2017年08月29日

共通報告基準(CRS)

以前も書いたが今年7月からNZの銀行口座に対して規制がかかるようになった。OECDが決定した共通報告基準(Common Reporting Standard)がそれである。

 

これはNZ非居住者がNZに銀行口座を持つ場合は非居住者の納税国居住国の納税者番号、住所、その他関係資料を提出しなさいという事である。既に口座を持つ人もこれから順次資料提出を要求される。

 

やだよそんなのって言うと資料を出すまで資金移動が止められる。つまり口座凍結である。そして租税協定の情報交換規定に基づき各国税務当局と自動的に交換されることになる。

 

すでに不動産売買に関しては去年から規制が導入されてNZ非居住者が不動産売買を行う場合は居住国の納税者番号、NZIRD番号取得義務、銀行口座開設義務が発生している。

 

つまり以前のように誰が買ったか分からんようにはさせんぞという規則である。これはNZにおいては主に中国からの資金流入を透明化させる為の手段だったが今回のCRSは世界中が相手の作業である。

 

この規制はまだ導入されたばかりであるが日本のマイナンバー制度の導入と時期を同じにしているので世界が同時進行で動いているのがよく分かる。

 

以前であれば例えば日本の資産家がオランダやNZに資産管理会社を設立して相続するという方法もあったが自分の身柄が日本にある限り財産が世界中どこにあろうが相続の対象となる。つまり一生懸命やって外国に資産を移したけど効果なしって事だ。

 

さらに今までなら行く先の国の銀行口座を開設してもその事実を知る人はほぼいなかったが今後は行く先の国の銀行が本人の居住地の税務署に自動報告するわけで隠しようがない。まさに徹底した制度である。

 

なので本当に相続するのなら、今のうちに日本で贈与税払って子供に資産を渡し、子供の資産として運用して当初の額に戻す方法が現時点では現実的かつ合法的である。

 

例えば贈与税55%を払ってもその後10年間毎年5%以上の配当が出れば子供が毎年所得税を納税した後でも10年後には当初の額に戻せる。

 

何故ならここで躊躇って時間が経過すると相続税法の見直しで贈与税、相続税共に更に増税する可能性が高いからだ。

 

ちょっと本題からそれるが、何せ国家社会主義である日本だから個人が国家の庇護のもとに作った財産は個人が死んだら国家に返せという思想である。これは安倍首相も主流政治家も官僚も同じ考えである。何故なら彼等は親や東大の教授からそうやって教え込まれたからだ。

 

日本に一番合わないのが英米型民主主義、自己責任だけど成功したら自分の財産は自分で遣えるし自己判断で寄付も出来る。失敗しても何時でも何度でも挑戦出来る仕組みである。

 

何故なら国家社会主義ではほんの一握りのエリートが社会を支配して残りの国民は自己責任を取らなくてよい代わりに自分でものを考えるな、挑戦はするな、それは政府に任せろ、カネのことは心配するな、俺が遣うからであるからだ。

 

なので戦後米国に民主主義を押し付けられたが官僚の得意技で中身を空っぽにしてやった。小学校の段階で徹底的に失敗の怖さを焚き付けて挑戦して失敗したら後の人生終わりだぞって教え込んだ。先生の言うことは絶対であり逆らったり自分で他の方法を考えることを止めさせた。

 

授業ではまず米国人と会話出来ないように文部省では骨抜き英語授業にした。国語の時間では文章の中の感動する部分を決めて「こう感動しろ」と決めた。道徳の時間では〜等など民主主義の根幹である自分で判断して自分で決断してその結果は自己責任というのを一切排除したから日本では選挙に行かない民主主義が横行している。

 

本題に戻すと、こういう状態で更に自民党が安定しているのだから世の中がどっちに流れていくかは自明の理である。

 

こんな状態で世界中の税務当局が手を組んで銀行口座に納税者番号をくっつけるのだから「世界規模の名寄せ」が行われるのは明白だ。

 

それでも欧米はまだましだ。個人の財産を保護する義務が国家にあるからだ。日本にはいくら憲法に保護する義務があるって書いてても実行されない。もしくは霞ヶ関文学で「個人の財産は保護する。しかし日本人は元々個人の財産を持ってない」とか「日本人の財産は保護するが同時に納税の義務がある」とか。

 

とにかく個人という草食動物であるとすれば政府と言う肉食動物に食われない為の唯一の手段は政府よりも行動を機敏にするって事だ。何せ政府には警察等の肉食動物としての武器がある。次の時代を読み先に手を打っておき、規制する法律が出来ればその先を読み常に行動を続ける事しかない。



tom_eastwind at 12:43│Comments(0) 諸行無常のビジネス日誌 

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