸だ。(正確には小説内では違う場所に書かれているがネタバレ防止の為=文責筆者)

 

サイバー犯罪対策のプロ刑事がファイル交換ソフトみたいなのを作ったと思える人物を逮捕して尋問するところ、から始まらない。終わったところから始まる。

 

文体が面白い。最近この文体を見かける、なんてか最後の部分を書かずに次の章に移り「前の部分の残りは読者、お前考えて読め」的なんだけど、これはやり過ぎると筋書きが読めなくなり嫌味になる。また本屋の入口に立つ新しい読者を遠ざけることになる。

 

その意味でぼくは「お前読め」は読者層を増やすという意味ではあまりお勧めではない手法だと思う。だけど個人的には新しい書き方でありこっちに考えさせるから面白いと思うので冒頭に面白いと書いた。でもって結果として面白い。

 

次の章に行った時に「あ、よかったねー」とか作家の作った世界に引き込まれる心地よさがある。

 

滋賀県で起こった誘拐事件で犯人の要求は間もなく開設される住民情報管理センターのサービス停止。誘拐されたのはそのシステム開発を請け負った会社の社長。

 

読み物としても十分に楽しめるが時期的な事を考えていたのか、まさにマイナンバーから紐付けられた個人情報がすべてネット上で管理されてビッグブラザーがあなたを見つめている、それを分かりやすく説明してくれる一冊だ。

 

マイナンバー制度や仕組みを理解するのは大変でも文庫本として読めば分かりやすい。お勧めの一冊である。

 

http://www.amazon.co.jp/ビッグデータ・コネクト-文春文庫-藤井-太洋/dp/4167903288



tom_eastwind at 17:26│Comments(0)TrackBack(0) 諸行無常のビジネス日誌 

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