2017年02月08日

霜降り

今日もまた食べログになってしまった。何かあるのか最近?

 

浅草ちんやという明治時代から続く老舗すき焼き料理屋がある。この店が最近思いっきりメニューを変えた。てかメニューの売りであった霜降り肉を熟成適さし肉という脂身の少なめな肉に変更したのだ。

http://www.chinya.co.jp/menu/index.html

 

熟成適さし肉120グラムの「おかわり」で8,000円也。勿論超が付く高級肉ではあるが現在のご主人が今まで使っていた脂身たっぷりの「霜降り信仰」から覚醒して「何だ、赤みが美味しいじゃん」と宗旨替えしたのは大した判断力だと思う。

 

もう10年以上前の話だけど新宿のあるホテルの鉄板焼きレストランでの思い出がある。当時出張があって夜仕事が終わりホテルから外に出るのも面倒くさかったのでホテル内のレストランを探したらちょうど鉄板焼の店が開いていた。

 

そこで一人で飛び込み鉄板焼きの牛肉を注文して前菜を食べながらカウンターで座っていたのだけど、シェフ帽をかぶった立派なシェフが現れて肉の説明をしながら鉄板で焼いてくれた。

 

お箸で肉を一切れつまんで口に入れるとその脂が口中に広がりヤバイ!口の中がどろどろになって、かと言って吐き出すのもみっともないのでビールで口の中に一気に流し込んだが気持ちが悪い。

 

仕方ないのでシェフに「済みませんが脂身の少ない肉はありますか?」と聴くと怪訝そうな顔で「今の肉は最上級の霜降りですよ?お口に合いませんでしたか?」と返された。

 

食えないものは食えない、けどそう率直に言うと悪いと思って「いや今日は胃袋の調子があまり良くなくて脂っぽいのが苦手なんです」と断って「いや、これを下げろと言ってるのではなくてお金はちゃんと払いますのでもう一枚脂身の少ない肉を焼いてくれませんか」とお願いした。

 

怪訝そうなシェフはそれでも「じゃあ次はA3のお肉をご用意しますね、赤みの多い肉です」と言いつつ焼いてくれたのだがA3と言われて出された肉がやはりこれも油の塊である。

 

喰えん!口の中に入れてまたも広がる生だらりとした脂が下に絡まりこれまた吐き気がした。これも一気に目をつぶって飲み込みシェフには「済みませんがやはりこれもちょっと・・・」と言うとシェフの顔つきが変わった。

 

「も、もしかして新手の恐喝か?」とでも思われたのか益々怪訝そうな顔でこちらを観ている。僕はどうしようもなく「すみません、ご飯と味噌汁だけで結構です」と、とっとと白ご飯を味噌汁で流し込んで店を出たのだがあの時は何だか自分が異星人になった気持ちであった。

 

考えてみれば僕は日本に住んでいた時も脂身の多い霜降り牛肉があまり好きではなくすき焼きでも赤身の肉を関西風に煮込んでそこにビールをさーっと注いで肉を柔らかくして食べるのが好きであった。

 

大体普段の食事で牛肉を食うと言えば千代の玄風館の焼肉が当時の標準だったから霜降りに縁がない。けど1980年代の古い玄風館の整地されてない玄関の土間に置いたテーブルで仲間と焼肉を食べるのが最高に旨くて「これが肉でしょう!」と思ったものだ。

 

そしてニュージーランで生活を開始したが当然牛肉はニュージーランドでは赤身肉である。ぎゅっと噛み締めて出て来る肉汁の旨味は赤身にある。脂にはない。赤身の肉をがつっとかんでその旨味が口の中に広がりよく冷やしたビールや白ワインで流し込めばすぐ次の肉に手が出ていく。

 

そんな生活をしていたから日本がバブル期に霜降り信仰が徹底して高級店の象徴となりバブル崩壊後も一般的な日本人が「霜降りが美味しい」と洗脳されて自分の舌で食べるのではなく他人に自慢するための霜降りを食べて口をねちゃねちゃにしても無感覚なまま「おー、これが美味しいって言うんだな、そうかそうかこれが美味しいって言うことだな」と自分で決め打ちしてしまう。

 

ある意味大阪のらーめん屋と同様の感覚であろう、とにかく他人と同調することが大好きな人々が自分の舌でなく他人の評判で味が決まるのかと思わせる無思考無感覚。

 

ところが冒頭に書いたお店のご主人は肉の買い付けをしている時に同業者が安い赤身の多い肉を買ってたので「あれ?メニュー変えたんですか?」と聴くと「いいや、店で出すのは霜降りだよ、これは俺が食べるの、こっちの方が美味しいから」。

 

裸の王様という話があるけど21世紀になって牛肉情報もインターネットで入手出来るようになったのだから霜降りの良し悪しもやはり自分の脳みそで学び自分の舌で感じてほしいものだ。

tom_eastwind at 18:25│Comments(0)TrackBack(0)諸行無常のビジネス日誌 

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