2017年07月29日

ICCO

数日前にお客様にランチでキングスランドのICCOにご案内頂いた。その時の18ドルのランチが実に旨くて今日は家族にも食べさせたくて夕食で予約して行った。

 

土曜の夜の6時に予約を入れて行ったのだが、何とすでに予約だけでほぼ満席。テーブル20席カウンター6席が、テーブルは全て満席、バーカウンターで1組のキーウィカップルが食事するという、何とも賑やかな状態であった。その後もう一組予約のないキーウィカップルが来てカウンターに座り、これで満席。その後予約なしで来て座れずに帰ったのが3組。

 

お店は随分古い作りで如何にも昔のオークランドであるが内装をお洒落にしておりいかにもカジュアルでざっけない作りが良い。日本からのお客を連れて初めて行く店ではないが家族や仲の良い友達でちょっと何か美味しいものを食べようぜって感じの店である。

 

さて料理。一品料理を見繕って注文したのだが、鳥手羽、盛り合わせ寿司、刺し身、天ぷら、牛肉串焼き、魚串焼き、海老天巻き寿司、チーズ入りだし巻き卵、天ぷらうどん、どれも旨い。

 

まずは最初に注文した手羽先が実に旨い。ふっくらとした鳥の手羽先は良く運動する骨と骨の間の肉が柔らかく筋になっててそれだけで旨いがこの店では更に独自のタレに漬け込んでいるようで肉の中にまで甘辛いタレがしっかり染み込んで肉の旨味を倍増させて、ガツッと噛み付くと肉汁とタレが手元にぼとぼと滴るのだがそれさえも掬って飲みたいほどの旨味である。

 

一皿に六本入ってるのだがあっという間に3人で食べたけど、これをメインにして食べるなら一人六本は軽くいける。

 

刺し身は最初にマグロを注文してこれが贅沢に1センチ程の肉厚で切っており、刺身用の醤油につけて頂くと口の中で赤身の旨さを広げてくれる。この店では仮面舞踏会の眼鏡の器のようなお皿に刺身用と寿司用の醤油を分けて入れてくれる細かい気遣いがうれしい。

 

続いて盛り合わせの天ぷらが来たが、これが又旨い。海老も魚も本来の自分の味を出しており、特に白身魚は刺し身に出せるような新鮮なネタを天ぷらにしているから肉厚なのに柔らかくて口に入れても優しく歯ごたえと喉越しを楽しめる。天つゆだけでなく塩も二種類載せているのでぼくは塩で頂くが、この塩がまた旨い。

 

牛肉の揚げた串焼きと魚介類の揚げた串焼き。これが小皿に乗って素っ気なく出てくるのだけど、いざ口に入れると衣がさくっとしているのに牛肉が本来の柔らかく肉汁のある味に仕上がっており、余程良い油と揚げ加減を心得ていると分かる。それは魚介類も同様で特に香港出身の奥さんは普通のオークランドの魚は臭くて食えないと言うがこの店の魚や海老は次々と出てくるのに次々と食べて更にもっと食わせろの雰囲気満々、こんな事は珍しい。

 

ロールの巻物の欄に海老天ロールがあったのでお店の人に聴くと名古屋の天むすみたいなものと教えてもらい注文すると、これもまさに天むすの寿司版であるが何せ海老天は揚げたてでそれに柔らかな酢飯がノリに巻かれてやって来て、海老天と衣と酢飯と海苔の組み合わせが実に良い。本当に口を幸せにしてくれる、口福である。

 

今日は飯があまりに旨いので普段は飲まない日本酒「船中八策」を燗で頂く。お酒の出し方も凝っており湯煎の中に一合瓶が入ってその中に温度計が入って40度はぬる燗、50度以上が熱燗って分かるようになっててここにも「わかってるな−」と気遣いが感じられる。

 

そうそう、日本茶もあるのだけど、ほうじ茶等三種類から選べるのも良く出来たサービスだ。

 

