2016年08月12日
IS生みの親
トランプ氏がまたも派手な花火を打ち上げた。
http://www.asahi.com/international/reuters/CRWKCN10N28Z.html
これは新聞によってすこしずつ表現が違っている。上記は朝日新聞で「ISの台頭を許した」とあるし他の新聞ではクリントンがISの生みの親だと書かれている。
どこの新聞社もISが米国発のテロ組織であることが表面化すればこれはとんでもない政治問題になることを恐れて後で自分にとばっちりがかからないように戦々恐々としながら記事にしているのだろう。
しかし歴史的にイスラム組織に武器と弾薬と資金を提供していたのは間違いなく米国である。
元々は1978年のソ連のアフガニスタン侵攻に始まる長い話である。
ソ連の侵攻の是非は別問題として当時のアフガニスタンはソ連の同盟国家であった。その国家を治安維持するため=イスラム教の台頭を抑えこむためにソ連の軍隊が送り込まれたのだ。
当時ソ連は西側との冷戦の真っ最中であり一時的にブレジネフによる緊張緩和(デタント)が図られたがそれもこの戦争で潰された。
短期決戦で片付くはずの戦争が長期化していくと、ソ連が敵であれば敵の敵は味方である。つまり米国にとってイスラム組織は味方であり彼らに武器と弾薬を提供した。これは映画ランボー3「怒りのアフガン」を観ても分かる。当時のイスラム軍は米国の援助を受けていたのだ。
この時アフガニスタンに作られた軍事組織がオサマ・ビンラディン率いるアルカイーダであり米国による支援のもとソ連と戦った。
1989年ゴルバチョフのソ連撤退までには1万5千人のロシア兵が死亡した。そしてイスラム軍が勝利したのである。ところがここからイスラム内部で内部分裂が起こり内戦が発生した。
この時に出て来たのがタリバン運動である。イスラム教学生運動が主体だった彼らは内戦を勝ち抜き優勢になった。その間資金援助を行ったのが米国である。
結果的に1996年から2001年11月頃までアフガニスタンをほぼ支配することが出来た。
つまり大雑把に言えば歴史的に1978年から1996年頃までタリバンを含むイスラム組織は米国から常になんらかの軍事援助を受けていたのだ。
ここまでが歴史的な話で近代においては2001年9月11日テロの反撃「自衛的戦争」で米軍はテロを一時的には米国が軍事援助していたアルカイーダの仕業と決め付けアフガニスタンをまた崩壊させた。そこで生まれたのがアルカイーダからの分派、現在のISである。
中東のカラー革命を後押しする米国が反政府組織(イスラム組織)に資金援助や軍事援助を行い世俗的政権が倒された。
しかしなかなか倒れない政権がある。シリアのアサドだ。
米国が崩壊させたイラクで力を付けたのがISであり米国はシリアのアサド政権を何としても倒したい、そこでISに協力して2013年ころシリアへ参戦させた。
1993年に大統領に就任したのがビル・クリントンであり彼がアルカイーダを含むイスラム組織を援助していたことを考えればアルカイーダから派生したイスラム教過激派であるISを創りだしたのも大きく括ればクリントンと言える。
また小さく括ればIS戦闘地帯で米軍がISに武器を供与しているという話もある。これは米側輸送機が武器を「間違って」IS支配地域に落としたという事だ。これであれば現大統領のオバマもISの協力者となる。
トランプが選挙戦に出て優秀なスタッフがあちこちでクリントン叩きのネタを集めているのだろうが、イスラム組織と全く関係ないトランプであれば声を大にして言える。
「ISを創ったのはクリントン、協力者はオバマ」。
但しオバマの為に言っておくと彼は議会と対決して軍産複合体とも戦っていかねばならない立場であり軍産複合体が何かやってもオバマに話が伝わってない事はごく普通にあるだろうし駆け引きとして時には軍産複合体の主張を受け入れるしかない事もあるだろう。
ISは唾棄すべき過激派テロリストである。しかし米国内の一部組織は歴史的に、例えば中南米でもCIAを使った革命援助がある。もともと道徳心が一般社会の基準と違うのだ。
ISを使えばシリアを潰せる。何故シリアを潰す?ボスがそういうからだ。ならば米国兵を一人も殺されずに済む地元の殺人集団を使ってしまえとなる。
ISが砂漠で西洋人の首をいくつ切っても戦争の死者に比べれば大した数ではない、そんな危険な所に行くのが間違いだ。
これが現実の政治であり米国は内部的には右手のやってる事を左手が知らないような状態も普通に起こる。
ただそれを今回のトランプのように大声でその点を指摘することは誰にも出来なかった。トランプ氏が今まで政治活動を行っていなかったから言えることだ。
この問題、トランプとしては何時でも使える鉄砲のようなものだ。