2015年10月16日

お上は雇用の流動化がお嫌い

ある経営コンサルタントが安倍政権の「一億層活躍省」に絡めて45歳以上の人々の雇用の流動化を活性化させることが重要と主張している。

 

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特に雇用の面では、雇用の流動化が進んでいないため、中高年になってから仕事を失うと、どんなに有能な人でも希望する職に就ける機会が激減し、その結果生活が困窮してしまうといった、構造的な雇用リスクを抱えている国でもあります。

 

中高年になってから何らかの事情により職を失った人にとって、日本は先進国の中でも最も冷淡な国のひとつであるといえるでしょう。

http://blogos.com/article/139452/

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この人にかぎらず日本の雇用の流動化が進んでないのはよくない、流動化出来るようにすべきだという人たちの視点はいつも「自分たちの視点」からなのだ。

 

ところが相手の視点に立っていないから何時まで経っても問題は解決しない。彼らが何故このような制度を作ったのか、そこを理解する必要がある。

 

相手の視点とは?それはこの戦後社会を作った日本の官僚体制である。彼ら東大法学部卒は自分たちの先輩が創りあげた素晴らしき日本社会をこれからも継続させて後輩に渡すのが仕事である。

 

彼らの根本にあるのは国家社会主義である。米国に押し付けられた民主主義も適当に改ざんして自分たちの都合の良い仕組みに作り変えている。日本社会を統治するのは日本政府と官僚であり経済においては日本株式会社がすべてを決める。

 

株式会社の経営陣は官僚次官会議だ。省は会社で言えば取締役。ここまでで国策や政策が決まる。でもってその下に実働部隊として例えば三菱重工が出てくるがここの社長は日本株式会社の中ではヒラの部長である。内部及び下に対しては絶大な権力を持つが、上や外に向けては大した権限はない。

 

ましてや三菱重工の部長など日本株式会社では課長だ。つまり大企業の社員などは下から見ればとても偉く見えても上から見れば使い捨てのコマなのだ。

 

日本企業は大手企業を頂点としたピラミッド型になっている。その組織で社員を徹底的にこき使う方法。それは首になることを恐れさせて死ぬほど働くことだ。その為には組織を飛び出て転職とか起業とかをすれば悲惨になるぞ、この組織を出ても拾ってくれるものはいないと理解させることだ。

 

その理解は簡単だ。実際に生け贄として片道出向や追い込み退職させられた同期の話など新橋ガード下の焼き鳥屋でサラリーマンのネタになり組織全体にあっという間に広がる。

 

「やべえな、この組織にしがみつかなくっちゃ、一生懸命働こう、サービス残業厭わず上司にヒラメ」である。特に大企業になればなるほど頭が良くて計算高いからその傾向が強い。

 

つまり日本にはびこる残業や滅私奉公はお上が下々を強制的に働かせる制度なのだ。大学を卒業して会社に入り組織で働き、同時に組織を出たら使い物にならない経歴を作り上げ組織に縛り付ける、実によく出来た制度なのだ。

 

だから今回もお上が一億総活躍なんて言ってるがそれは雇用の流動化は含んでいない。お上が望まないかぎり何も変わらない。お上は流動化はお嫌いなのだ。

 

普通の人々は自分が置かれた立場からしかものが見えない。当然である。しかしそこに違う視点を加えて見れば今自分が置かれた立場が一時的なものなのか構造的なものなのか、世の中が何故こうなっているのかが見えてくる。



tom_eastwind at 12:49│Comments(0)TrackBack(0) 諸行無常のビジネス日誌 

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