日本酒に合わせて追加で魚の盛り合わせを追加注文するが、もうその時にはメニューを観るのではなくお店の人に「この酒を呑むので適当に魚切って下さい」で通る。これも有り難い。出てきた白身魚も赤身魚もこれまた新鮮で、どうやってこれだけの良い魚を仕入れてるのか、それとも手入れが良いのか、これまた奥さんのほうが僕よりたくさん食べてた。

 

そしてチーズ入りだし巻き卵。厚めの卵焼きにチーズと大根おろしが乗っかってて龍馬くんが最初に箸をつけたのだがびっくりした顔で「お父さん!これ美味しい!」と言い出してぱくぱく食いだした。

 

僕も酒の肴にと思って一切れ取ると、その重みと柔らかさにびっくりして更に口に入れた時の重厚な出汁と玉子の柔らかさが同時に染み出してきて実に旨い。食べてすぐに船中八策を口に含むとそれまでの濃厚な卵とダジの味がすーっと喉に流れて口の中がほっとすっきりする。そうなるとすぐに次の一切れに手が出て、まさに酒の肴に最高である。

 

三人で食べて約1時間半過ごしたが、なんだかまだ食べたい。お腹いっぱいなのにまだ食べたい。龍馬くんは自分のお腹に向かって「まだマンプクじゃないよな?まだ食えるよな?」と励まして、天ぷらうどんを締めに注文する。

 

出てきたうどんは稲庭うどんのような細めであるがしっかりとコシがありツユも旨い。僕は本当はデザートを注文したかったがさすがに今日は無理だと思い、ガリだけ注文して船中八策の最後の一杯を冷にしてガリをアテに飲むことにした。

 

そして出てきた最後の船中八策なのだが何と日本の木製の升にお洒落な空のガラスのグラスが入っており、空グラス入りの升をテーブルの上に置いてからお酒を直接注いでくれて、これが日本の古いやり方、つまりグラスから酒がこぼれて升が受け皿になるというお洒落。

 

僕はまずグラスの酒をこぼれないように少し呑んでから龍馬くんに「日本ではこういう時は升から直接飲むんだ」と言って飲み方を見せたら喜んでた。そして「お父さん、一口良い?」って聴くから勿論どうぞ、NZでは飲酒できる年齢であるから一口呑んでもらうとこれも「おー、美味しいねー」と喜んでくれた。

 

坂本龍馬も自分と同じ名前のNZ生まれの子供が150年後に船中八策を飲むとは想像もしなかっただろう。

 

こうやって土曜日の夜は6時から始まった食事が終わったのが8時半過ぎとなり、僕たちは久し振りにちゃんと素材を大事にしつつきちんと料理を加えられている料理を楽しんだ。

 

オークランドの日本食でこれだけ「何を食べても標準以上」と言う店はほとんど記憶がない。すべて標準と言う店はあってもすべて標準以上と言う店は、まだ経験した事がない。

 

そして奥さんが何よりもびっくりしたのは、キッチン二名とフロア二名だけで夜6時にほぼ同時に座った約20人のお客のそれぞれバラバラな注文を、飲み物はフロア料理はキッチンと分かれてきちんと手際よく捌いているのだけど、それは日本でさえもあまり見られない手際の良さである。

 

フロアスタッフの眼の動きが良い、常にお客を観ている。そしてキッチンスタッフの料理の手の速さは素晴らしいとしか言いようがない。あれだけ早くてこれだけの品質を出すってのは、本当のプロにしか出来ない。これはもう賞賛に値する。

 

すでに8時を過ぎても次のお客が入ってきてキッチンもフロアも次の準備に入ってる、何のてらいもないその姿勢が実に清々しくて良い。

 

こういう店こそ是非とも成長してもらい地元キーウィに本当の日本の味を学ばせてもらいたいものだ。ちなみにこの夜は日本人はキーウィに連れられた学生さん風の女性が二人だけ、後はすべてキーウィであった。



tom_eastwind at 18:23│Comments(0) 諸行無常のビジネス日誌 

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