2018年03月02日

CRS 共通報告基準

ニュージーランドで去年から導入されたG20世界の新規制である共通報告基準(CRSCommon Report System)が本格化されて来た。

 

先日もある知り合いがオークランドの銀行でちょっとした手続きをしようとしたら窓口でいきなり「あなた日本人でしょ、日本の納税者番号を提出して」と言われて「おれはNZレジデントで日本の納税者番号は持っていない」と言うと、今度は「じゃあ何故持っていないか説明文を書け」と言われて大変。

 

CRSは約3年前のG20会合の際に財務省会議が開かれその子分である各国国税庁が調整して作り上げた、各国の非居住者の財務情報を非居住者の居住する国の国税庁に自動的に通知する仕組みだ。

 

今までは各国の国税当局が自国の居住者の国外財産について疑義を感じた時に直接先方国家の国税庁に連絡をして、必要であれば裁判所命令を取り付けて情報提供を求めてきた。

 

しかし新しい規制であるCRSが導入されれば今後は世界中の国税局が自動的に個人情報の交換が出来る。つまりいちいち個人を特定しなくてもお皿に載って届けられるのだ。

 

税務署にとってはこんな便利なものはない、だからこそ日本ではマイナンバー制度を性急に進めた。システム上の問題はあれど折角G20で決まった事項なのにマイナンバーがないと自動報告でいくら日本国籍と分かっても今度は日本側で同姓同名とか名義預金とか住所が合致しないとか様々な問題が発生し処理に手間取る。

 

システム上に不具合はあるし役所によって対応が違うけどそれでも今回導入することで個人が国外に所有する資産は自動的に日本国税局に通知が行き個人がマイナンバーで特定されて「お尋ね」が個人に送られて来ることになる。

 

これで完全に一丁上がりだ。所詮個人が国家と同じ土俵で相撲を取っても勝ち目はないと言う事だ。

 

但しこの仕組みがNZに導入されることは早い時期から決まっていた事で知っていた人は日本のマイナンバー制度が始まる前に手続きをしていたのでマイナンバーもCRSの影響も受けない。

 

またCRSが導入された後でも1回だけならば運が良ければ手続きが間に合う場合もある。それはかなり技術的な問題も含むが、やってやれない事はない。

 

それにしてもこの仕組、元々は米国の大企業や富豪が世界の税制を利用して節税した為に各国が協力して作り上げた条約である。

 

例えば米国発のスターバックスが米国で納税してないとかで問題となったわけであり、そういう仕組みを作ったのが英国が支配するケイマン諸島とかバージン諸島であり、普通に生活している日本人には関係ない法律や条約である。

 

しかし今回は本当に「もらい事故」と言うか、真面目な日本人にとっては迷惑な話である。きちんと納税もして家族のことを考えていただけなのに、いきなり犯罪者扱いである。日本人が一番嫌がるパターンだ。



tom_eastwind at 23:21│Comments(0) 諸行無常のビジネス日誌 

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