2015年11月11日

市民権返上

ちょっと長くなるけど記事

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2015 10 31 Wall Street Journal

 米国の市民権以上の特権は世界にそうあるわけではない。それなのに、なぜ米国人による市民権の返上が過去最高に達しているのだろう。米財務省は今週、今年7月から9月までの3カ月間に四半期として過去最高の1426人がパスポートを返上したと発表した。このペースでいけば、年間の返上数は過去最高だった昨年の3415人を大幅に上回る。

 ジョージ・W・ブッシュ氏が大統領だった時代までは、パスポートを返上する人は年間でも480人程度にすぎなかった。ところが2010年に、連邦議会とオバマ大統領が外国口座税務コンプライアンス法(FATCA)を成立させた。この法律は脱税取り締まりを目的としたものだが、法律を守りながら海外で暮らす約800万人の米国人に無理難題を強いている。

 FATCAは外国の銀行、証券会社、保険会社などの金融機関に対し、米国人が保有する口座の資産や取引の詳細な記録を米国内国歳入庁(IRS)に報告するよう義務付けている。米国人従業員が管理する法人口座も対象だ。金融機関が応じなければ、IRSは米国で発生した取引に30%の源泉徴収を課すことができる。多くの外国企業が、こうしたリスクや順法コストを突き付けられ、米国人顧客との取引をやめる選択をしている。

 その結果、銀行を利用できない在外米国人が増えているのだ。もちろん、富裕層、つまり民主党が非難している脱税しかねない金持ちのことではない。富裕層よりはるかに影響を受けやすいのは在外米国人の大多数を占めるビジネスマンや英語教師、弁護士、退職者である。FATCAに対応するためのコストがかさむため、ささやかな資金しかもたない彼らは金融機関にとって魅力のない顧客なのである。

 FATCA導入以降、在外米国人は社員やビジネスパートナーとしても以前ほど魅力的ではなくなった。米国人が利用する口座が政府の監視下に置かれるからだ。監視するのは米国政府だけではない。米国政府とFATCA関連の情報共有に関する合意を調印した100を超える国の政府も口座を監視する可能性がある。

 ブラジルやシンガポール、スイスなど世界各地の重役ポストの候補に挙がった米国人は経営トップから、米国の市民権を放棄するよう求められ、それに応じられなければ昇進を諦めろと言われている。

 そういうことなら市民権の放棄が増えても当然だ。英ケント大学が今年実施した調査によると、在外米国人の約31%が市民権の放棄を検討したことがあると回答した。その理由として、報告義務の増加、極めて厳しい罰則への不安、銀行口座を持てなくなる可能性が挙げられた。市民権の返上に2350ドル(約28万円)の手数料が伴わず、国外転出時に保有資産に課せられる税金がなければ、間違いなくさらに多くの人が返上を検討しているだろう(市民権の返上手数料は昨年、450ドルから引き上げられた)。

 この数千人の元米国人は政治的な理由で市民権を放棄したわけではない。しかし、彼らを見れば、租税政策や規制政策がいかに米国経済全体を害しているかが分かる。市民権を放棄する米国人1人ひとりの後ろに、米国人の企業家とビジネスをしたり米国企業に投資したりすることを拒否する多くの外国人がいるのだ。これは全ての米国人が考えなければならない問題である。

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ここ数年米国からの移住者が増えている。プライベートジェット機でAucklandに飛んできて弁護士事務所で「おい、10億円で永住権取れるんだろ、ビザくれ」である。何が起こっているのか?それは富裕層にとって米国が住みにくい国になっているという事だ。

 

米国籍を持っていれば米国政府が守ってくれた20世紀はもう終わった。今は海外旅行に行ってもビーチにいると米国籍だからとテロリストに狙われる。ニューヨークのど真ん中に高級アパートを持っててもいつ自爆テロに襲われるか分からない。

 

そんな時の逃げ場所として北半球の大都市から最も距離的にも政治的にも経済的にも離れているニュージーランドが選ばれてきた。

 

しかしここ1年ほどは戦争やテロだけでなく米国民であるだけで重税を課せられる仕組みから逃れるためにニュージーランドの永住権を取得する人が増えている。増えていると言っても年間100人程度であるがこの数はこれから確実に増えていく。

 

ニュージーランドという国の位置付けは独特である。英連邦の構成国であり米国が主導したエシュロンという世界的電磁的スパイ基地を持ちながら(独仏露中も入れない)米国に対しては毅然と接し1980年代には米国の核搭載軍艦の入港を停止させて米国との外交を実質的に6年ほど叩ききった国である。

 

その後もヘレン・クラーク首相が公約で新機種入れ替え時期にあったNZ空軍の迎撃戦闘機部隊を撤廃するってやって選挙で勝ってほんとに迎撃部隊を廃止した。パイロットはオーストラリア空軍に転勤、機体は鉄骨工場、戦闘機を買ってもらえる予定だった米会社は激怒、在NZ米国大使が更に激怒したが、それでもNZはやってのける。

 

1988年、僕が偶然移り住んだ国であるが、この国はほんとに面白い国である。英連邦の一員であり更に最も人口が少なく経済も小さいのに自立自存して米国に平気で反発している。

 

僕はアジア人=日本人傍観者としてこの国を観ているが、そっか、英連邦からしても逃げ場所になってるんだなって実感する。

 

英連邦内部ならばどこも英語が通じるし法律も読める。だったらNZで牧場でも買って家族を住まわせて自分は自家用ジェットでロサンジェルスで仕事すりゃいいやって話である。

 

実際にジェームズキャメロンはウェリントンの南部に牧場を買って家族を住まわせ自分はウェリントンのウェタ撮影所とロサンジェルスを往復している。

 

21世紀はますます国境が低くなっていく。目の前に大型トラックが暴走してくる。前を観ている人は避けるがトラックという世界の激動に気づかないのは足元の毎日の生活だけに視野狭窄になっている人々だ。



tom_eastwind at 17:44│Comments(0)TrackBack(0) 諸行無常のビジネス日誌 

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