2017年08月06日

銀行貸出規制強化

先週国際会計事務所で投資関連の会議を開く。彼等は会計士でもあり投資顧問会社も経営している。ちなみに日本では会計士と税理士は別の資格であるがNZではどちらもAccountantで統一されている。

 

地元では大手に入る事務所だが銀行のようなお硬いサービスで担当者もしょっちゅう変わるようなことがなく安心して継続性のある話が出来るので有り難い。

 

今回は当社顧客の投資先のポートフォリオについての打ち合わせだ。投資家VISAを取得する際にNZの国債や上場企業の債権や株式を購入する必要があるが適格投資先は移民局の発表の度に変わる。

 

現在はオークランドの急激な人口増加と住宅不足と価格上昇で不動産開発がNZ政府とオークランド市役所によって進められており今年は不動産開発に投資をするように移民局が方針を変えている。

 

今までは主にNZ国債を買ってくれれば国の資本力がついて社会インフラに資金を回せたがインフラは相当整い始めている。

 

NZは住宅供給公社(HNZ)が人々に住みやすい住宅を提供している。特に低所得者向けに一般投資家が買った住宅を借り受けて政府が家賃保証してそこに低所得者を住まわせていた。

 

しかし政府そのものが住宅を保有するという考え方はこの国にはなく、あくまでも投資は民間にやってもらうという基本方針である。政府は家賃は負担するけど小さな政府でいるために自前で住宅は持たない考え方だ。

 

だからNZ国債が売れてもその資金を住宅建設に充てることは出来ない。そこで政府は自前の土地をインフラ整備して民間で開発をする形式になっている。

 

今回のポートフォリオでは銀行の発行する債権が入っており、良いものは年利回り6%程度。幾つかの銀行を組み合わせているが債権ポートフォリオ部分はは債権価格の上昇もあり平均5%ちょっとで回っている。

 

株式ポートフォリオは8%程度の運用利益が出ている。日本だとびっくりする数字かもしれないがNZでは株式の運用利益が6%以上出てなければ上手い運用とは言えない。

 

そんな中で最近のNZの市中銀行の話になる。彼等の話ではどうもNZの銀行が貸出規制強化をやっているようだ。

 

この話は去年後半から出てきてた。その背景は豪州の市中銀行の劣勢である。NZの銀行は殆ど外資で大手のANZ,BNZ,WestPacはすべて豪州が親会社である。その豪州が不動産の価格上昇と中国の資源不景気の煽りを喰らって貸出しが出過ぎて問題になっている。

 

そこで豪州の銀行は自己資本利率が12%程度に設定されているので子会社であるNZの銀行から資金を数百億円単位でシドニーに送らせて自己資金に充填している様子。

 

だもんでNZはいつも通り慎重に行ってるのだけどカネを親会社に送らなけりゃいけないので自分とこも貸し渋りに入る。

 

その影響をもろに食らうのはファーストホームバイヤー、つまり30歳過ぎて結婚して自宅を欲しいと思っているオークランドの人々である。

 

何せNZの銀行といえば日本の質屋と変わらない。質草がなけりゃ鼻紙も貸してくれない。そして銀行が貸し付けるのは住宅価格の約60%であり、万一価格が下落しても自分とこは損しないように計算している。

 

住宅に対するモゲージ、つまり担保は銀行が真っ先に優先権を持つ。これはtier-1とかTop Priorityとか呼ばれるが要するに第一抵当である。

 

次に抵当を打つのはMagica等と呼ばれるノンバンクである。利息は高いがその分第二抵当になる。

 

しかしオークランドで働くビジネスマンが可処分所得からどれだけローン支払いに回せるかが予め予測出来るので普通のビジネスマンが借りられるローンは70万ドル前後が限界である。

 

そこで自己資金を20万ドル程度用意して50万ドルの借金をして住宅を購入することになる。返済終了が30年先である。

 

そのような厳しい事情でありながら更に去年後半からの豪州の親銀行の負債を被って資金送金をしているのでNZ国内に回すカネがない。そこで貸し渋りが発生するわけだ。

 

NZ政府としても住宅困窮者が急増する中うれしい話ではないが自由市場なので個別企業や銀行のやってる自衛策にいちいち口をだすことは出来ない。

 

表面的には景気の良いオークランド経済ではあるが舞台裏ではこういう話が飛び交っているのも事実である。

 

そこでノンバンクが一歩足を前に出すか、それとも少し引くか。舞台の表では賑やかであるが舞台裏では誰もが誰もを観つつ「さあ、どうする?押すか引くか?」と駆け引きの真っ最中である。



tom_eastwind at 15:47│Comments(0)諸行無常のビジネス日誌 

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