2017年07月24日

自警団その2

家族と夕食を食べながら最終話を観終わる。うーん、そっちに来たか。

 

男は当初凶悪犯を誘拐してはネット上で晒して本人に罪を告解させて一般大衆に向けて双方向通信で「殺しますか?」とアンケートを取ったりした。

 

ある時は11歳の女性を強姦した悪人が出獄後に誘拐されて「殺しますか?」とやった。そこで刑事は18年前の被害者女性を見つけ出してテレビに出て法を説くように依頼した。

 

彼女は大勢が観るテレビカメラの前で悪人の行状を話して、涙を流しながら最後に言った「あいつを殺して!」

 

自警団はこの時点で市民権を得た。

 

しかしこの行動の現実的な問題点が出てきた。犯罪抑止の為に犯罪者を殺す事で人々の心をほっとさせるが、次第にエスカレートしてきた男は、今度は刑務所の中にいる犯罪者を殺す事を考える。

 

しかし自分は塀の中に入れない。そこで正義を盾にした彼は刑務所医の妻を自宅で誘拐して刑務所医を脅迫して犯罪者を刑務所の医療室に移して殺せと命令する。

 

そう、ここが個人的正義の一番の問題点なのである。

 

つまり誰もが最初に手がける自衛行為は一般大衆を喜ばせるが、では誰が犯罪者で誰が裁く権利を持つのか?また裁くためには関係のない人々を巻き込んで良いのか?と言う問題が必ず出てくる。

 

どんな正義も最初は自分が正しいと思うが、他人にはそんな男の正義を貫くために犠牲になる義務はない。けれど自分だけの正義を信じる男にはそれが分からない。結果として他人を自分の正義に巻き込んでしまう。

 

その結果として悪は悪を呼び彼は何時の間にか自分がいちばん嫌っていた犯罪者に成り下がる。

 

そう、これが自分の正義だけを信じて主張する過激派イスラムと何時の間にか同じになってしまう、これが社会におけるリンチになってしまい自己満足のために法を無視して犯罪を続けることになるのだ。

 

つまり自警団が守っているのは治安秩序ではなく自分だけの価値観なのだ。そしてその時に他の価値観を持っている個人が同じ社会で全く反対の行動を起こしても否定できず、それは社会全体の秩序の崩壊に繋がるだけなのだ。治安を守る為に始めた実力行為が治安を崩壊することになるのだ。

 

では人々が自分の防衛の権利を放棄しつつ社会正義を実現して治安を守るにはどうするべきか。

 

それこそが民主主義の根幹である発言の自由であり自分の主張を力でなく発言で社会の参加者に同意してもらいそれを選挙で実行して自分の主張が法律に届くようにして犯罪の厳罰化に発露されるようになるのだ。

 

だからこそ英国では自由に発言出来る広場があるし選挙は広く行われている。これが民主主義社会なのである。

 

逆に言えばこの妻を失った男が実現しようとしたのは、たったひとりの判断で裁判も開かずに殺人を行える共産主義国家や独裁主義国家だったのである。

 

ただ番組を見終わって少し英国のほうがましだなと感じたのは二つある。

 

一つは、僕が住むニュージーランドでは今も裁判所や司法関係には1970年代にマリファナを吸って無政府主義を訴えてた左翼ヒッピーの生き残りが支配しており現在の世界の趨勢である「人のものを盗ったら犯罪である」と言う思想が乏しい事である。

 

この国の司法の一部では今もこそ泥や空き巣等は、そのような犯罪を犯すしかなかった社会が悪いのだと考えている。社会と教育が悪いから犯罪が起きた。ならば反省するのは社会であり犯罪者ではないから罰するべきではないという恐るべき発想である。

 

実際にこの国で自宅に泥棒が入ってきて、家主が手元の木刀などで泥棒を撃退して怪我をさせたら家主が逮捕される。ではどうするか?泥棒が侵入して来たら抵抗せずに好きなものを持っていかせる。NZにおける自警団とは泥棒に財産を差し出すことである。

 

もう一つ。それは日本だ。日本には社会への参加者が自発的に参加する民主主義とその合意である民主的な法律さえ存在しない。法はお上が作り民主主義は民衆主義、つまりテレビに踊らされる感情論である。

 

何故なら国民は江戸時代から自分が生まれた場所で昔からある決まりがすべてでお上が偉くてそれは今も国民を「空気を読む」事で自発的に法律を超えたところで超法規的な判断が優先されているからだ。法律の上に決まりがある、この仕組のどこが民主国家だ。

 

まともに教育を受けているはずの高校生さえ「K.Y」など平気で言えるのはまともな民主教育を受けていない証拠、生まれたときから似非民主主義に洗脳されているからだ。

 

これが西洋社会と日本の一番の違いである。日本人が自分の頭でものを考えて選挙に行く日は当分来ないだろう、だって江戸時代から何も変わっていないのだから。



tom_eastwind at 14:49│Comments(0) 諸行無常のビジネス日誌 

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