2016年02月02日

東京の空

ビルがデカイ。薄暗い雲の下に広がる高層ビル群。この街は「地権」魍魎なんだろうな。

 

去年から日本の現役社長と話してて感じたのは東京の魔物さである。ホテルから見える六本木ヒルズ、防衛庁跡の開発。

 

これなどはまさに様々な業界を横断した利権である。土地を出す政府、政治家、防衛利権、大手建設会社、下請け、それぞれ魔物のような連中が東京の夜のあちこちの暗い店でごそごそと情報交換をやっている。

 

この街は政府支配層から始まり次々に情報層が広がっていく。裏の繋がり、よく言えば学閥とか会社閥とかが順々に下に降りていく。何かその空気が「匂い」である。

 

地頭の良い連中の集まりとかではなく、子供の頃から机を並べて相手と付き合いお互いの事をよく理解している連中の集まりだ。

 

たぶんそこには地頭のよい企画担当と頭は悪いがよく働く労働担当とか根回し上手とかいるのだろう。仲間内で仕事を分担して世代を越えた信頼と忠誠とか誠実があるから実質的に一つの組織である。

 

ホテルのバーでパソコン開いて仕事してると何だか雰囲気のおかしい、どう見ても昼間のサラリーマンではないような人々が頭を突き合わせてごちょごちょ話している。

 

ある時ぼくがバーから見える改装された庭が綺麗で写真を撮ったところ、フラッシュがたかれて窓際に座ってたガラの悪そうなおっちゃん達が写真に入ってしまった。

 

おっちゃんはとっさに目の部分を手でふさぎこちらにやってきて「何だお前!」みたいな雰囲気になった。僕は喧嘩が嫌いなので素直に謝り「いやいやそういう意味ではない、庭の写真だ、ほら、あなたの目は映ってない」と説明して事なきを得た。

 

あれも何か悪巧みしてたんだろうな、目を塞ぐのが早かった。

 

去年11月の日本出張から今日までAucklandにいたのですっかり体がNZ仕様になってしまってたのだろう、今回ホテルの窓から見える高層ビル群を観ているといつの間にか頭の中に渦巻きが出来上がった。

 

ビル群のてっぺんにあるのが人魂のような渦巻きのてっぺんである。少人数の、けど誰か一人がリーダーシップというのではなく学閥や会社閥がお互いの距離感を確認しつつ互いの利権を荒らさないように合意する。

 

そしてそれはビルの周りをぐるぐると渦巻くように建設会社から建設資材会社、実際に施行をする地元工務店などが絡み、青写真が出来上がる頃には下半分である「じゃあこのショッピングモールのここはお前が出店するか?」みたいな学閥で決定出来る部分が出てきて全員がいつの間にかうまくまとまる。

 

そうやって根回しの出来た工事は円滑に進む。何せ数世代に渡る学閥親子社会はその中にいることで得られる情報と利益は大きいから一回だけ騙して自分だけ抜け駆けなんて発想はないのだ。

 

けれどそれはあくまでも日本の東京の支配層の一部の中での話である。そこから渦巻きの下に行けば行くほど大きく黒い渦が広がり、建設現場ではブラック企業に残業、過酷な労働条件で過労死などが次々に出てくる。

 

けど雲の上の人々には下々の生活は分からない、見えない。だって自分たちの仲間でいつもホームパーティやったり週末のテニスを楽しんだりしているから見えないモノは見えない・・・。

 

ぼくが泊まっているホテルは今週一杯満室だ。イタリアファッション物産展?みたいなのをやっており人の流れが多い。それにいつもの通り週末には結婚式が入ってて賑やかである。

 

ここにいると日本が消費者物価を何故2%上げられないのか不思議な気持ちになる。

 

ところが現実問題としては非正規雇用労働者の年収が200万円とか大企業が下請けを叩く現実は何も変わっておらず、食物連鎖の下に行けば行くほどきつい。

 

向かいのオフィスビルに入ってるコンビニでは400円のり弁当が売られており、その上の3階にあるビルで勤務しているスタッフ用のレストランではぶっかけそばが380円とかである。もうワンコインでさえ死語である。

 

ご立派なビルで首にカードぶら下げて働いているけど全員が全員年収700万円とはいかないのだろう。

 

駅近くに行けば日高屋が安いラーメンを提供して時にはちょい飲みに使われている。新橋のガード下に行けば昭和の時代からやっている居酒屋がこれでもかと価格競争をやっている。

 

安倍政権は一生懸命給料を上げる努力をしてて、そりゃもう労働組合も唖然とするほどである。最低賃金上昇もやろうとしている。

 

そう、アベノミクスが偽薬であり黒田バズーカと同様に打ち上げ花火をやるが結果的に効果が出ない。そこで国民が気づく前に次のバズーカを撃って目先をそらせる。マイナス金利などはまさに「はよ投資せんかい!」の明確なメッセージである。

 

しかし安倍首相の最終的な狙いは国民生活の向上でありその為に賃上げが必要なのはよく分かっている。所得倍増計画をやろうとしているのはまさに安倍首相でありそうやることで選挙にも勝てる正しい自民党を主張出来る。

 

ところが現実には非正規などという世界から見れば意味不明の雇用形態があり「同一労働同一賃金」をわざわざ主張しなければならないほど労働者の格差が広がっている。

 

東京で生活をしていると自分が所属する層の歯車に心地よくハマっているから何の根本的疑問も持たないだろうが、異邦人である僕から見れば忙しそうに仕事をして疲れてコンビニで温めた弁当を付設の休憩ブースで食べている人々を見ているとまさにこれこそチャップリンの「モダン・タイムス」を感じる。

 

素晴らしく良く出来た社会なんだよな、それは明るいジョージ・オーウェルや明るいオルダス・ハクスリーとでも呼ぶべきか。

 

東京に存在する目に見えない様々な階級、そして歯車の中で生きていく人々、ホテルの窓から高層ビル群を見ながら異様な渦巻きが見えてしまった。



tom_eastwind at 17:49│Comments(0)TrackBack(0) 諸行無常のビジネス日誌 

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