2018年01月10日

言語明瞭意味不明瞭

最近目立つのが言語明瞭意味不明瞭な問い合わせである。

 

NZで会社を作りたい。手続きを教えてほしい」

 

普通に考えれば何も難しくなく意味も明瞭だと思われるだろうが、日本人がニュージーランドで会社を設立するには必ずその背景がある。単純な事業拡大なのか社員の誰かを送り込むのか又は自分か誰かの永住権取得を視野に入れているのか?

 

会社作りのその前提となる最終目的が明瞭にならない限り正確な答は出せない。

 

例えば現在の商法ではNZの会社には必ず一人はNZ居住者の登録が必要だ。また今後NZ非居住者が実質的なオーナーである場合、その個人データ及びNZの会社の財務情報をネット公開することとか、様々な条件が付随してくる。

 

またこれは日本とニュージーランドの法体系や商習慣の違いも大きく影響する。日本は大陸法、NZはコモンローでありながら日本人ビジネスマンが何か考える時は結局大陸法で考えるから、最初に大陸法的な発想で自分の頭に全体図を描くのだがその前提となる情報が間違っている事が多い。

 

例えば自分がNZに永住したい、ならば誰かにNZに会社を作ってもらいそこでワークビザを発行してもらい2年ほど働いて永住権取得を、みたいな道を描く。それを前提として当社に「会社の作り方」を聴かれても、そりゃ会社なんていくらでも作れるがご本人が永住権を取れるかとは全く別問題である。

 

ワークビザでも駐在員であれば職歴が加算されないとか永住権申請には英語力テストとかもちろん健康診断も無犯罪証明も必要なわけで、ところがご本人は5年くらい前の古い技能移民の知識が前提として入っているから話が食い違う。

 

大体NZの会社では必ず地元居住者を取締役に入れる必要があるが逆に言うと雇われた人は取締役として商法上の責任が発生するわけで外国人が会社作って何やってるか分からないのに「はい分かりました役員やります」なんて話にはならない。

 

また日本のビジネスを拡大すると言うが上記の反対に「雇われ取締役をどこまで信用出来るか?」と言う問題もある。広げようとしたビジネスそのものを取られてしまうかもしれない。

 

キーウィはお人好しだし個人的には良い人が多いけど仕事となれば全く別物である。僕がよく見るパターンは頭の良さそうな日本人が颯爽とやって来て

「おい、会社作ってくれ」

「取締役はどうしますか?」

にこっと笑って

「心配するな、俺の友達がキーウィなんだ!」

とやる。

大体OUTである。

 

日本の資産をNZに移す目的であった場合は将来的にマイナンバー提出義務が発生した場合どうするのか?資産を移すのであれば自分の代で使い切るなら良いが子供に残すと言うのなら最初から相続対策としてある程度低税率で納税をした上で収益資産を早期に子供の名義にすべきだ。

 

そんなこんなと色々あるけど、頭の良い人に限って自分の頭の中で絵を描きすぎて最初にガチガチに固めてしまいがちだ。

 

国が変われば法律も変わる。法律も変われば遵法精神も変わる。遵法精神も変われば商習慣も変わる。商習慣も変わればお互いの言葉も変わる。言葉が変われば相手が何を言ってるのか分からなくなる。分からなくなれば言葉と言う試金石がなくなる。試金石がなくなれば闇夜の地雷原を懐中電灯なしに歩くようなものだ。その結果吹っ飛ばされることになる。

 

話す(通信)と言う(放送)は別物である。話をしようと思うなら相手が使っている言葉を理解することが必要である。でなければ聴いている方からすれば「こいつ何言ってるんだ?言語明瞭意味不明瞭」となるだけだ。



tom_eastwind at 13:03│Comments(0) 諸行無常のビジネス日誌 

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