2018年02月19日

賃上げ2018

ニュージーランドでは今年も政府による最低賃金賃上げで201841日より現在の15.75ドルから16.50ドルになる。約5%の賃上げだがオークランドの物価上昇率は肌感覚で5%、NZ全体でも約3%なのでこの賃上げは正当と言える。NZ政府としては2021年までに最低時給を20ドルにする方針である。

 

と、ここまでは至ってまともな話なのだがNZでは民間企業は社会の公器ではなくあくまでも株主のための組織であり最低賃金の上昇はそのまま安売りスーパー等賃金の低い企業ではレジやバックヤードの機械化やAI化で人を減らすことに繋がる。

 

つまり政府の発想として理想は良いのだけど現実問題として人件費を投資ではなく費用として考える企業が人員削減を行う事で結果的に雇用が減ると言う矛盾が起こる。

 

既に優秀な労働力となっている中間層は元々最低賃金は関係ないわけでこのような賃上げはそれまで中産階級だった人々を下層階級に追いやり中間層を相対的に上に持っていくことで二極化が生まれる。

 

北半球で起こっている二極化がこのオークランドでも既に始まっている。スーパーのレジでは既に機械スキャナーで読み取る自動レジが広まりそのうち電子タグが導入されるだろう。電子タグは導入費用は高いが一旦導入されれば人間のような文句を言わず24時間黙って正確に働いてくれる。

 

そのうち棚の商品の補充もロボットがセンサーを使って自動的に行うことになるだろう。そしてスーパーから店員がいなくなる時代になる。

 

もちろんNZでも高級食材を扱っている店では人間による案内で販売対応するだろうが汎用品を扱う店では人間という失敗しやすく怠けやすく要求ばかりする道具ではなく機械と言う正確な道具を使うようになるだろう。

 

そうなると日本で精密機械を扱う森精機やファナック等の市場が広がるので日本の精密機械工場としては売上増加に繋がる。こりゃ彼らにとっては有り難いことである。

 

しかしNZでは出生率2.04でありこの国では人口が増加しているのに学校を出たばかりの社会知識のない若者を受け入れる場所がますます減少していく。

 

日本では企業は社会の公器と言う渋沢栄一の考えが定着しているが、それでも雇用を創出するかどうかは企業の決めることである。

 

安倍政権としてはここ数年官製春闘で政府が賃上げを要求している。これは最低賃金の上昇ではないのでコンビニの合理化が進むわけではないからNZの政策に比較すればまだましだ。

 

しかし高齢者対策で雇用の長期化を行いつつ彼ら高齢者の賃金を60歳以降は次第に切り下げていく事で低賃金に抑え込み、同時に新入社員を採用しない事で企業における年代の歪を生み出す可能性は高い。

 

世界の歴史の中で普遍的な正解はない。常にその時代の民衆が求める答を提供するのが政治家の仕事である。

 

今回の賃上げは前政権である国民党も同様の事を行っただろう。但し国民党は雇用の創出を熟考して外国企業の参入を受け入れた。現政権である労働党は賃上げと共に外国企業の参入をどこまで受け入れるのか?

 

人口450万人で内需の乏しい国が生き残る方法はそんなに沢山ない。そのことを労働党がどこまで政策として実現出来るかがこれからの見どころだ。



tom_eastwind at 16:52│Comments(0) 諸行無常のビジネス日誌 

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