2017年07月25日

パックンセーブ

日曜日の昼、久し振りに家族でシティの最近人気のざっけないイタリアンレストランに行く。

 

広いレストランは100席くらいあるだろうか、12時過ぎは殆ど満席で客層は40代前後のカップルやグループでビールやワインをお洒落なイタリア料理に合わせて楽しんでいる。

 

メインのパスタが30ドルなので値段は高級だが雰囲気はカジュアルで日曜の午後をのんびり過ごすにはちょうどよい。

 

ところが食事をしながら暫くすると奥さんが「ふーん、この店初めてだけど、カップビレッジに昔から来ている客層と違って若いし、ちょっとがさつかも」と言い出した。

 

言われて僕も「あ、そうだ!」と思った。ここブリトマートはここ数年急激に成長した新しい街で勢いがありシティで成功した人々が集まっているのだが、この若さは新興層なのだ。

 

10年前にこの年代であれば成功したと言ってもシティで手頃な20ドルのステーキや15ドルのパスタにワインとビールだったが、現在の新興層は30ドルのパスタを食べている。

 

そしてその新興層は一握りではなくオークランドの発展に合わせて急激に増加している。その証拠にこのブリトマートには最近高級宝石店や高級化粧品等の店が急増してランチの単価もどんどん上がっている。

 

しかしこの新興層はニュージーランド全体の経済や政治を手中に持つ古層な人々ではなくあくまでも古層が作った大地の上で毎日一生懸命に働いてビジネスを起こして家を建てて美味しいものを食べている人々だ。

 

彼等の旺盛な消費活動が循環されてシティは賑やかになるが、一番美味しいものを持っていって食べているのは古層であるのは、まるでロンドンで一般庶民がビジネスに成功している影で英国の一部選良だけが通うクラブでもっと大きな話が進んでいるようなものである。

 

やっぱりここも英国連邦の一つなんだな、人に働かせ金に働かせるのが得意な英国の本当の主人は、日曜の昼にこんなカジュアルレストランに来ない。

 

けど庶民は10年前よりも確実に豊かになり日曜日の午後をお洒落なイタリアンレストランで友達や家族と過ごして30ドルのパスタを楽しむ。

 

美味しい料理に満足して自宅に帰る途中、地元のスーパーマーケット「パックンセーブ」で買い物をする。

 

この店は龍馬くんが高校生だった頃に送迎駐車場としてよく利用させてもらったものだ。当時は入り口でパンに焼いたソーセージを挟んだホットドッグを売っており学校帰りのお腹を空かせた子供たちがお母さんの迎えが来る前に一つ買ってぱくぱくと食ってる、のんびりした場所であった。

 

ところが今日久し振りに行くと日曜の午後のせいか実に人が多い。そしてガサツである。

 

広い通路なのに買い物カートを真ん中に置いたまま買い物しているから後ろの人が通れない。かといえば買い物の途中で急に大きなカートを反転させて流れに逆らって歩く人もいる。

 

なんじゃこりゃと思いながら歩いてたら奥さんが「そう、昔はのんびりしてたのに、今はすごいお客が増えてカートもまともに押せない。カウントダウンは最近はいつもガラガラなのにね。すっかりこっちに客取られてる」と言ってた。

 

何が起こっているのか?オークランドのスーパーマーケットは最高価格のファロ、高価格のニューワールド、中価格のカウントダウン、低価格のパックンセーブと順位がある。

 

ファロのレジではフレンドリーなスタッフが上品なビニール袋に食材を詰めてくれるがパックンセーブはビニール袋さえなく買い物客はお金を払った後は持参した袋に入れて持ち帰る。

 

今まではこの4つの層で住み分けが出来ていたのだが今回パックンセーブを観て感じたのは、この店の商品が従来の低価格も充実しているけどその棚の横にはちょっと中価格の新しい魅力的な商品が並んでいるって事である。

 

オークランドは毎年物価上昇しておりその波に乗った人々からすれば楽しい街である。しかし生活費は確実に上昇しており一般市民からすれば出来ればムダな買い物はしたくないのも事実。

 

そこで今までカウントダウンで買い物をしていた人々がパックンセーブを訪れると、以前と違って商品も良くなってるし同じシャンプーや石鹸がカウントダウンよりも安い。

 

それならビニール袋なんて不要、DIYの徹底した国だから自前の頑丈な袋で買い物をすることになる。そして買い物客はパックンセーブに流れていく。

 

勿論昔からのお金持ちはファロやニューワールドで買い物をする。彼等にパックンセーブのがさつさは好まれない。

 

こうやってこの街でも何の特徴もない「中流」スーパーは、上には行けず下にも行けずその存在価値がだんだん薄れていくことになる。

 

これも街の変化だな、そしてこの街で仕事をしている限り常にこの変化を感じて自分も変化をしていかねばならない。

 

日曜日の午後の昼食と買い物を通じてそんな事を感じた。



tom_eastwind at 09:52│Comments(0) 諸行無常のビジネス日誌 

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